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Re:開闢の宴 合併リレー小説

NANA&夢旅人

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章【動き出す者】
  • 02 第一章 心剣士編第一話「仮面の女」
  • 03 第一章 心剣士編第二話「古戦場/王手詰み」
  • 04 第一章 心剣士編第三話「仮面/難解」
  • 05 第一章 心剣士編第四話「訪問者」
  • 06 第一章 心剣士編断章 「蠢き続ける計画」
  • 07 Another an introduction 【終わりから始まりへ】
  • 08 Another chapter1 Sora side‐1 「新たなる始まり」
  • 09 Another chapter1 Sora side‐2
  • 10 Another chapter1 Sora side‐3
  • 11 Another chapter1 Sora side‐4
  • 12 Fragment1 「旅のチケット」
  • 13 第一章 永遠剣士編第一話「永遠」
  • 14 第一章 永遠剣士編第二話「タルタロス」
  • 15 第一章 永遠剣士編第三話「仮面の遠謀/タルタロス到着」
  • 16 第一章 永遠剣士編第四話「塔/襲撃」
  • 17 第一章 永遠剣士編第五話「戦の始まり」
  • 18 第一章 永遠剣士編第六話「火種/孔」
  • 19 第一章 永遠剣士編第七話「黒龍魔王/猫」
  • 20 第一章 永遠剣士編第八話「イヴ」
  • 21 第一章 永遠剣士編第九話「アガレス・グシフォン」
  • 22 第一章 永遠剣士編第十話「歌姫/流星」
  • 23 第一章 永遠剣士編第十一話「途絶/酷い奴」
  • 24 第一章 永遠剣士編第十二話「仮面の情報」
  • 25 第一章 永遠剣士編断章「仮面/永遠/凛那」
  • 26 Another chapter2 Terra side‐1 「止まり、開かれし物語」
  • 27 Another chapter2 Terra side‐2
  • 28 Another chapter2 Terra side‐3
  • 29 Fragment2「介入」
  • 30 Another chapter3 Aqua side‐1「光の行く先へ」
  • 31 Another chapter3 Aqua side‐2
  • 32 Another chapter3 Aqua side‐3
  • 33 Fragment3「試練」
  • 34 第二章 心剣士編第一話/第二話「嵐の前の静寂/布告」
  • 35 第二章 心剣士編第三話「戦のはじまり」
  • 36 第二章 心剣士編第四話「爻わる刃たち」
  • 37 第二章 心剣士編第五話「鬼人」
  • 38 第二章 心剣士編第六話「贖罪」
  • 39 第二章 心剣士編第七話「Sinの理」
  • 40 第二章 心剣士編第八話「妖刀/天舞剣 」
  • 41 第二章 心剣士編第九話「正体/無轟の家」
  • 42 第二章 心剣士編第十話「斬る覚悟」
  • 43 第二章 心剣士編断章「約定」
  • 44 第二章 反剣士編第一話「黒羽の旅人」
  • 45 第二章 反剣士編第二話「アダム/竜泉郷」
  • 46 第二章 反剣士編第三話「来訪/白竜」
  • 47 第二章 反剣士編第四話「ゼロボロスとシンメイ」
  • 48 第二章 反剣士編第五話「龍神シンメイ/双龍の過去」
  • 49 第二章 反剣士編第六話「新たな関係」
  • 50 第二章 反剣士編第七話「語らい」
  • 51 第二章 反剣士編第八話「顰める真実」
  • 52 Another chapter4 Sora&Terra side‐1「時を超えた再会」
  • 53 Another chapter4 Sora&Terra side‐2
  • 54 Another chapter4 Sora&Terra side‐3
  • 55 Another chapter4 Sora&Terra side‐4
  • 56 Another chapter4 Sora&Terra side‐5
  • 57 Another chapter4 Sora&Terra side‐6
  • 58 Fragment4-1「届かぬ思い」
  • 59 Fragment4‐2「本気の戦い」
  • 60 Fragment4-3
  • 61 Another chapter5 Aqua side‐1「共に守る一つの想い」
  • 62 Another chapter5 Aqua side‐2
  • 63 Another chapter5 Aqua side‐3
  • 64 Another chapter5 Aqua side‐4
  • 65 Fragment5-1「異世界からの来訪者」
  • 66 Fragment5-2
  • 67 NGハプニング集・3D版 前編
  • 68 NGハプニング集・3D版 後編
  • 69 第三章 三剣士編第一話「出立/口論」
  • 70 第三章 三剣士編第二話「追跡/解除」
  • 71 第三章 三剣士編断章壱 「裏切り者アバタール」
  • 72 第三章 三剣士編第三話「会合」
  • 73 第三章 三剣士編第四話「心剣世界」
  • 74 第三章 三剣士編第五話「蒼炎の女神」
  • 75 夢旅人誕生日記念作品・祝おう、騒ごう、生き延びれのトークショー!? 前編
  • 76 夢旅人誕生日記念作品・祝おう、騒ごう、生き延びれのトークショー!? 後編
  • 77 第三章 三剣士編第六話「秩序の騎士アルビノーレ」
  • 78 第三章 三剣士編第七話「大地の半神アレスティア」
  • 79 第三章 三剣士編第八話「襲撃! KR」
  • 80 第三章 三剣士編第九話「ゼロボロス/シンメイ」
  • 81 第三章 三剣士編第十話「揃う切っ先」
  • 82 Another chapter6 Sora&Aqua side‐1「鏡の再会」
  • 83 Another chapter6 Sora&Aqua side‐2
  • 84 Another chapter6 Sora&Aqua side‐3
  • 85 Another chapter6 Sora&Aqua side‐4
  • 86 Another chapter6 Sora&Aqua side‐5
  • 87 Another chapter6 Sora&Aqua side‐6
  • 88 Another chapter6 Sora&Aqua side‐7
  • 89 Another chapter6 Sora&Aqua side‐8
  • 90 Another chapter6 Sora&Aqua side‐9
  • 91 Fragment6‐1「鍵が奏でる戦い」
  • 92 Fragment6-2
  • 93 第四章 三剣士編第一話「僅かな一幕 その1」
  • 94 第四章 三剣士編第二話「焦り」
  • 95 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(前編)
  • 96 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(中編)
  • 97 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(後編)
  • 98 第四章 三剣士編第三話「集い地」
  • 99 第四章 三剣士編第四話「箱舟モノマキア」
  • 100 第四章 三剣士編第五話「協議」
  • 101 第四章 三剣士編断章「黄泉の細道」
  • 102 Another chapter7 Terra&Aqua side‐1「夕日が照らす陰と陽」
  • 103 Another chapter7 Terra&Aqua side‐2
  • 104 Another chapter7 Terra&Aqua side‐3
  • 105 Another chapter7 Terra&Aqua side‐4
  • 106 Another chapter7 Terra&Aqua side‐5
  • 107 Another chapter7 Terra&Aqua side‐6
  • 108 Another chapter7 Terra&Aqua side‐7
  • 109 Another chapter7 Terra&Aqua side‐8
  • 110 Another chapter7 Terra&Aqua side‐9
  • 111 Fragment7‐1「記憶と思いの力」
  • 112 Fragment7‐2
  • 113 Fragment7‐3
  • 114 Fragment7‐4
  • 115 第五章 三剣士編第一話「前夜」
  • 116 第五章 三剣士編第二話「たどり着いた世界の光景」
  • 117 第五章 三剣士編第三話「開戦」
  • 118 第五章 三剣士編第四話「先魁」
  • 119 第五章 三剣士編第五話「光に宿る影」
  • 120 第五章 三剣士編第六話「無浄輪無廻」
  • 121 第五章 三剣士編第七話「二人の最果て」
  • 122 第五章 三剣士編第八話「第四島攻略前編」
  • 123 第五章 三剣士編第九話「第四島攻略後編」
  • 124 第五章 三剣士編第十話「第二島攻略前編」
  • 125 第五章 三剣士編第十一話「第二島攻略後編」
  • 126 第五章 三剣士編第七話「幕間1」
  • 127 第五章 三剣士編第十二話「第五島攻略前編」
  • 128 第五章 三剣士編第十三話「第五島攻略後編」
  • 129 第五章 三剣士編第十四話「第三島攻略序」
  • 130 第五章 三剣士編第十五話「第三島攻略破」
  • 131 第五章 三剣士編第十六話「第三島攻略急の壱」
  • 132 第五章 三剣士編第十七話「第三島攻略急の弐」
  • 133 第五章 三剣士編第十八話「第一島へ」
  • 134 Another chapter8 Sora side‐1「儚き海の哀歌」
  • 135 Another chapter8 Sora side‐2
  • 136 Another chapter8 Sora side‐3
  • 137 Another chapter8 Sora side‐4
  • 138 Another chapter8 Sora side‐5
  • 139 Another chapter8 Sora side‐6
  • 140 Another chapter8 Sora side‐7
  • 141 Another chapter8 Sora side‐8
  • 142 Another chapter8 Sora side‐9
  • 143 Another chapter8 Sora side‐10
  • 144 Another chapter8 Sora side‐11
  • 145 Another chapter8 Sora side‐12
  • 146 Another chapter8 Sora side‐13
  • 147 Another chapter8 Sora side‐14(あとがき追記しました)
  • 148 Fragment8‐1「天使のレクイエム」
  • 149 Fragment8‐2
  • 150 第六章 三剣士編第一話「沸き立つ心」
  • 151 第六章 三剣士編第二話「魂の慟哭」
  • 152 第六章 三剣士編第三話「時と空の防陣」
  • 153 第六章 三剣士編第四話「記憶の再編」
  • 154 第六章 三剣士編第五話「魔K刀リンナ」
  • 155 第六章 三剣士編第六話「煌く炎」
  • 156 第六章 三剣士編第七話「戦闘 アバタール」
  • 157 第六章 三剣士編第八話「戦いの果て」
  • 158 第六章 三剣士編第九話「真実へ」
  • 159 第六章 三剣士編第十話「神理と代行体」
  • 160 第六章 三剣士編第十一話「ユニテ・イリアドゥス」
  • 161 第六章 三剣士編第十二話「共有」
  • 162 第六章 三剣士編第十三話「蒼と茜」
  • 163 第六章 三剣士編第十四話「運命の軌」
  • 164 Another chapter9 Terra side‐1 「交差せし歯車」
  • 165 Another chapter9 Terra side‐2
  • 166 Another chapter9 Terra side‐3
  • 167 Another chapter9 Terra side‐4
  • 168 Another chapter9 Terra side‐5
  • 169 Another chapter9 Terra side‐6
  • 170 Fragment9「始まりを紡ぎし者達」
  • 171 Another chapter10 Aqua side‐1「黄昏に眠りし歪んだ人形」
  • 172 Another chapter10 Aqua side‐2
  • 173 Another chapter10 Aqua side‐3
  • 174 Another chapter10 Aqua side‐4
  • 175 Fragment10-1「真(まこと)に隠された偽り」
  • 176 Fragment10-2
  • 177 Fragment10-3
  • 178 Fragment10-4(あとがき追記しました)
  • 179 第七章 罪業編第一話「深き混沌の過去」
  • 180 第七章 罪業編第二話「χブレード」
  • 181 第七章 罪業編第三話「開闢の英雄」
  • 182 第七章 罪業編第四話「白と黒」
  • 183 第七章 罪業編第五話「いざや進め」
  • 184 第七章 三剣士編第一話「結びつく絆 前編」
  • 185 第七章 三剣士編第二話「結びつく絆 後編/神理とは」
  • 186 第七章 三剣士編第三話「一時の暇」
  • 187 Another the last chapter‐1 「絶望へのカウントダウン」
  • 188 Another the last chapter‐2
  • 189 Another the last chapter‐3
  • 190 Another the last chapter‐4
  • 191 Another the last chapter‐5
  • 192 Another the last chapter‐6
  • 193 Another the last chapter‐7
  • 194 Another the last chapter‐8
  • 195 Another the last chapter‐9
  • 196 Another the last chapter‐10
  • 197 Another the last chapter‐11
  • 198 Another the last chapter‐12
  • 199 Another the last chapter‐13
  • 200 Another the last chapter‐14
  • 201 Another the last chapter‐15
  • 202 Another the last chapter‐16
  • 203 Another the last chapter‐17
  • 204 Another the last chapter‐18
  • 205 Another the last chapter‐19
  • 206 Another the last chapter‐20
  • 207 Another the last chapter‐21
  • 208 Another the last chapter‐22
  • 209 Another the last chapter‐23
  • 210 Another the last chapter‐24
  • 211 Another the last chapter‐25
  • 212 Another the last chapter‐26
  • 213 Another the last chapter‐27 (あとがき追記しました)
  • Another chapter9 Terra side‐5

    「『フォール・テレポ』」

     真上から聞こえた声に全員が頭を上げる。
     何も無かった筈の虚空から、ダブルセイバーを構える煤汚れたエンの姿が現れる。
     その切先が向けるのは、真下にいるレイア。

    「レイアァ!!」

     考えるよりも先に、クウがレイアを突き飛ばす。
     それと同時に、落ちてきたエンの持つ刃に背中を切り裂かれた。

    「がはぁ!?」

    「クウさん!?」

     クウに突き飛ばされて砂浜に倒れ込んだレイアが悲鳴を上げる。
     しかし、レイアの心配とは裏腹にクウはどうにか踏み止まると拳を握り込んだ。

    「さっきから、少女狙うなんて…男としてなっちゃいねーなぁ!!」

     その叫びと共に、一気に拳を目の前にいるエンに突き出す。
     しかし、エンはダブルセイバーを盾にして刃の腹の部分で拳を防御した。

    「カウンターで攻撃。妥当な判断でしょうが――」

     ここで言葉を止めるなり、武器を振って思いっきりクウを弾き返した。

    「爪が甘い。『ファイガ』」

     素早くエンが手を振るうと、クウの足元に炎が集約して巨大な火柱となって噴き上がる。
     巨大な炎によってクウは宙に舞うように吹き飛ばされると、やがて砂浜に激突するように落ちた。

    「ぐぅ…!?」

    「いやぁ!! クウさんっ!!」

    「レイア、駄目だ!!」

     思わずレイアが駆け寄ると、すぐにテラが止めようとする。
     しかし、その時にはエンはレイアの前に躍り出てダブルセイバーを上に構えていた。
     そうしてエンが振り下ろすが、間一髪で無轟が割り込んで互いの刃をぶつけて防御した。

    「無轟、さん…」

    「呆けるな!! 二人ともクウを回復しろ!!」

    「ハ、ハイっ!!」

     無轟の指示に、レイアだけでなくテラも倒れるクウに駆け寄って癒しの光で包み込む。
     二人が『ケアルガ』を使うのを無轟が確認していると、鍔迫り合いの状態でエンが笑いかけた。

    「…先程よりも、随分と立ち回りが乱れていますね? 人と共に戦った経験が少ないようで」

    「今まで一人だったものでな…だが」

     柄を握り込んでエンを弾き飛ばすと、刀を振るい燈した劫火を振り払う。
     辺りに出来あがった舞い散る火の粉を確認すると、無轟は呟いた。

    「爆ぜろ」

     その呟きと共に、火の粉が拡散するように爆発する。
     無轟すら飲み込む紅蓮の波濤に、エンも防御が間に合わずに巻き込まれる。
     やがて炎が消えると、ダメージを負ったのかエンはよろめきながら無傷の無轟を見た。

    「今のは…?」

    「『烈火・緋の花』。あいつらが離れたからこそ、使える技だ。さあ、続きと行こうか」

     再び刀に炎を纏う無轟に、エンは武器を握りながらも目を細くした。

    「その強さ故、仲間が周りにいないから戦える――…一見すれば、彼らを足手纏いと認識させる行動。だけど、それはあなたなりに彼らを大切に思っている証拠でもある」

     何処か冷静に分析するエンに、無轟は顔を訝しる。
     そんな事を知ってか知らずか、エンはゆっくりとダブルセイバーの切先を向け、言った。

    「なら、彼らを狙えばどうなります?」

    「何っ!?」

     思わず後ろを振り返ると、三人のいる場所からエンまで丁度直線状になっている。
     この事実に無轟が気づいた時には、エンは刃の切先に闇の力を溜めていた。

    「『カラミティブリンガー』」

     人を軽く呑み込めるほどの巨大な闇の球体を作り出し、無轟に向けて放つ。
     ここで避ければ三人に当たる。そんな思考が過り、無轟は瞬時にさっきよりも炎を纏わせると闇の球体に斬り込んだ。
     だが、闇の球体はまるで付着するように炎を纏う刀にくっついてしまい弾き返す事が出来ない。しかも、その状態で徐々に無轟に接近してくる。

    「ぬ、ぐぅお…!!」

    「っ! レイア、クウを頼む!!」

     無轟の状態にいち早く気づいたテラは、回復を中断してキーブレードに魔力を溜めて上に掲げた。

    「『クエイク』!!」

     無轟が止めている闇の球体の下から、岩が勢いよく隆起して貫く。
     だが、貫いた箇所は闇が蠢きながら塞がれていく。しかも、威力も落ちていないのか未だに弾き返せない。

    「まだ威力が弱まらないだと…!?」

    「こうなったら、俺も一緒に――!!」

    「来るな!! ここは俺一人でやる!!」

    「だけど!?」

    「テラさん、無轟さん…!!」

     この二人の様子に、レイアも歯を食い縛りながら顔を俯かせる。
     そうして視界に映ったのは、苦しそうに癒しの光に包まれているクウの姿。

    (私に…私にもっと、力があったら…!!)

     彼を怒らせなければ、説得が出来たら、あの攻撃に気づけたら。そう考えれば、こうなったのは全て自分の所為だ。
     なのに、さっきから守られてばっかりで攻撃さえも出来ない…いや、したくないとさえ思っている。だが、例え攻撃の魔法を放ったとしても彼なら余裕で対処するだろう。
     それでも、このままではいけない。自分も立ち向かわなければ、皆が傷付けられるだけだ。

    (戦える力じゃなくてもいい…――せめて皆さんを、守る力…立ち向かえる力を…!!)

     レイアは回復の手を止めると、エンの方に向かって立ち上がる。
     持っていた杖を消すと、胸の前で両手を握りしめて目を閉じて祈りを捧げ始める。

    「レイア…?」

    「お願い…!! 皆に、祝福の福音を…!!」

     訝しげなクウの声を無視し、レイアは呟きながら祈りを込める。
     すると、自分の中で暖かな力が流れ出す。

    「この力は!?」

     エンもレイアの様子に気づいて目を見張っていると、レイアの身体が輝きだした。

    (私の全ての力を使って、皆さんの力にっ!!!)

     今ある魔力をレイアは解放し、自身の想いを発動させるべく魔法を唱えた。

    「――『ベネディクトヴィスター』!!」

     レイアを中心に、辺り一帯が暖かな光で満ちる。
     その光と共に、レイア以外の三人の身体に異変が起きた。

    「傷が…治っていく」

    「それに、力も湧き上がる…これは、一体?」

     怪我をしたクウが起き上っていると、テラも自分の掌を見つめる。
     無轟も先程よりも力が湧き上がるのを感じ、刀に力を込めた。

    「うぉああああっ!!!」

     雄叫びと共に力を入れると、先程まで押し返されていた球体が離れていく。
     一気に刀を振り抜くと、球体は炎に包まれて闇へと霧散した。

    「よか、った…」

    「レイア!?」

     球体を消した無轟を見ながらレイアが弱々しい笑みを浮かべ、砂浜に倒れ込む。
     すぐにクウが抱きかかえると、倒れた原因を理解した。

    「レイア…魔力全部使い果たしてまで、俺達に…」

     気を失ったレイアからは、魔力をまったく感じられなかった。
     恐らく自身の魔力を引き換えに、自分達の傷を治し守護や攻撃を増加させる魔法までかけてくれたのだろう。戦える力を与える為に。
     レイアをそっと寝かせると、クウはエンに向かって拳を鳴らした。

    「――テラ、行くぞ。レイアがここまでしてくれたんだ…」

    「ああ…奴を倒すぞっ!!!」

     クウに同意するように、テラは片足を引いてエンに狙いを定める。
     “ある攻撃”の準備動作だとクウは分かり、時間稼ぎの為にエンの前に出た。

    「喰らえぇ!! 『アクロバット・アーツ』!!」

    「『ダンシングエッジ』!!」

     拳を振り上げるもののアッパーを避けられる。だが、クウは構わず宙を舞うように何度も蹴りを見舞わせる。
     それに対しエンは双剣にして蹴りを一つ一つ的確に受け流す様に防御する。

    「ぬぅん!!」

     と、ここで炎を引き攣れながら無轟が斬り込みにかかる。
     これを見たエンは、クウの攻撃を防御しながら一回転するように上空へと逃げる。
     そうして上へと飛び上がると、テラがキーブレードを巨大なキャノン砲へと変えてエンに狙いを定めていた。

    「『アルテマキャノン』!!」

    「『ホーリースター』!!」

     巨大な光弾が発射されると、エンは手を振るって光の球体をぶつける。
     光の球体が光弾に当たり、相殺するように互いに爆発を起こす。この光景を目の当たりにする三人に、エンは着地すると不敵の笑みを作った。

    「守護の魔法が消されても…そんなの、私にとって障害にもならない!!」

    「だったら…クウっ!!」

    「ああっ!! 『メテオドライヴ』!!」

     テラの声に、クウは素早くエンに近づくと大きく屈んで思いっきり蹴り上げる。
     直後、バク転するようにエンの服を掴んで地面に激突する程力強く叩きつけた。

    「うぐ…!」

    「『ウィンドカッター』!!」

     クウの攻撃に怯んでいると、テラがキーブレードに風を纏わせて回転する。
     そうして起こる衝撃波により、エンは上空へと打ち上げる。

    「何を――っ!?」

     二人の意図が掴めずに下を見ると、無轟が炎を纏わせた刀を地面に振り下ろしていた。

    「『火之R毘古』っ!!」

     刀を叩きつけると同時に、炎の大津波が火柱となって上空のエンに襲い掛かる。
     こうして炎に呑まれるエンを見て、無轟は二人に笑いかけた。

    「これで、いいのだろう?」

    「ああ…感謝するぜ、オッサン!!」

     クウが拳を構えて双翼を大きく広げると、テラもキーブレードに力を込める。
     今までの攻撃は倒す為のものではない。全ては、自分達の力をフルに発揮する準備段階。
     出来るだけ強い攻撃で防御を崩して怯ませ、上空へと打ち上げる。この行動の意図に気づかれぬよう炎で攻撃と見せかけた目晦ましをさせつつ、更に上に持ち上げる。
     そして今、全ての準備が整った。

    「いくぞ、クウ!!」

    「任せとけよ!!」

     二人は心を一つにさせ、一斉に飛び上がって炎の中にいるエンに突っ込む。
     テラはキーブレードをまるで歯車のように変形させてドリルのように回転させて攻撃する。その上で、クウが下から怒涛のように蹴りを入れていく。
     やがて、二人はエンに向かってそれぞれ武器と拳に闇の力を纏わせた。

    「終わりだぁ!!」

    「ぶっ飛べぇ!!」

     エンを打ち落す様に、お互いに攻撃を力の限りぶつけ合った。

    「「『インパクト・ダーガ』っ!!!」」

     直後、闇による大爆発が起きる。
     あまりの威力に火柱さえも霧散し、エンを思いっきり地面へと叩きつけた。

    「これで――!!」

     エンが落ちた地点の砂浜がめり込み、クウが空中で飛んだまま笑みを浮かべた時だった。



    「――『セイグリットムーン』」



     一つの呟きと共に、色の薄い光の球体が現れる。
     直後、眩しい光が辺りを包み込んで弾けた。

    「なっ…うわぁ!?」

    「ぐあぁ!!」

    「ぬうぅ…!!」

     突然の攻撃に対処出来ず、三人はダメージを受けてしまう。
     更にクウの翼が消えてしまい、地面に落下する。
     先に着地していたテラと違い、ロクに受け身を取れずに落下してしまったクウ。そんなクウの前に、服がボロボロになっているエンが立った。

    「う、ぐ…がはぁ!?」

    「どうしました、これで終わりとか言いませんよね?」

    「ちく、しょ…」

     背中を踏まれながらもエンを見ると、服の様子と違って未だに余裕を保っている。
     あれだけの攻撃を喰らってもこの様子、しかも無轟と互角に渡り合える強さ。やはりこの男は只者ではない、まだ力を隠し持っている。
     悔しさもあってクウが睨みつけると、エンの目に黒い何かが宿り出す。

    「本当に諦めが悪い…やはり、貴様は生かしておけぬ存在だな」

     やけに響く冷たい声に、クウは妙な違和感を覚える。
     しかし、その違和感を考えるよりも先に、エンがダブルセイバーを振り上げていた。

    「消えろ、下種が」

     それだけ言うと、一気に刃を振り下ろした。

    12/09/28 11:04 NANA&夢旅人   

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