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Re:開闢の宴 合併リレー小説

NANA&夢旅人

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章【動き出す者】
  • 02 第一章 心剣士編第一話「仮面の女」
  • 03 第一章 心剣士編第二話「古戦場/王手詰み」
  • 04 第一章 心剣士編第三話「仮面/難解」
  • 05 第一章 心剣士編第四話「訪問者」
  • 06 第一章 心剣士編断章 「蠢き続ける計画」
  • 07 Another an introduction 【終わりから始まりへ】
  • 08 Another chapter1 Sora side‐1 「新たなる始まり」
  • 09 Another chapter1 Sora side‐2
  • 10 Another chapter1 Sora side‐3
  • 11 Another chapter1 Sora side‐4
  • 12 Fragment1 「旅のチケット」
  • 13 第一章 永遠剣士編第一話「永遠」
  • 14 第一章 永遠剣士編第二話「タルタロス」
  • 15 第一章 永遠剣士編第三話「仮面の遠謀/タルタロス到着」
  • 16 第一章 永遠剣士編第四話「塔/襲撃」
  • 17 第一章 永遠剣士編第五話「戦の始まり」
  • 18 第一章 永遠剣士編第六話「火種/孔」
  • 19 第一章 永遠剣士編第七話「黒龍魔王/猫」
  • 20 第一章 永遠剣士編第八話「イヴ」
  • 21 第一章 永遠剣士編第九話「アガレス・グシフォン」
  • 22 第一章 永遠剣士編第十話「歌姫/流星」
  • 23 第一章 永遠剣士編第十一話「途絶/酷い奴」
  • 24 第一章 永遠剣士編第十二話「仮面の情報」
  • 25 第一章 永遠剣士編断章「仮面/永遠/凛那」
  • 26 Another chapter2 Terra side‐1 「止まり、開かれし物語」
  • 27 Another chapter2 Terra side‐2
  • 28 Another chapter2 Terra side‐3
  • 29 Fragment2「介入」
  • 30 Another chapter3 Aqua side‐1「光の行く先へ」
  • 31 Another chapter3 Aqua side‐2
  • 32 Another chapter3 Aqua side‐3
  • 33 Fragment3「試練」
  • 34 第二章 心剣士編第一話/第二話「嵐の前の静寂/布告」
  • 35 第二章 心剣士編第三話「戦のはじまり」
  • 36 第二章 心剣士編第四話「爻わる刃たち」
  • 37 第二章 心剣士編第五話「鬼人」
  • 38 第二章 心剣士編第六話「贖罪」
  • 39 第二章 心剣士編第七話「Sinの理」
  • 40 第二章 心剣士編第八話「妖刀/天舞剣 」
  • 41 第二章 心剣士編第九話「正体/無轟の家」
  • 42 第二章 心剣士編第十話「斬る覚悟」
  • 43 第二章 心剣士編断章「約定」
  • 44 第二章 反剣士編第一話「黒羽の旅人」
  • 45 第二章 反剣士編第二話「アダム/竜泉郷」
  • 46 第二章 反剣士編第三話「来訪/白竜」
  • 47 第二章 反剣士編第四話「ゼロボロスとシンメイ」
  • 48 第二章 反剣士編第五話「龍神シンメイ/双龍の過去」
  • 49 第二章 反剣士編第六話「新たな関係」
  • 50 第二章 反剣士編第七話「語らい」
  • 51 第二章 反剣士編第八話「顰める真実」
  • 52 Another chapter4 Sora&Terra side‐1「時を超えた再会」
  • 53 Another chapter4 Sora&Terra side‐2
  • 54 Another chapter4 Sora&Terra side‐3
  • 55 Another chapter4 Sora&Terra side‐4
  • 56 Another chapter4 Sora&Terra side‐5
  • 57 Another chapter4 Sora&Terra side‐6
  • 58 Fragment4-1「届かぬ思い」
  • 59 Fragment4‐2「本気の戦い」
  • 60 Fragment4-3
  • 61 Another chapter5 Aqua side‐1「共に守る一つの想い」
  • 62 Another chapter5 Aqua side‐2
  • 63 Another chapter5 Aqua side‐3
  • 64 Another chapter5 Aqua side‐4
  • 65 Fragment5-1「異世界からの来訪者」
  • 66 Fragment5-2
  • 67 NGハプニング集・3D版 前編
  • 68 NGハプニング集・3D版 後編
  • 69 第三章 三剣士編第一話「出立/口論」
  • 70 第三章 三剣士編第二話「追跡/解除」
  • 71 第三章 三剣士編断章壱 「裏切り者アバタール」
  • 72 第三章 三剣士編第三話「会合」
  • 73 第三章 三剣士編第四話「心剣世界」
  • 74 第三章 三剣士編第五話「蒼炎の女神」
  • 75 夢旅人誕生日記念作品・祝おう、騒ごう、生き延びれのトークショー!? 前編
  • 76 夢旅人誕生日記念作品・祝おう、騒ごう、生き延びれのトークショー!? 後編
  • 77 第三章 三剣士編第六話「秩序の騎士アルビノーレ」
  • 78 第三章 三剣士編第七話「大地の半神アレスティア」
  • 79 第三章 三剣士編第八話「襲撃! KR」
  • 80 第三章 三剣士編第九話「ゼロボロス/シンメイ」
  • 81 第三章 三剣士編第十話「揃う切っ先」
  • 82 Another chapter6 Sora&Aqua side‐1「鏡の再会」
  • 83 Another chapter6 Sora&Aqua side‐2
  • 84 Another chapter6 Sora&Aqua side‐3
  • 85 Another chapter6 Sora&Aqua side‐4
  • 86 Another chapter6 Sora&Aqua side‐5
  • 87 Another chapter6 Sora&Aqua side‐6
  • 88 Another chapter6 Sora&Aqua side‐7
  • 89 Another chapter6 Sora&Aqua side‐8
  • 90 Another chapter6 Sora&Aqua side‐9
  • 91 Fragment6‐1「鍵が奏でる戦い」
  • 92 Fragment6-2
  • 93 第四章 三剣士編第一話「僅かな一幕 その1」
  • 94 第四章 三剣士編第二話「焦り」
  • 95 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(前編)
  • 96 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(中編)
  • 97 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(後編)
  • 98 第四章 三剣士編第三話「集い地」
  • 99 第四章 三剣士編第四話「箱舟モノマキア」
  • 100 第四章 三剣士編第五話「協議」
  • 101 第四章 三剣士編断章「黄泉の細道」
  • 102 Another chapter7 Terra&Aqua side‐1「夕日が照らす陰と陽」
  • 103 Another chapter7 Terra&Aqua side‐2
  • 104 Another chapter7 Terra&Aqua side‐3
  • 105 Another chapter7 Terra&Aqua side‐4
  • 106 Another chapter7 Terra&Aqua side‐5
  • 107 Another chapter7 Terra&Aqua side‐6
  • 108 Another chapter7 Terra&Aqua side‐7
  • 109 Another chapter7 Terra&Aqua side‐8
  • 110 Another chapter7 Terra&Aqua side‐9
  • 111 Fragment7‐1「記憶と思いの力」
  • 112 Fragment7‐2
  • 113 Fragment7‐3
  • 114 Fragment7‐4
  • 115 第五章 三剣士編第一話「前夜」
  • 116 第五章 三剣士編第二話「たどり着いた世界の光景」
  • 117 第五章 三剣士編第三話「開戦」
  • 118 第五章 三剣士編第四話「先魁」
  • 119 第五章 三剣士編第五話「光に宿る影」
  • 120 第五章 三剣士編第六話「無浄輪無廻」
  • 121 第五章 三剣士編第七話「二人の最果て」
  • 122 第五章 三剣士編第八話「第四島攻略前編」
  • 123 第五章 三剣士編第九話「第四島攻略後編」
  • 124 第五章 三剣士編第十話「第二島攻略前編」
  • 125 第五章 三剣士編第十一話「第二島攻略後編」
  • 126 第五章 三剣士編第七話「幕間1」
  • 127 第五章 三剣士編第十二話「第五島攻略前編」
  • 128 第五章 三剣士編第十三話「第五島攻略後編」
  • 129 第五章 三剣士編第十四話「第三島攻略序」
  • 130 第五章 三剣士編第十五話「第三島攻略破」
  • 131 第五章 三剣士編第十六話「第三島攻略急の壱」
  • 132 第五章 三剣士編第十七話「第三島攻略急の弐」
  • 133 第五章 三剣士編第十八話「第一島へ」
  • 134 Another chapter8 Sora side‐1「儚き海の哀歌」
  • 135 Another chapter8 Sora side‐2
  • 136 Another chapter8 Sora side‐3
  • 137 Another chapter8 Sora side‐4
  • 138 Another chapter8 Sora side‐5
  • 139 Another chapter8 Sora side‐6
  • 140 Another chapter8 Sora side‐7
  • 141 Another chapter8 Sora side‐8
  • 142 Another chapter8 Sora side‐9
  • 143 Another chapter8 Sora side‐10
  • 144 Another chapter8 Sora side‐11
  • 145 Another chapter8 Sora side‐12
  • 146 Another chapter8 Sora side‐13
  • 147 Another chapter8 Sora side‐14(あとがき追記しました)
  • 148 Fragment8‐1「天使のレクイエム」
  • 149 Fragment8‐2
  • 150 第六章 三剣士編第一話「沸き立つ心」
  • 151 第六章 三剣士編第二話「魂の慟哭」
  • 152 第六章 三剣士編第三話「時と空の防陣」
  • 153 第六章 三剣士編第四話「記憶の再編」
  • 154 第六章 三剣士編第五話「魔K刀リンナ」
  • 155 第六章 三剣士編第六話「煌く炎」
  • 156 第六章 三剣士編第七話「戦闘 アバタール」
  • 157 第六章 三剣士編第八話「戦いの果て」
  • 158 第六章 三剣士編第九話「真実へ」
  • 159 第六章 三剣士編第十話「神理と代行体」
  • 160 第六章 三剣士編第十一話「ユニテ・イリアドゥス」
  • 161 第六章 三剣士編第十二話「共有」
  • 162 第六章 三剣士編第十三話「蒼と茜」
  • 163 第六章 三剣士編第十四話「運命の軌」
  • 164 Another chapter9 Terra side‐1 「交差せし歯車」
  • 165 Another chapter9 Terra side‐2
  • 166 Another chapter9 Terra side‐3
  • 167 Another chapter9 Terra side‐4
  • 168 Another chapter9 Terra side‐5
  • 169 Another chapter9 Terra side‐6
  • 170 Fragment9「始まりを紡ぎし者達」
  • 171 Another chapter10 Aqua side‐1「黄昏に眠りし歪んだ人形」
  • 172 Another chapter10 Aqua side‐2
  • 173 Another chapter10 Aqua side‐3
  • 174 Another chapter10 Aqua side‐4
  • 175 Fragment10-1「真(まこと)に隠された偽り」
  • 176 Fragment10-2
  • 177 Fragment10-3
  • 178 Fragment10-4(あとがき追記しました)
  • 179 第七章 罪業編第一話「深き混沌の過去」
  • 180 第七章 罪業編第二話「χブレード」
  • 181 第七章 罪業編第三話「開闢の英雄」
  • 182 第七章 罪業編第四話「白と黒」
  • 183 第七章 罪業編第五話「いざや進め」
  • 184 第七章 三剣士編第一話「結びつく絆 前編」
  • 185 第七章 三剣士編第二話「結びつく絆 後編/神理とは」
  • 186 第七章 三剣士編第三話「一時の暇」
  • 187 Another the last chapter‐1 「絶望へのカウントダウン」
  • 188 Another the last chapter‐2
  • 189 Another the last chapter‐3
  • 190 Another the last chapter‐4
  • 191 Another the last chapter‐5
  • 192 Another the last chapter‐6
  • 193 Another the last chapter‐7
  • 194 Another the last chapter‐8
  • 195 Another the last chapter‐9
  • 196 Another the last chapter‐10
  • 197 Another the last chapter‐11
  • 198 Another the last chapter‐12
  • 199 Another the last chapter‐13
  • 200 Another the last chapter‐14
  • 201 Another the last chapter‐15
  • 202 Another the last chapter‐16
  • 203 Another the last chapter‐17
  • 204 Another the last chapter‐18
  • 205 Another the last chapter‐19
  • 206 Another the last chapter‐20
  • 207 Another the last chapter‐21
  • 208 Another the last chapter‐22
  • 209 Another the last chapter‐23
  • 210 Another the last chapter‐24
  • 211 Another the last chapter‐25
  • 212 Another the last chapter‐26
  • 213 Another the last chapter‐27 (あとがき追記しました)
  • Another the last chapter‐18


     突如無轟を中心に白い炎が爆発したように広がる。
     あまりの威力に、誰もが顔を覆って攻撃の余波をヒシヒシと感じていた。

    「くっ…!? 無轟!?」

     いち早くテラが無轟のいた場所を見ると、無轟は所々に火傷を負っていたがしっかりと立っていた。

    「――さすが、だな」

    「そちらこそ、即席で仕込んだ『フラゴール・フレア』を受けてもまだ立っていられるとは…」

     少し前に、別の世界で敵対する人物達の戦闘力を量る為に使った魔法。
     その時よりは多少威力は落ちてるが、諸に喰らっても尚立っていられる無轟に驚きを通り越して呆れを浮かべるエン。
     そんな中、知識に長けたゼロボロスは今のカラクリに気づいた。

    「地面に魔法を仕込んでいたんですか…何時の間に」

    「暇はありましたよ?」

     布越しに笑うなり、エンは腕を今度は横に振るった。

    「さっきあなた達が作戦会議している間にね!!」

     直後、地面の一部が光ると辺り一帯に巨大な雷が降り注ぐ。
     この魔法攻撃に、全員一斉にガードや避けたりした。

    「なんて強力な『サンダガ』なの!?」

    「ひ、一溜りもなかったぞ…!!」

     アクアが悲鳴に似た叫びを上げると、同じ考えなのかテラも冷や汗を掻く。
     当たっていたら黒焦げは確実だった攻撃が終わると、今度は巨大な暴風が襲い掛かる。

    「今度は『エアロガ』!?」

     ソラの『リフレガ』に守られながらヴェンが丈違いの暴風を見ていると、エンがダブルセイバーを二刀に変えていた。

    「『イノセンス』!!」

     剣を振るい、真空の刃を次々と暴風に紛れて飛ばしていく。
     更なる攻撃が組み合わさり、誰もが息を呑んで目を見開いた。

    「『火之鎖刈突』――!!」

     その時、暴風の中で無轟が炎の鎖をエンに投げつけ、腕に絡みつける。
     そのまま引き寄せようとした直後、巨大な氷結が飛んできて炎の鎖を引き千切った。

    「なに!?」

    「私を抑え込めば、仕込んだ魔法は発動しないと思いました? まったく――」

     『ブリザガ』で炎の鎖から解放されるなり、二刀の剣を構え後ろを振り向く。
     瞬間、甲高い金属音が鳴り響いた。

    「単純なバカほど、腹立たせるものはない」

     冷たい目をして低い声で呟くエンの前には、クウが蹴りを放ったまま二刀の剣で抑え込まれていた。

    「なめんなぁ!! 『メテオドライヴ』――!!」

     即座に距離を取るなり、エンに掴みかかろうとするクウ。
     しかし、クウが一歩踏み出すと共に黒い魔方陣が周りに現れる。
     すぐに逃げようとするが、何故か身体が拘束されたように動かない。

    「なっ…!?」

    「クウ!?」

    「下手に動くと…闇の雨が襲い掛かるぞ?」

     ソラが助けに行こうとすると、エンが尚も冷たい目で睨みつける。
     その言葉と共に地面の一部がが怪しく光ると、頭上に闇色の空間が開き漆黒の刃が雨の様に降り注いだ。

    「こんな魔法まで!?」

    「これじゃあ近づけない!?」

     遠くで見守るカイリはもちろん、ゼロボロスさえもこの魔法に驚きを隠せない。
     誰もが『カラミティ・レイン』に翻弄される中、エンは拘束されたクウを睨みつけた。

    「『ダークネス・ジャベリン』を喰らう覚悟は出来たか?」

    「う、動かな…!?」

     どうにかクウは動こうとするが、拘束する黒い魔方陣から刀や剣、槍などと言った闇の刃が現れる。
     それらは刀身をクウに突き立て、串刺しにしようと一斉に放たれた。


    「『ダークバラージュ』!!」


     だが、貫く直前に無数のキーブレードが闇の刃を粉々に砕く。
     この光景に思わずクウが息を呑んでいると、エンは横に目を向ける。
     そこには、回復したリクがキーブレードを手元に戻しながら着地していた。

    「どうやら、頭は冷めてるようですね?」

    「ああ。同じように怒っていたのに、冷静になってるオパールを見ていたらなぁ!!」

     そう言うなり、リクはエンに向かって斬りかかる。
     それを二刀で防御しながら軽くオパールに目を向けると、アイテムで無轟を回復している。他の仲間に気を配るほど、理性を取り戻したのが分かる。
     一方で、クウは攻撃が終わったのに未だに魔方陣に捕らわれていた。

    「くっ…!! まだ、解けないのかよ…!!」

    「あの三下の真似になりますけど――」

     必死に身体を動かしていると、一つの呟きが聞こえる。
     見ると、拳に光のような白い炎を纏わせたゼロボロスの姿があった。

    「四の五の言ってられませんからね!! 『崩煌弾』!!」

     そう言うと、クウを拘束している魔方陣の部分に白い炎をぶつける。
     すると、魔方陣はまるで溶けるように崩れていく。
     やがてクウの拘束が解けると、エンはリクと戦いながら何処か感心した声を上げた。

    「フェンと違って、魔力を削る炎と言う訳ですか」

    「ええ。動けないままにしておくのはあまりにも可哀想なので、ねぇ!!」

     翼を羽ばたかせ、リクの加勢に入るゼロボロス。
     更にクウも翼で迫って拳をぶつけようとするが、エンは二刀の剣で三人の攻撃を防御する。

    「私を忘れるなぁ!!!」

    「はああぁ!!!」

     そんなエンの後ろで、ようやく回復したウィドと無轟が斬りかかる。
     周りを囲まれたエンは、急に立ち止まると一言呟いた。

    「『コラプサーノヴァ』」

     直後、エンの前方で眩い光が収縮する。
     それに気付いた時には、光は五人が隠れるほどの激しい大爆発を起こした。

    「「「「「があぁ!!?」」」」」

     この威力に、四人はもちろん無轟すらも体力を大幅に削られてしまう。
     そうして、カイリ達がいる程の距離まで五人は吹き飛ばされてしまった。

    「みんな!?」

    「足元に設置してて正解でした」

     カイリが『ポーション』を取り出して叫ぶ中、エンは軽く息を吐くと残りの人達に向かおうとする。
     しかし、二つの影がエンの前方に現れた。

    「『ラッシュブレード』!!」

    「『ラストアルカナム』!!」

     ソラとヴェンが素早く流れる攻撃を叩きつけようとするが、エンはその攻撃を大きく距離を取って避ける。
     このエンの行動に、ソラとヴェンはニヤリと笑って挑発した。

    「避けるなんてどうしたんだよ?」

    「俺達の攻撃に恐れをなしたな!!」

    「避けたくもなりますよ」

     二人の挑発にも動じず、エンは淡々と言葉を述べた。


    「今の魔法から、危険な現象が起きるんですから」


     耳を疑う言葉が出てきたと同時に、二人に向かって風が吹く。
     思わず後ろを振り返ると、少し先…丁度エンが魔法を放った場所にサッカーボールぐらいの小さな黒い穴が出来ていた。

    「何だこれ!?」

    「って言うか、引き込まれる!?」

     黒い穴に引き寄せられていると分かり、ソラとヴェンがキーブレードを床に突き刺す。
     二人だけでなく他の人も目を疑っていると、エンは何処か面白そうに説明を始めた。

    「攻撃の後に追撃が出来る魔法があったら便利でしょう? 今の魔法は、星が消滅する際の大規模な爆発を元にした魔法でね。その後に、《ブラックホール》と言う圧縮した重力の空間を作る様にしたんですよ」

    「そんな物を魔法で作ったの!?」

    「どう言う事だ!?」

     意味を悟ったオパールが驚いていると、テラが聞き返す。

    「ブラックホールってのは、光さえも脱出出来ない高密度の重力の塊なの!! 重力場に入ったら最後、呑み込まれて跡形も無く潰されるわよ!!」

    「「それ早く言ってぇぇぇ!!?」」

     大声でオパールが説明するなり、一番近くにいるソラとヴェンはさっきよりも必死でキーブレードにしがみ付く。あの黒い穴に入ったら、問答無用でお陀仏になるのだから当然だろう。

    「ヴェン、すぐに助けて――!!」

    「そのまま私が何もしないと?」

     アクアが助けようと動こうとすると、エンが意味ありげな言葉を返してくる。
     それと共に再び地面の一部が光り、炎や氷、雷・風などの嵐がアクア達に襲い掛かった。

    「何だ、この魔法のオンパレード!?」

     テラが真下から湧き上がる光の波動を避けていると、エンがクスリと笑った。

    「『ブラスタースペル』、全ての属性の上級魔法を次々と放つ中で助けにいけます?」

    「ならば、それごと燃やし尽くす!! 『火之鳳琉』!!」

    「俺もだ!! 『アルテマキャノン』!!」

    「『メガフレア』!!」

     いち早く復帰した無轟が頭上に飛び上がり、黒い穴に向かって炎熱の衝撃波を繰り出す。
     テラも負けじと属性の嵐の中キーブレードを大砲に変えて強大な砲弾を打ち、アクアは湧き上がる闇を打ち払うようにキーブレードの切先に高熱の炎を溜めこんで大爆発を起こす。

    「待って!? 駄目!!」

     だが、三人の攻撃にオパールが止めようと声を荒げるがもう遅い。
     結果、襲い掛かる上級魔法は三人の攻撃で相殺されて止まったが、比例して黒い穴は何故か先程よりも大きくなっていた。

    「穴が大きくなった!?」

    「ブラックホールってのは、元の質量より軽い物を吸い込んだら成長しちゃうの!! 同じ質量なら相殺出来るだろうけど、あいつの強さ考えたらそんな攻撃じゃ意味がない!!」

     驚くテラに、冷や汗を垂らしながら原理を説明するオパール。
     そんな中、離れているにも関わらずアクア達にも引き寄せる重力が届いてくる。

    「距離があるのに、ここまで引き寄せられる…!? ヴェン!!」

    「ソラー!!」

     アクアとカイリが声をかける先では、ソラとヴェンが先程よりも強力になった重力に耐えながら辛そうにキーブレードを握っていた。

    「もう、持たない…!!」

    「もう駄目…!!」

     我慢の限界が訪れたのか、刺さっているキーブレードが傾き穴へと引き寄せられる。
     そうして重力の圧力に負け、とうとう二人は手放してしまう。

    「『マグネガ』!!」

    「「ふぎゃ!?」」

     その時、黒い穴から引きはがす様に前方の空中に現れた磁力の塊に思いっきり引き寄せられる。
     魔法の影響で二人は空中で情けない悲鳴を上げるが、荒療治で助けた人物にアクアは叫んだ。

    「レイア!?」

    「っ…!!」

     レイアを見ると、顔色を悪くしながらもソラとヴェンを引き寄せる磁力に魔力を注ぎ込んでいる。
     通常なら消える魔法を無理に維持させていると、エンが動いた。

    「『アーククロウ』」

     魔法を中断させようと、レイアに向かってダブルセイバーを回転させながら飛ばす。

    「させるかぁ!! 『ガントレットハーデス』!!」

     しかし、回復を終えたクウが向かってくるダブルセイバーを横から殴りつけるように地面に叩きつける。
     ついでに蹴りを放って遠くに吹き飛ばす様子に、レイアは笑みを浮かべた。

    「クウ、さん…!」

    「遅れてすみません、皆さん」

     助けてくれたクウに続き、一つの声が響き渡る。

    「すぐに終わらせます!!」

     ゼロボロスが叫ぶと、頭上に巨大な魔法陣が敷かれていく。
     そこから、黒い穴に向かって巨大な隕石がゆっくりと現れる。
     この光景に、エンはゼロボロスを見て軽く舌打ちした。

    「なるほど、攻撃されたまま復帰して来ないと思えば下準備してた訳ですか」

    「ええ、おかげでその邪魔なブラックホールも消せるほどの魔力を溜めこむ事が出来ました」

    「それにしては、やけに大きすぎますが?」

    「構いませんよ」

     ここで言葉を切ると、セロボロスは笑顔で言い放った。

    「彼が何とかしてくれますから」

     それを合図に、黒い影が隕石に向かって飛び上がる。

    「はあああぁ!!!」

     見ると、リクがキーブレードを構えて隕石に向かって飛び上がっている。
     そうして隕石の地点に辿り着くと、隕石を一閃するように突き刺す。
     直後、キーブレードを引き抜く様に振るうと隕石は大きな破片となって砕けた。

    「「『メテオレイン』!!!」」

     破片は辺り一帯に降り注ぎ、地面に激突する度に衝撃波が襲い掛かる。
     その猛攻はブラックホールだけでなくエンをも巻き込んでいく。
     やがて攻撃が止むと、ブラックホールだけではなくエンも消えていた。

    「リク、ありがと!」

    「助かったよ、レイア!」

     レイアの魔法が解けるなり、着地したリクにソラが駆け寄る。
     そしてヴェンもお礼を述べる中、無轟は未だに険しい表情を浮かべて一括した。

    「二人とも、気を抜くな!!」

    「大丈夫だって。だって、あんな攻撃受けたなら倒せて――」

     姿の見えないエンに、楽観的に考えを述べるソラ。
     確かに、ブラックホールさえも打ち消した隕石の嵐に見舞われれば倒せてもおかしくはないだろう。現に、エンの姿はどこにもない。

    「――『エンジェル・ラメント』」

     直後、そんな彼の考えは光の波動によって打ち消された。

    13/04/06 19:34 NANA&夢旅人   

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