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Re:開闢の宴 合併リレー小説

NANA&夢旅人

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章【動き出す者】
  • 02 第一章 心剣士編第一話「仮面の女」
  • 03 第一章 心剣士編第二話「古戦場/王手詰み」
  • 04 第一章 心剣士編第三話「仮面/難解」
  • 05 第一章 心剣士編第四話「訪問者」
  • 06 第一章 心剣士編断章 「蠢き続ける計画」
  • 07 Another an introduction 【終わりから始まりへ】
  • 08 Another chapter1 Sora side‐1 「新たなる始まり」
  • 09 Another chapter1 Sora side‐2
  • 10 Another chapter1 Sora side‐3
  • 11 Another chapter1 Sora side‐4
  • 12 Fragment1 「旅のチケット」
  • 13 第一章 永遠剣士編第一話「永遠」
  • 14 第一章 永遠剣士編第二話「タルタロス」
  • 15 第一章 永遠剣士編第三話「仮面の遠謀/タルタロス到着」
  • 16 第一章 永遠剣士編第四話「塔/襲撃」
  • 17 第一章 永遠剣士編第五話「戦の始まり」
  • 18 第一章 永遠剣士編第六話「火種/孔」
  • 19 第一章 永遠剣士編第七話「黒龍魔王/猫」
  • 20 第一章 永遠剣士編第八話「イヴ」
  • 21 第一章 永遠剣士編第九話「アガレス・グシフォン」
  • 22 第一章 永遠剣士編第十話「歌姫/流星」
  • 23 第一章 永遠剣士編第十一話「途絶/酷い奴」
  • 24 第一章 永遠剣士編第十二話「仮面の情報」
  • 25 第一章 永遠剣士編断章「仮面/永遠/凛那」
  • 26 Another chapter2 Terra side‐1 「止まり、開かれし物語」
  • 27 Another chapter2 Terra side‐2
  • 28 Another chapter2 Terra side‐3
  • 29 Fragment2「介入」
  • 30 Another chapter3 Aqua side‐1「光の行く先へ」
  • 31 Another chapter3 Aqua side‐2
  • 32 Another chapter3 Aqua side‐3
  • 33 Fragment3「試練」
  • 34 第二章 心剣士編第一話/第二話「嵐の前の静寂/布告」
  • 35 第二章 心剣士編第三話「戦のはじまり」
  • 36 第二章 心剣士編第四話「爻わる刃たち」
  • 37 第二章 心剣士編第五話「鬼人」
  • 38 第二章 心剣士編第六話「贖罪」
  • 39 第二章 心剣士編第七話「Sinの理」
  • 40 第二章 心剣士編第八話「妖刀/天舞剣 」
  • 41 第二章 心剣士編第九話「正体/無轟の家」
  • 42 第二章 心剣士編第十話「斬る覚悟」
  • 43 第二章 心剣士編断章「約定」
  • 44 第二章 反剣士編第一話「黒羽の旅人」
  • 45 第二章 反剣士編第二話「アダム/竜泉郷」
  • 46 第二章 反剣士編第三話「来訪/白竜」
  • 47 第二章 反剣士編第四話「ゼロボロスとシンメイ」
  • 48 第二章 反剣士編第五話「龍神シンメイ/双龍の過去」
  • 49 第二章 反剣士編第六話「新たな関係」
  • 50 第二章 反剣士編第七話「語らい」
  • 51 第二章 反剣士編第八話「顰める真実」
  • 52 Another chapter4 Sora&Terra side‐1「時を超えた再会」
  • 53 Another chapter4 Sora&Terra side‐2
  • 54 Another chapter4 Sora&Terra side‐3
  • 55 Another chapter4 Sora&Terra side‐4
  • 56 Another chapter4 Sora&Terra side‐5
  • 57 Another chapter4 Sora&Terra side‐6
  • 58 Fragment4-1「届かぬ思い」
  • 59 Fragment4‐2「本気の戦い」
  • 60 Fragment4-3
  • 61 Another chapter5 Aqua side‐1「共に守る一つの想い」
  • 62 Another chapter5 Aqua side‐2
  • 63 Another chapter5 Aqua side‐3
  • 64 Another chapter5 Aqua side‐4
  • 65 Fragment5-1「異世界からの来訪者」
  • 66 Fragment5-2
  • 67 NGハプニング集・3D版 前編
  • 68 NGハプニング集・3D版 後編
  • 69 第三章 三剣士編第一話「出立/口論」
  • 70 第三章 三剣士編第二話「追跡/解除」
  • 71 第三章 三剣士編断章壱 「裏切り者アバタール」
  • 72 第三章 三剣士編第三話「会合」
  • 73 第三章 三剣士編第四話「心剣世界」
  • 74 第三章 三剣士編第五話「蒼炎の女神」
  • 75 夢旅人誕生日記念作品・祝おう、騒ごう、生き延びれのトークショー!? 前編
  • 76 夢旅人誕生日記念作品・祝おう、騒ごう、生き延びれのトークショー!? 後編
  • 77 第三章 三剣士編第六話「秩序の騎士アルビノーレ」
  • 78 第三章 三剣士編第七話「大地の半神アレスティア」
  • 79 第三章 三剣士編第八話「襲撃! KR」
  • 80 第三章 三剣士編第九話「ゼロボロス/シンメイ」
  • 81 第三章 三剣士編第十話「揃う切っ先」
  • 82 Another chapter6 Sora&Aqua side‐1「鏡の再会」
  • 83 Another chapter6 Sora&Aqua side‐2
  • 84 Another chapter6 Sora&Aqua side‐3
  • 85 Another chapter6 Sora&Aqua side‐4
  • 86 Another chapter6 Sora&Aqua side‐5
  • 87 Another chapter6 Sora&Aqua side‐6
  • 88 Another chapter6 Sora&Aqua side‐7
  • 89 Another chapter6 Sora&Aqua side‐8
  • 90 Another chapter6 Sora&Aqua side‐9
  • 91 Fragment6‐1「鍵が奏でる戦い」
  • 92 Fragment6-2
  • 93 第四章 三剣士編第一話「僅かな一幕 その1」
  • 94 第四章 三剣士編第二話「焦り」
  • 95 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(前編)
  • 96 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(中編)
  • 97 リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(後編)
  • 98 第四章 三剣士編第三話「集い地」
  • 99 第四章 三剣士編第四話「箱舟モノマキア」
  • 100 第四章 三剣士編第五話「協議」
  • 101 第四章 三剣士編断章「黄泉の細道」
  • 102 Another chapter7 Terra&Aqua side‐1「夕日が照らす陰と陽」
  • 103 Another chapter7 Terra&Aqua side‐2
  • 104 Another chapter7 Terra&Aqua side‐3
  • 105 Another chapter7 Terra&Aqua side‐4
  • 106 Another chapter7 Terra&Aqua side‐5
  • 107 Another chapter7 Terra&Aqua side‐6
  • 108 Another chapter7 Terra&Aqua side‐7
  • 109 Another chapter7 Terra&Aqua side‐8
  • 110 Another chapter7 Terra&Aqua side‐9
  • 111 Fragment7‐1「記憶と思いの力」
  • 112 Fragment7‐2
  • 113 Fragment7‐3
  • 114 Fragment7‐4
  • 115 第五章 三剣士編第一話「前夜」
  • 116 第五章 三剣士編第二話「たどり着いた世界の光景」
  • 117 第五章 三剣士編第三話「開戦」
  • 118 第五章 三剣士編第四話「先魁」
  • 119 第五章 三剣士編第五話「光に宿る影」
  • 120 第五章 三剣士編第六話「無浄輪無廻」
  • 121 第五章 三剣士編第七話「二人の最果て」
  • 122 第五章 三剣士編第八話「第四島攻略前編」
  • 123 第五章 三剣士編第九話「第四島攻略後編」
  • 124 第五章 三剣士編第十話「第二島攻略前編」
  • 125 第五章 三剣士編第十一話「第二島攻略後編」
  • 126 第五章 三剣士編第七話「幕間1」
  • 127 第五章 三剣士編第十二話「第五島攻略前編」
  • 128 第五章 三剣士編第十三話「第五島攻略後編」
  • 129 第五章 三剣士編第十四話「第三島攻略序」
  • 130 第五章 三剣士編第十五話「第三島攻略破」
  • 131 第五章 三剣士編第十六話「第三島攻略急の壱」
  • 132 第五章 三剣士編第十七話「第三島攻略急の弐」
  • 133 第五章 三剣士編第十八話「第一島へ」
  • 134 Another chapter8 Sora side‐1「儚き海の哀歌」
  • 135 Another chapter8 Sora side‐2
  • 136 Another chapter8 Sora side‐3
  • 137 Another chapter8 Sora side‐4
  • 138 Another chapter8 Sora side‐5
  • 139 Another chapter8 Sora side‐6
  • 140 Another chapter8 Sora side‐7
  • 141 Another chapter8 Sora side‐8
  • 142 Another chapter8 Sora side‐9
  • 143 Another chapter8 Sora side‐10
  • 144 Another chapter8 Sora side‐11
  • 145 Another chapter8 Sora side‐12
  • 146 Another chapter8 Sora side‐13
  • 147 Another chapter8 Sora side‐14(あとがき追記しました)
  • 148 Fragment8‐1「天使のレクイエム」
  • 149 Fragment8‐2
  • 150 第六章 三剣士編第一話「沸き立つ心」
  • 151 第六章 三剣士編第二話「魂の慟哭」
  • 152 第六章 三剣士編第三話「時と空の防陣」
  • 153 第六章 三剣士編第四話「記憶の再編」
  • 154 第六章 三剣士編第五話「魔K刀リンナ」
  • 155 第六章 三剣士編第六話「煌く炎」
  • 156 第六章 三剣士編第七話「戦闘 アバタール」
  • 157 第六章 三剣士編第八話「戦いの果て」
  • 158 第六章 三剣士編第九話「真実へ」
  • 159 第六章 三剣士編第十話「神理と代行体」
  • 160 第六章 三剣士編第十一話「ユニテ・イリアドゥス」
  • 161 第六章 三剣士編第十二話「共有」
  • 162 第六章 三剣士編第十三話「蒼と茜」
  • 163 第六章 三剣士編第十四話「運命の軌」
  • 164 Another chapter9 Terra side‐1 「交差せし歯車」
  • 165 Another chapter9 Terra side‐2
  • 166 Another chapter9 Terra side‐3
  • 167 Another chapter9 Terra side‐4
  • 168 Another chapter9 Terra side‐5
  • 169 Another chapter9 Terra side‐6
  • 170 Fragment9「始まりを紡ぎし者達」
  • 171 Another chapter10 Aqua side‐1「黄昏に眠りし歪んだ人形」
  • 172 Another chapter10 Aqua side‐2
  • 173 Another chapter10 Aqua side‐3
  • 174 Another chapter10 Aqua side‐4
  • 175 Fragment10-1「真(まこと)に隠された偽り」
  • 176 Fragment10-2
  • 177 Fragment10-3
  • 178 Fragment10-4(あとがき追記しました)
  • 179 第七章 罪業編第一話「深き混沌の過去」
  • 180 第七章 罪業編第二話「χブレード」
  • 181 第七章 罪業編第三話「開闢の英雄」
  • 182 第七章 罪業編第四話「白と黒」
  • 183 第七章 罪業編第五話「いざや進め」
  • 184 第七章 三剣士編第一話「結びつく絆 前編」
  • 185 第七章 三剣士編第二話「結びつく絆 後編/神理とは」
  • 186 第七章 三剣士編第三話「一時の暇」
  • 187 Another the last chapter‐1 「絶望へのカウントダウン」
  • 188 Another the last chapter‐2
  • 189 Another the last chapter‐3
  • 190 Another the last chapter‐4
  • 191 Another the last chapter‐5
  • 192 Another the last chapter‐6
  • 193 Another the last chapter‐7
  • 194 Another the last chapter‐8
  • 195 Another the last chapter‐9
  • 196 Another the last chapter‐10
  • 197 Another the last chapter‐11
  • 198 Another the last chapter‐12
  • 199 Another the last chapter‐13
  • 200 Another the last chapter‐14
  • 201 Another the last chapter‐15
  • 202 Another the last chapter‐16
  • 203 Another the last chapter‐17
  • 204 Another the last chapter‐18
  • 205 Another the last chapter‐19
  • 206 Another the last chapter‐20
  • 207 Another the last chapter‐21
  • 208 Another the last chapter‐22
  • 209 Another the last chapter‐23
  • 210 Another the last chapter‐24
  • 211 Another the last chapter‐25
  • 212 Another the last chapter‐26
  • 213 Another the last chapter‐27 (あとがき追記しました)
  • Another chapter6 Sora&Aqua side‐7

     その事にリクが気づいた時には、レプリカの方は鞘で、自分は細身の剣でそれぞれの武器を長い銀髪の青年が歯を食いしばりながら受け止めていた。

    「えっ…!?」

    「っ…!?」

     この第三者の介入に、リクもレプリカも目を見開く。
     その隙に、銀髪の青年―――ウィドが防御したまま身体を捻らせた。

    「――『風破』ァ!!」

     剣と鞘を互いの刃で擦りながら、風の壁を作って軽く弾き飛ばす。
     その直後、風の壁は爆発するが二人を傷付ける事無く対極に大きく吹き飛ばした。

    「くっ…誰だっ!?」

     突然現れて邪魔をした人物に、リクは受け身を取ると怒鳴りつける。
     だが、ウィドは無視してレプリカを向くなり驚くべき言葉を述べた。

    「ルキル、止めなさいっ!!!」

    「えっ…!?」

     まるで親が子を叱るような態度を見せるウィドに、リクの動きが止まる。
     そして、レプリカ―――ルキルに変化が現れる。

    「せ、んせ…」

     口から放たれた小さな呟きがリクの耳に届き、瞳も僅かだが元の色に戻る。
     しかし、それも長続きせずに頭を抑え込みその場に座り込んだ。

    「がぁ…!?」

     まるで何かを堪える様に抵抗するルキルに、ウィドは息を飲んだ。

    「ルキルっ!!?」

    「ウィド、駄目だっ!!」

     駆け寄ろうとしたウィドに、ゼロボロスが駆け付けて腕を掴んだ。
     それでも、ウィドは頭を抑え込むルキルに近づこうとゼロボロスの腕を振り払おうとする。

    「どうしたんですか、ルキルっ!!?」

    「落ち着いて!! 彼は操られてるっ!!」

     ゼロボロスの言葉に、ウィドだけでなく他の人達も注目した。

    「操られてる…っ!? 一体、誰に!?」

    「さすがに、そこまでは…!!」

    「操る…? もしかしてっ!!」

     ウィドの問いに、ゼロボロスは悔しそうに顔を俯かせる。
     だが、何かに気づいたのかソラは戦っていたリリスを睨んだ。

    「おい、リリス!! ハデスはどこだ!?」

    「人間ごときが…私を呼び捨てにするなぁ!!! 『アクエリアスフィア』!!」

    「のわあぁ!?」

     リリスが睨み返すなり手を翳して巨大な水球を出現させてソラに放つが、攻撃が大振りだったのか転がるようにして回避出来た。
     それでも何処か興奮するリリスに、クォーツは溜息を吐いて手を振るう。
     すると、クォーツの周りに球体上の青い石が三つ現れた。

    「リリス、怒りは禁物だ。『トライ・ブルーメノウ』」

     クォーツがさらに手を振ると、リリスの周りに三角になるようにして上空に浮かぶ。
     すると、中央にいる青い光がリリスを包み、怒りが収まったように表情が緩む。
     その一部始終を見ながら、ソラは上空に顔を向けた。

    「だったら…――出てこないって事は、俺達と戦うのが怖いんだなー! やーい、神様のクセに弱っちいのー!」

    「何だと、このガキィ!!!」

     このソラの挑発に、黒い煙と共に怒りで全身を真っ赤にしたハデスが現れた。

    「やっぱりいたな、ハデス!!」

     ハデスの姿を見て、すぐさまソラがキーブレードを構える。
     そんな中、ウィドがハデスの手に注目する。
     ルキルを模った、小さな人形に。

    「あれは…?」

    「あれだ!! ウィド、あの人形を取り返せば!!」

    「だったら、話は早い!!」

     ゼロボロスの助言に、ウィドは剣を収めて姿を消す。
     一瞬で相手の後ろに回り込むスピードを用いて一撃を放つ技、『一閃』を放とうとする。
     だが、回り込む途中でウィドに銀色の何かが激突して吹き飛ばされた。

    「つぅ!?」

    「あのノーバディ、まだ居たの!?」

     不意打ちの攻撃でウィドが倒れこむ中、リリスと戦っていたオパールが驚きの声を上げる。
     梟型のノーバディは空を舞いながら、奪い取ったのかウィドの剣を足に持っている。

    「よくやった、“スパイ”それをこちらに」

    「させるかぁ!!」

     スパイと呼んだノーバディに手を伸ばすクォーツに、リクが手に闇を凝縮する。
     それを見たクォーツは、再び手を広げて今度は灰色の鉱石に光る成分が入った石を四つ出現させた。

    「『テトラ・ラブラドライト』」

     すると、クォーツだけでなくノーバディにも光が纏う。
     構わずリクは『ダークオーラ』をノーバディにぶつけるが、まるで掻き消すように放った魔法が消え去った。

    「なに!?」

     攻撃が消えた事に驚くリクに、クォーツが笑いながら近づくノーバディに手を伸ばした。

    「させない!! 雷よ!! 『サンダガ』!!」

     だが、アクアがキーブレードを掲げて広範囲で雷を落とす。
     すると、意外にもクォーツとノーバディにダメージを与える事が出来た。

    「くっ!?」

    「邪魔するな、貴様ら!!」

    「それはこっちのセリフよっ!!」

     リリスがアクアに向かおうとした瞬間、オパールが赤い石を投げつける。
     同時に、リリスの周りに灼熱の炎が現れて呑み込んだ。

    「きゃああああ!?」

    「あたしが何もせずにいると思った? しばらくは『バーニングケージ』の中にいなさい」

     炎の中に閉じ込められるリリスにオパールが得意げに笑っていると、ゼロボロスが羽を広げた。

    「その結界…闇の攻撃を防御出来ても――」

     翼を羽ばたかせて飛び上がると、ウィドの剣を持つノーバディに一気に近づく。

    「普通の攻撃は防御出来まい!! 『爆牙刹拳』!!」

     即座に拳をノーバディにぶつけ、思いっきり上空へと突き飛ばす。
     あまりの威力に剣を手放しただけでなく、一撃でノーバディは消えてしまう。
     さっきまでの優勢な状況が逆転されつつある光景に、ハデスは歯軋りを起こした。

    「あいつら、何をやってるんだ!? もういい、こうなったら俺様が――!!」

    「凍れ!! 『ブリザガ』!!」

    「ぬぉ!?」

     行動をしようとしたハデスに向かって、ソラは氷の結晶を飛ばした。
     慌ててハデスが紙一重で避け、攻撃したソラに目を向ける。

    「隙あり!!」

    「げぶっ!?」

     だが、その行動を読んでいたかのようにヴェンが素早くキーブレードで突くようにハデスに突進する。
     『スライドダッシュ』で攻撃すると共に、ヴァンはハデスの手放した人形をも奪い取った。

    「ヴェン、ナイス!!」

     ソラが嬉しそうにガッツポーズを作ると、ヴェンもガッツポーズを返す。
     その間に、ゼロボロスは空中で剣を取ってウィドに投げた。

    「ウィド!!」

    「すみません、ゼロボロス!!」

     ゼロボロスが投げた剣をウィドは受け取り、すぐに鞘から抜刀する。
     偽のテラは消えた。リリスは動けない。操っているルキルを戻す人形はこっちにある。戦いがこちらに好転したのを誰もが感じた。



     ―――その時、激しい水柱がリリスを中心に幾つも立った。



     全員が振り返ると、あの炎を消したのかリリスがずぶ濡れで顔を俯かせ震えながら立っている。
     そんな彼女の周りには、不穏なオーラが漂っているのが目に見えて分かる。

    「――貴様ら…本気で我を怒らせたなぁぁぁ!!!??」

     この怒鳴り声と共に、何とコロシアムだと言うのに全員の足元を濡らすように水が沸き立つ。
     しかも、それはだんだんと嵩が高くなってもう膝から腰辺りにまで増えていく。

    「な、何だよこれ!?」

    「おおおおおい!!? 俺は水が苦手なんだぞ!? そこを――!!!」

    「黙っていろぉ!!! もう許しはしない…全員纏めて溺れてしまえぇぇぇーーーーーーーっ!!!!!」

     味方であるはずのハデスの声にも耳を貸さず、リリスは手を振り上げる。
     すると、コロシアムの水が一気に観客席の半分をも埋め尽くしてうねりを上げ、やがて渦を巻きだした。

    「『テトラ・アクアマリン』っ!?」

     いち早くクォーツは水色の石を四つ取り出し、ハデスを無視して自身を囲むように結界を張る。
     それとほぼ同時に、水は大渦潮を作り出してソラ達を呑み込んだ。

    「う、うわああああああああっ!!?」

    「「きゃあああああああああああああ!?」」

    「オパール!?」

    「ヴェン!?」

     たまたま柱の近くにいたリクとソラはしがみ付くと、流されるオパールとヴェンの手を握る。
     上空にいたゼロボロスも、うねりを上げる水で身動きの出来ないアクアに近づいて腕を掴む。
     だが、あまりの激流の強さにそれ以上上に飛べず完全に救出する事が出来ない。

    「アクア!? 大丈夫!?」

    「え、ええ…何とか…!!」

     アクアが苦しそうに頷くのを見て、ゼロボロスはどうにか渦から出そうとする。
     だが、激流に流されないようにこうして掴んでいるのが精一杯だ。
     こうしてリリスの作った激流の中に捕らわれたソラ達を、カイリは観客席の一番高い場所から見ていた。

    「ソラ!! リク!!」

     柱にしがみ付きながら他の人の手を繋いで助けている二人にカイリが近寄ろうとする。
     だが、共にいたフィルが前に出てカイリを止めた。

    「駄目だ、お譲ちゃん!! 今行ったら巻き込まれるぞ!!」

    「でも、でもっ!?」

     目の前で苦しんでいる親友に居てもたってもいられないカイリは、必死でフィルをどかそうとする。
     そんな中、アクアはゼロボロスの手を握りながらある事に気づいた。

    「ウィド、は…?」

    「そう言えば、いない!?」

     アクアの言葉に、ゼロボロスは辺りを見回す。 
     ソラと一緒に手を繋いでいるヴェン、リクと共にいるオパールを見て視線を戻していると、手をバタつかせて溺れているウィドを見つけた。

    「ウィド!?」

    「あの人…もしかして、泳げないんじゃ…!?」

     アクアもウィドを見つけ、思った事を呟く。
     その間にも、ウィドは必死で手をバタつかせている。
     しかし、そんな事で助かる筈もなくやがて渦の作る波に呑まれてしまった。

    「ウィド…!? ウィドー!!」

     ゼロボロスはもう片方の手を伸ばすが、ウィドの姿は完全に激流の中へと沈んでいった…。



     辺り一面、何も見えない暗闇。
     そんな場所で、自分が浮かんでいる。

    (なつか、しい…)

     心に湧き上がる一つの感情に、思わず浸ってしまう。

    (まえにも、こうしてた…きがする…?)

     不意に過る疑問に、今ある記憶を思い出す。
     一つ一つ過去を遡って調べていると、ある少女の記憶が脳裏を駆けた。

    (ナミネ…そうだ、ナミネ…)

     好きだった金髪の少女を思い出し、思わず笑みが零れる。
     同時に、心にザワリとした黒い感情が沸々と湧き上がってくる。
     その感情と一緒に、何故かソラとリクの姿が浮かび上がった。

    (おれ…なんで、ふたりがにくいんだろう…?)

     湧き上がる感情に疑問を持ちつつも、答えを導こうとする。
     殆ど消えたナミネに作られた記憶。残っているのは城での記憶とナミネとの約束。
     そう。自分はレプリカだ。ソラみたいに大事だと思ったナミネを救えずに悲しませるしか出来ない。誰にもなれず、リクの影としか存在出来ない。
     ここまで考え、ようやく答えを導き出した。

    (ああ、そっか…おれには、だれかにつながるきずながないんだ……だから――)



     ―――ルキル…。



    (せん、せい…?)

     心に届いた声に、思考が止まる。
     そして、一つの記憶が甦る。

     『あなたの名前を考えてみたんです。と言っても、一文字加えて並び変えただけですが…』

     そう言って、あの人は苦笑しながら自分を見ていた。
     それでも、純粋に嬉しかった。自分の為に考えて初めて与えてくれた物だから。
     ルキル…――俺であって、リクであって、誰でもない自分だけの名前。

    (ちがう…きずなは、あるんだ……だれでもない、おれの…おれたちの、きずな…)

     いつの間にか心に湧き上がる黒い感情が消え、暗闇が光って色を取り戻す。
     目の前に広がるのは青。そして不自然な白。
     まだ意識が朦朧とする中、水の中で手を伸ばし白い服の袖を腕ごと掴む。
     その時自分達の右手に嵌めてる指輪を光っているのに気づく。まるで今こうして繋がっているようだと思いながら、笑みを浮かべて心の中で呟く。
     自分なりの絆であり信頼の形を現した彼の名を。

    (そうだよな…“先生”)

    12/01/10 12:10 NANA&夢旅人   

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