Another chapter1 Sora side‐4
次々に繰り出される少年の素早い攻撃に、さすがのリリスも軽く舌打ちする。
どうにか隙を見て少年と距離を取ると、横に薙ぎ払うように槍を振った。
「喰らえっ!!」
「しまっ――」
「『ラグナロク』!!」
不意を突かれ、少年は思わず動きを止めて目を見開く。
しかし、横から聞こえた声と共にリリスの後ろから幾つもの螺旋する光弾が襲い掛かった。
「きゃあ!!」
攻撃の途中だったためか、リリスは防御も出来ずに光弾に喰らいつかれてしまう。
すぐに少年は攻撃が飛んできた方を見ると、『ラグナロク』を出し終えたソラが砂浜に着地していた。
「君は…」
ソラを見て、少年の中に妙な懐かしさが溢れてくる。
それはソラも同じなのか、少年を見て不思議そうに首を傾げる。
しかし、今やるべき事を思い出したのかソラが笑顔を作って叫んだ。
「俺はソラ!! お前はっ!?」
「俺は、ヴェントゥス!! ヴェンって呼んでくれ!!」
「そっか!…じゃあ、ヴェン!!」
「ああ!! 一緒にやるぞ!!」
二人は同時にキーブレードを構えると、体勢を立て直したリリスを睨みつける。
そんな二人に、リリスはギリッと歯を食い縛った。
「舐めたマネをっ!!」
怒りを露わにして、二人に向かって槍を振るう。
その攻撃を、二人はかわしつつリリスに攻撃を仕掛ける。
「燃えろっ!!」
「そんなの――」
ソラが至近距離で巨大な炎を周りに出して攻撃するが、リリスが後ろに避ける。
「喰らえっ!! 『エアリルブレイク』!!」
だが、そこを目掛けてヴェンは軽く飛び上がって思いっきりキーブレードを振り下ろす。
思わず槍で防御して受け止めると、ザッと砂を踏み込む音がした。
「そこだっ!! 『ストライグレイド』!!」
「なっ…あぐっ!?」
ソラの投げたキーブレードが回転しながら防御しているリリスの横に当たり、思わず怯んでしまう。
「まだだっ!! 『ホーリーライズ』!!」
「俺もだ!! 『ラストアルカナム』!!」
「きゃああ!?」
ヴェンから放たれる光とソラの怒涛の攻撃に、リリスは耐え切れずに悲鳴を上げる。
まるで昔から一緒だったと思えるほど二人の息はピッタリで、戦いを見ていたリクとカイリでさえも口を半開きにさせている。
「うぐぅ…!?」
二人の流れるコンビネーションに、とうとうリリスが膝を付く。
このチャンスに、すぐにソラが声をかけた。
「ヴェン、一緒に!!」
「行くぞ、ソラ!!」
そう言って二人は地を蹴って飛び上がると、キーブレードの先端に光を集めた。
「これで――」
「――トドメだぁ!!!」
光を最大限にまで溜めると、二人は同時に光弾を放った。
二人の放つ『ラグナロク』に、リリスは成す術もなく巻き込まれる。
あまりの多さに、着弾すると同時に辺りに砂埃が舞う。この様子を見ながら、ヴェンは警戒を解かずにリリスのいる場所を見た。
「やったか!?」
ソラも声を上げつつ警戒を解かずに見ていると、砂埃が晴れた。
そこには、傷だらけのリリスがいた。苦しそうにうめいているのを見ると、もう戦えないようだ。
そんなリリスを、いつの間にか白い翼を持った一人の青年が両手で抱えていた。顔は白い布で隠しているのでよく分からない。
「――探しましたよ。まったく、無茶をしないで欲しいものです」
「だって…あなたが教えたんでしょ…?」
「聞きたがっていたから、答えただけです。だけど、これからは感情に任せて行動しないでくださいよ?」
青年が首を傾げながら言うと、リリスは複雑そうに顔を俯かせる。
「さあ、目覚めたばかりでまだ疲れてるでしょう。ゆっくりおやすみなさい……『スリプル』」
そう言って眠りの魔法をかけると、リリスはゆっくりと目を閉じた。
そのままリリスが寝息を立てるのを聞くと、青年はゆっくりとソラ達を見る。
布からはみ出した黒の髪に金色の瞳の青年に、ソラはキーブレードを突きつけた。
「お前、何者だ!?」
「勇ましいものですね――…何処に行っても変わらない」
「何を訳分からない事言ってんだよ!?」
何処か謎めいた青年の言葉に、ヴェンも睨みながら武器を構える。
そうして敵意をむき出しにする二人に、青年はフッと笑った。
「私達は、いずれまた逢いますよ。その時まで、精々生き延びて置きなさい」
「逃がさないぞっ!!!」
撤退しようとする青年に、ソラとヴェンが同時に駆け込んだ。
「『プロテス』」
この二人を見て、青年は即座に魔法を唱える。
魔法の障壁が青年を包みこむが、二人はお構いなしにキーブレードを振り下ろす。
だが、二人の攻撃は障壁にぶつかり青年には届かなかった。
「「え…?」」
「『エアロ』」
二人が驚く暇もなく、青年は風の魔法を唱える。
初級の魔法のはずなのに、まるで台風のような暴風が二人を襲う。
まるで『エアロガ』並みの威力に、二人は思いっきり吹き飛ばされた。
「「うわぁ!!?」」
「「ソラ!?」」
砂浜に叩きつけられた二人に、どうにか動けるようになったリクとカイリが駆け寄る。
その隙に青年は背中にある白の翼を広げると、ヴェンに笑いかけた。
「ヴェン、と言ってましたね。……一つ、忠告してあげましょう」
そう言うと、カイリに助け起こされるヴェンに驚くべき事を伝えた。
「あなたは今、この時代の住民ではなく過去の世界の住民となった。そんな人がこの未来の世界に長く居座れば……そう遠くない未来、秩序が壊れる。必ずね」
「何…っ!?」
信じられない言葉にヴェンの表情が驚きに満ちる。
その間にも、青年は全身に白い光を纏わせてその場から消え去った。
「消えた…?」
『闇の回廊』を使わずに消え去った青年に、リクは眉を潜める。
ソラとカイリも青年の去った場所を見ていると、砂浜に座ったままヴェンが呟いた。
「ここが、未来の世界…?」
「ヴェン?」
ソラが不安そうに声をかけると、急にヴェンは立ち上がって歩き出す。
そして持っているキーブレードの先端を前に向けるが、すぐに下ろした。
「…どうしてだ? こうすれば、回廊が出てくるのに…」
「回廊?」
ヴェンの言葉に、リクが首を傾げる。
リクの問い掛けが聞こえていないのか、今度は肩に付いている飾りを掌で叩く。
すると突然ヴェンの身体が光り出し、やがて青と黄色の鎧を纏って現れた。
「うわぁ…!!」
「すごい…」
ヴェンの鎧姿に、ソラとカイリが驚きの声を上げる。
さらにヴェンはキーブレードを上空に投げて、ボード型の乗り物にする。
それに飛び乗ると、動かす事無く静止させた状態で安堵の息を吐いた。
「鎧とライダーは出来るんだな…」
『異空の回廊』は使えないものの、すべてが使えない訳じゃないと分かり肩の荷が少しだけ降りる。
すぐに乗り物をキーブレードに戻し鎧も外して元の姿に戻っていると、ソラが目を輝かせながらヴェンに近づいた。
「なあ、今のどうやるんだ!?」
「え? ソラは使えないのか?」
ヴェンが不思議そうに首を傾げていると、リクが訝しげな表情を浮かべた。
「お前、一体――」
「あー、ごめん。ちょっといい?」
突然背後からかけられた女性の声に、すぐに四人は振り向く。
そこには、腰まである長いブロンドの髪に緑の目をした女性が立っていた。
「人を探してるの。『ソラ』って言う少年らしいけど、知らない?」
「お前…あいつらの仲間か!?」
「え? ちょ!?」
女性が声を上げると同時に、リクは警戒心を剥き出しにしてキーブレードで斬りかかる。
突然襲い掛かったリクの攻撃に、女性は驚きながらも即座に避けて反論を上げた。
「いきなり何をするのよっ!?」
「リク、落ち着いて!! さっきの人とは違うよ!!」
「だけど!!」
カイリが説得するも、リクは警戒を解かない。
しかし、さっき襲われたばかりの状態でまた見知らぬ人が現れた上にソラの事を聞くのだ。リクが警戒するのも無理は無いだろう。
すぐにでも戦いに持って行きそうなリクを他所に、ソラは一歩前に出て女性に問い掛けた。
「俺がソラだけど、何なんだよ?」
若干訝しげに聞くと、女性は真剣な目で腰に手を当てて話し出した。
「あたしはオパール。『レイディアントガーデン再建委員会』のメンバーなの」
「え!? じゃあ、レオン達の知り合いなのか!?」
「そっ。で、トロンがあんたを呼んでるの。重要な話があるとかで――…悪いけど、あたしと一緒に来てくれない?」
「トロンが? 分かった!」
レオン達の知り合いと分かり、ソラは力強く頷く。
そんなソラを見て、リクは目を鋭くして怒鳴り出した。
「おい、ソラ!! こんな怪しい奴について行くな!!」
「でも――」
ソラが反論しようとした直後、オパールが無言でリクに近づいた。
オパールの目には怒りが宿っており、リクもそれを見返し互いに睨みつける。
次の瞬間、オパールは素早い動作でリクの胸倉を掴むとギリギリと首を締め付け始めた。
「ちょっと…――さっきから聞いてれば随分な言い方じゃないの…?」
「ぐ、ぐるじ…!!?」
「あんたのその捻じ曲がった根性、荒療治で治してやってもいいのよっ!!? ええっ!!?」
どこぞのヤンキーみたいに言うなり、リクの胸倉を掴む力が強くなったのが更に音が酷くなる。
この二人の様子をオロオロと見るソラとカイリの横では、ヴェンが顔を俯かせていた。
「レイディアントガーデン…」
つい先日行った世界に、ヴェンは黙って考える。
あの人の言葉を信じた訳じゃない。だけど、そこに行けばここが本当に未来の世界か分かるかもしれない…。
そうして自分の目的を決めると、未だにリクの胸倉を掴んでいるオパールに声をかけた。
「あのさ、俺も一緒に行っていい?」
ヴェンの言葉に、オパールは怒りを解いてリクを掴んでいた胸倉を離す。
そのまま砂浜に倒れ込んでゴホゴホと咳き込んで足元で倒れるリクを無視し、オパールは顔に指を当てて考えた。
「ん〜……別にいいわよ。名前は?」
「俺はヴェントゥス。ヴェンって呼んでくれ」
「分かった。よろしくね、ヴェン」
「ねえ、私もいい?」
続けてカイリも名乗りを上げると、オパールは嬉しそうに頷いた。
「いいわよ。人数は多い方が楽しいし…――心配なら、あんたも来る?」
「あたり…まえだ…」
冷めた目で見るオパールに、リクは息を絶え絶えにして起き上がる。
そんな中、ソラは一緒に同行を許可されたカイリを不安そうに見た。
「カイリ、いいのか?」
「いいの! しばらくは、このまま三人でいたいから…」
ソラに顔を見せないように俯かせると、カイリはポツリと本音を呟く。
その言葉が聞こえたのか、思わずソラが笑みを浮かべているとオパールが声をかけた。
「じゃあ、グミシップに案内するわね。さっ、ついて来て!」
そう言うなりオパールは先に行くので、四人も後を追うように歩き出した。
―――まさか、これが自分達の世界だけでなく…――別世界をも揺るがす事件になるだなんて誰も予想していなかった…。
同じ頃―――草木や色鮮やかな花が生えた、のどかな世界。その世界に、一人の男がいた。
全体が少し跳ねた黒髪に黒の瞳。服装は黒のシャツと長ズボン、その上から膝元まである黒のトレンチコートを羽織っている。
青年は夕暮れとなった空を眺めながら、ポツリと呟いた。
「ここも、久々だな…」
そうして青年が懐かしそうに呟いていると、後ろから足音がした。
振り返ると、そこには一人の少女が手に花を持ち、こちらに向かって走っている。
だが、途中で何かに躓いて転んでしまい地面に倒れてしまった。
「ふみゅ!」
「ほら、大丈夫か?」
「はい…すみません」
青年が苦笑しながら手を伸ばして助け起こすと、少女は恥ずかしそうに顔を俯かせた。
少女はショートの金髪に青い瞳、服装は金の刺繍があちこちに縫ってある白いローブだ。
転んだ際に辺りに散乱してしまった摘んだ花を拾い終わると、少女は首を傾げて青年に聞いた。
「あの…ここに、何かあるんですか?」
「――待ってる、のかもな」
「え?」
その言葉に首を傾げていると、青年はククッと笑いながら再び夕暮れの空を見上げた。
「昔の話、聞かせてやろうか…――ここで、何が起こったのかな」
そうして、青年は語り出した。
長い間止まっている、これからの物語を…。
どうにか隙を見て少年と距離を取ると、横に薙ぎ払うように槍を振った。
「喰らえっ!!」
「しまっ――」
「『ラグナロク』!!」
不意を突かれ、少年は思わず動きを止めて目を見開く。
しかし、横から聞こえた声と共にリリスの後ろから幾つもの螺旋する光弾が襲い掛かった。
「きゃあ!!」
攻撃の途中だったためか、リリスは防御も出来ずに光弾に喰らいつかれてしまう。
すぐに少年は攻撃が飛んできた方を見ると、『ラグナロク』を出し終えたソラが砂浜に着地していた。
「君は…」
ソラを見て、少年の中に妙な懐かしさが溢れてくる。
それはソラも同じなのか、少年を見て不思議そうに首を傾げる。
しかし、今やるべき事を思い出したのかソラが笑顔を作って叫んだ。
「俺はソラ!! お前はっ!?」
「俺は、ヴェントゥス!! ヴェンって呼んでくれ!!」
「そっか!…じゃあ、ヴェン!!」
「ああ!! 一緒にやるぞ!!」
二人は同時にキーブレードを構えると、体勢を立て直したリリスを睨みつける。
そんな二人に、リリスはギリッと歯を食い縛った。
「舐めたマネをっ!!」
怒りを露わにして、二人に向かって槍を振るう。
その攻撃を、二人はかわしつつリリスに攻撃を仕掛ける。
「燃えろっ!!」
「そんなの――」
ソラが至近距離で巨大な炎を周りに出して攻撃するが、リリスが後ろに避ける。
「喰らえっ!! 『エアリルブレイク』!!」
だが、そこを目掛けてヴェンは軽く飛び上がって思いっきりキーブレードを振り下ろす。
思わず槍で防御して受け止めると、ザッと砂を踏み込む音がした。
「そこだっ!! 『ストライグレイド』!!」
「なっ…あぐっ!?」
ソラの投げたキーブレードが回転しながら防御しているリリスの横に当たり、思わず怯んでしまう。
「まだだっ!! 『ホーリーライズ』!!」
「俺もだ!! 『ラストアルカナム』!!」
「きゃああ!?」
ヴェンから放たれる光とソラの怒涛の攻撃に、リリスは耐え切れずに悲鳴を上げる。
まるで昔から一緒だったと思えるほど二人の息はピッタリで、戦いを見ていたリクとカイリでさえも口を半開きにさせている。
「うぐぅ…!?」
二人の流れるコンビネーションに、とうとうリリスが膝を付く。
このチャンスに、すぐにソラが声をかけた。
「ヴェン、一緒に!!」
「行くぞ、ソラ!!」
そう言って二人は地を蹴って飛び上がると、キーブレードの先端に光を集めた。
「これで――」
「――トドメだぁ!!!」
光を最大限にまで溜めると、二人は同時に光弾を放った。
二人の放つ『ラグナロク』に、リリスは成す術もなく巻き込まれる。
あまりの多さに、着弾すると同時に辺りに砂埃が舞う。この様子を見ながら、ヴェンは警戒を解かずにリリスのいる場所を見た。
「やったか!?」
ソラも声を上げつつ警戒を解かずに見ていると、砂埃が晴れた。
そこには、傷だらけのリリスがいた。苦しそうにうめいているのを見ると、もう戦えないようだ。
そんなリリスを、いつの間にか白い翼を持った一人の青年が両手で抱えていた。顔は白い布で隠しているのでよく分からない。
「――探しましたよ。まったく、無茶をしないで欲しいものです」
「だって…あなたが教えたんでしょ…?」
「聞きたがっていたから、答えただけです。だけど、これからは感情に任せて行動しないでくださいよ?」
青年が首を傾げながら言うと、リリスは複雑そうに顔を俯かせる。
「さあ、目覚めたばかりでまだ疲れてるでしょう。ゆっくりおやすみなさい……『スリプル』」
そう言って眠りの魔法をかけると、リリスはゆっくりと目を閉じた。
そのままリリスが寝息を立てるのを聞くと、青年はゆっくりとソラ達を見る。
布からはみ出した黒の髪に金色の瞳の青年に、ソラはキーブレードを突きつけた。
「お前、何者だ!?」
「勇ましいものですね――…何処に行っても変わらない」
「何を訳分からない事言ってんだよ!?」
何処か謎めいた青年の言葉に、ヴェンも睨みながら武器を構える。
そうして敵意をむき出しにする二人に、青年はフッと笑った。
「私達は、いずれまた逢いますよ。その時まで、精々生き延びて置きなさい」
「逃がさないぞっ!!!」
撤退しようとする青年に、ソラとヴェンが同時に駆け込んだ。
「『プロテス』」
この二人を見て、青年は即座に魔法を唱える。
魔法の障壁が青年を包みこむが、二人はお構いなしにキーブレードを振り下ろす。
だが、二人の攻撃は障壁にぶつかり青年には届かなかった。
「「え…?」」
「『エアロ』」
二人が驚く暇もなく、青年は風の魔法を唱える。
初級の魔法のはずなのに、まるで台風のような暴風が二人を襲う。
まるで『エアロガ』並みの威力に、二人は思いっきり吹き飛ばされた。
「「うわぁ!!?」」
「「ソラ!?」」
砂浜に叩きつけられた二人に、どうにか動けるようになったリクとカイリが駆け寄る。
その隙に青年は背中にある白の翼を広げると、ヴェンに笑いかけた。
「ヴェン、と言ってましたね。……一つ、忠告してあげましょう」
そう言うと、カイリに助け起こされるヴェンに驚くべき事を伝えた。
「あなたは今、この時代の住民ではなく過去の世界の住民となった。そんな人がこの未来の世界に長く居座れば……そう遠くない未来、秩序が壊れる。必ずね」
「何…っ!?」
信じられない言葉にヴェンの表情が驚きに満ちる。
その間にも、青年は全身に白い光を纏わせてその場から消え去った。
「消えた…?」
『闇の回廊』を使わずに消え去った青年に、リクは眉を潜める。
ソラとカイリも青年の去った場所を見ていると、砂浜に座ったままヴェンが呟いた。
「ここが、未来の世界…?」
「ヴェン?」
ソラが不安そうに声をかけると、急にヴェンは立ち上がって歩き出す。
そして持っているキーブレードの先端を前に向けるが、すぐに下ろした。
「…どうしてだ? こうすれば、回廊が出てくるのに…」
「回廊?」
ヴェンの言葉に、リクが首を傾げる。
リクの問い掛けが聞こえていないのか、今度は肩に付いている飾りを掌で叩く。
すると突然ヴェンの身体が光り出し、やがて青と黄色の鎧を纏って現れた。
「うわぁ…!!」
「すごい…」
ヴェンの鎧姿に、ソラとカイリが驚きの声を上げる。
さらにヴェンはキーブレードを上空に投げて、ボード型の乗り物にする。
それに飛び乗ると、動かす事無く静止させた状態で安堵の息を吐いた。
「鎧とライダーは出来るんだな…」
『異空の回廊』は使えないものの、すべてが使えない訳じゃないと分かり肩の荷が少しだけ降りる。
すぐに乗り物をキーブレードに戻し鎧も外して元の姿に戻っていると、ソラが目を輝かせながらヴェンに近づいた。
「なあ、今のどうやるんだ!?」
「え? ソラは使えないのか?」
ヴェンが不思議そうに首を傾げていると、リクが訝しげな表情を浮かべた。
「お前、一体――」
「あー、ごめん。ちょっといい?」
突然背後からかけられた女性の声に、すぐに四人は振り向く。
そこには、腰まである長いブロンドの髪に緑の目をした女性が立っていた。
「人を探してるの。『ソラ』って言う少年らしいけど、知らない?」
「お前…あいつらの仲間か!?」
「え? ちょ!?」
女性が声を上げると同時に、リクは警戒心を剥き出しにしてキーブレードで斬りかかる。
突然襲い掛かったリクの攻撃に、女性は驚きながらも即座に避けて反論を上げた。
「いきなり何をするのよっ!?」
「リク、落ち着いて!! さっきの人とは違うよ!!」
「だけど!!」
カイリが説得するも、リクは警戒を解かない。
しかし、さっき襲われたばかりの状態でまた見知らぬ人が現れた上にソラの事を聞くのだ。リクが警戒するのも無理は無いだろう。
すぐにでも戦いに持って行きそうなリクを他所に、ソラは一歩前に出て女性に問い掛けた。
「俺がソラだけど、何なんだよ?」
若干訝しげに聞くと、女性は真剣な目で腰に手を当てて話し出した。
「あたしはオパール。『レイディアントガーデン再建委員会』のメンバーなの」
「え!? じゃあ、レオン達の知り合いなのか!?」
「そっ。で、トロンがあんたを呼んでるの。重要な話があるとかで――…悪いけど、あたしと一緒に来てくれない?」
「トロンが? 分かった!」
レオン達の知り合いと分かり、ソラは力強く頷く。
そんなソラを見て、リクは目を鋭くして怒鳴り出した。
「おい、ソラ!! こんな怪しい奴について行くな!!」
「でも――」
ソラが反論しようとした直後、オパールが無言でリクに近づいた。
オパールの目には怒りが宿っており、リクもそれを見返し互いに睨みつける。
次の瞬間、オパールは素早い動作でリクの胸倉を掴むとギリギリと首を締め付け始めた。
「ちょっと…――さっきから聞いてれば随分な言い方じゃないの…?」
「ぐ、ぐるじ…!!?」
「あんたのその捻じ曲がった根性、荒療治で治してやってもいいのよっ!!? ええっ!!?」
どこぞのヤンキーみたいに言うなり、リクの胸倉を掴む力が強くなったのが更に音が酷くなる。
この二人の様子をオロオロと見るソラとカイリの横では、ヴェンが顔を俯かせていた。
「レイディアントガーデン…」
つい先日行った世界に、ヴェンは黙って考える。
あの人の言葉を信じた訳じゃない。だけど、そこに行けばここが本当に未来の世界か分かるかもしれない…。
そうして自分の目的を決めると、未だにリクの胸倉を掴んでいるオパールに声をかけた。
「あのさ、俺も一緒に行っていい?」
ヴェンの言葉に、オパールは怒りを解いてリクを掴んでいた胸倉を離す。
そのまま砂浜に倒れ込んでゴホゴホと咳き込んで足元で倒れるリクを無視し、オパールは顔に指を当てて考えた。
「ん〜……別にいいわよ。名前は?」
「俺はヴェントゥス。ヴェンって呼んでくれ」
「分かった。よろしくね、ヴェン」
「ねえ、私もいい?」
続けてカイリも名乗りを上げると、オパールは嬉しそうに頷いた。
「いいわよ。人数は多い方が楽しいし…――心配なら、あんたも来る?」
「あたり…まえだ…」
冷めた目で見るオパールに、リクは息を絶え絶えにして起き上がる。
そんな中、ソラは一緒に同行を許可されたカイリを不安そうに見た。
「カイリ、いいのか?」
「いいの! しばらくは、このまま三人でいたいから…」
ソラに顔を見せないように俯かせると、カイリはポツリと本音を呟く。
その言葉が聞こえたのか、思わずソラが笑みを浮かべているとオパールが声をかけた。
「じゃあ、グミシップに案内するわね。さっ、ついて来て!」
そう言うなりオパールは先に行くので、四人も後を追うように歩き出した。
―――まさか、これが自分達の世界だけでなく…――別世界をも揺るがす事件になるだなんて誰も予想していなかった…。
同じ頃―――草木や色鮮やかな花が生えた、のどかな世界。その世界に、一人の男がいた。
全体が少し跳ねた黒髪に黒の瞳。服装は黒のシャツと長ズボン、その上から膝元まである黒のトレンチコートを羽織っている。
青年は夕暮れとなった空を眺めながら、ポツリと呟いた。
「ここも、久々だな…」
そうして青年が懐かしそうに呟いていると、後ろから足音がした。
振り返ると、そこには一人の少女が手に花を持ち、こちらに向かって走っている。
だが、途中で何かに躓いて転んでしまい地面に倒れてしまった。
「ふみゅ!」
「ほら、大丈夫か?」
「はい…すみません」
青年が苦笑しながら手を伸ばして助け起こすと、少女は恥ずかしそうに顔を俯かせた。
少女はショートの金髪に青い瞳、服装は金の刺繍があちこちに縫ってある白いローブだ。
転んだ際に辺りに散乱してしまった摘んだ花を拾い終わると、少女は首を傾げて青年に聞いた。
「あの…ここに、何かあるんですか?」
「――待ってる、のかもな」
「え?」
その言葉に首を傾げていると、青年はククッと笑いながら再び夕暮れの空を見上げた。
「昔の話、聞かせてやろうか…――ここで、何が起こったのかな」
そうして、青年は語り出した。
長い間止まっている、これからの物語を…。
■作者メッセージ
以上で、第一章が終了です。初めて読む方の為に、ここで軽く話の説明を。
私の話は時間系列で言えば『コーデット』の時―――要は、王様達がジミニーメモを調べている時です。
その頃のソラ達に、過去から呼び寄せたテラ、ヴェン、アクアを仲間に。それでも数が足りないので私と夢さんのオリキャラを混ぜています。
尚、序説にあった【未来】は…――次の断章ででも書きます。
折角なので、軽いおまけを付けます。内容はギャグですが、見たい方はどうぞ。好評だったら、またこう言ったおまけを書こうと思ってますが…。
NGシーン・リリス戦敗北後
リリス「心配しないで……この『呪い』をかけおえてしばらくしたら、二人の所に連れて行ってあげるから」
そう言うと、倒れているリクの胸に闇を纏った手を翳す。
リク「あ、ぐ…がはぁ…!?」
ソラ「リク…!!」
苦しそうなリクに、ソラが手を伸ばした瞬間だ。
ヴェン「――うわああああああああああああああああああああっ!!!!!」
突然ヴェンが空から降って来る。
そんな彼の落ちる先には―――リクに手を翳しているリリスが。
リリス「え!? ちょ…ぐうぅ!?」
ヴェン「ごふぅ!?」
そうして互いに頭をぶつけ、ヴェンはそのまま勢いを付け砂浜で倒れるソラに向かって倒れこむ。
ソラ「げふおぉ!?」
ソラの腰の部分にヴェンが倒れこむ中―――リリスは闇を纏った手をリクの胸に“完全”に当てた。
リク「ぐあああああああああっ!!? ごおおおおおおっ!!?」
ソラ「こ…腰が…うおああああああっ…!!?」
ヴェン「あたまが、割れるぅぅぅ…!!?」
リリス「あがうぅぅぅ…!!?」
痛みに耐え切れずに砂浜を転がるリク。震えながら腰を押えるソラ。プルプルさせながら頭を押えるヴェンとリリス。
カイリ「あ、あわわ……一気に阿鼻叫喚になっちゃった…!?」
この光景に震え上がるカイリに、原因を作った張本人はと言うと…?
謎の少女(す、すまぬ…若干、送る位置を間違えてしもうた…)
私の話は時間系列で言えば『コーデット』の時―――要は、王様達がジミニーメモを調べている時です。
その頃のソラ達に、過去から呼び寄せたテラ、ヴェン、アクアを仲間に。それでも数が足りないので私と夢さんのオリキャラを混ぜています。
尚、序説にあった【未来】は…――次の断章ででも書きます。
折角なので、軽いおまけを付けます。内容はギャグですが、見たい方はどうぞ。好評だったら、またこう言ったおまけを書こうと思ってますが…。
NGシーン・リリス戦敗北後
リリス「心配しないで……この『呪い』をかけおえてしばらくしたら、二人の所に連れて行ってあげるから」
そう言うと、倒れているリクの胸に闇を纏った手を翳す。
リク「あ、ぐ…がはぁ…!?」
ソラ「リク…!!」
苦しそうなリクに、ソラが手を伸ばした瞬間だ。
ヴェン「――うわああああああああああああああああああああっ!!!!!」
突然ヴェンが空から降って来る。
そんな彼の落ちる先には―――リクに手を翳しているリリスが。
リリス「え!? ちょ…ぐうぅ!?」
ヴェン「ごふぅ!?」
そうして互いに頭をぶつけ、ヴェンはそのまま勢いを付け砂浜で倒れるソラに向かって倒れこむ。
ソラ「げふおぉ!?」
ソラの腰の部分にヴェンが倒れこむ中―――リリスは闇を纏った手をリクの胸に“完全”に当てた。
リク「ぐあああああああああっ!!? ごおおおおおおっ!!?」
ソラ「こ…腰が…うおああああああっ…!!?」
ヴェン「あたまが、割れるぅぅぅ…!!?」
リリス「あがうぅぅぅ…!!?」
痛みに耐え切れずに砂浜を転がるリク。震えながら腰を押えるソラ。プルプルさせながら頭を押えるヴェンとリリス。
カイリ「あ、あわわ……一気に阿鼻叫喚になっちゃった…!?」
この光景に震え上がるカイリに、原因を作った張本人はと言うと…?
謎の少女(す、すまぬ…若干、送る位置を間違えてしもうた…)