Another chapter1 Sora side‐3
先手必勝とばかりに、ソラはリリスに近付きキーブレードを振るう。
両手で持つ分力があるこの攻撃を、リリスは片手で持っている蒼い槍で防御して跳ね返す。
これにソラが軽く驚きつつよろめいていると、リリスが槍で突きを放つ。
すぐさま横に回避して避けるが、頬に鋭い痛みが走ったのをソラは感じた。
「はぁ!!」
その間に、リクが幾つもの闇の気弾―――『ダークオーラ』を攻撃を終えたリリスに放つ。
だが、リリスは澄ました顔で槍を横に振って攻撃を相殺する。
この様子に、攻撃をしたリクは笑った。
「今だ、ソラっ!!」
「そこだぁ!!」
リクの叫びに、すぐにソラが『ソニックレイヴ』で突進する。
すぐにリリスが避けようとするが、さらにリクも剣を持って突進する『ダークオーラ』を放つ。
高速にも匹敵する二人の攻撃だが、リリスは何処か落ち着いた様子で槍で受け流す。
「受けてみろぉ!!」 「終わりだぁ!!」
最後にソラが一閃すると同時に、リクが剣を突きたてて辺り一帯に衝撃波を起こす。
そうして二人が攻撃を終わらせると、リリスは多少ボロボロになっているがしっかりと立っていた。
「少しはやるのね――…ならば、一気に終わらせる」
そう呟くなり、スッと手を上げる。
何かが来ると直感で感じた二人は、すぐに走り出す。
「『マーメイドジュエル』」
すると、頭上から四つの透き通った青い水晶が現れる。
突然現れた海のような美しさを輝かせる水晶に、思わず二人が立ち止まってしまう。
直後、水晶が粉々に砕けて雨のように無数に二人に降り注いだ。
「「うわああああああああああっ!!?」」
「ソラ、リク!?」
痛々しい叫びを上げる二人に、思わずカイリが駆け寄る。
しかし、その前にリリスがカイリの前に出てきた。
「邪魔よっ!!」
「きゃあ!?」
思いっきり槍で吹き飛ばされ、砂浜を転がるカイリ。
彼女が倒れて動けないのを見て、リリスは横に目を向ける。
ソラとリクも倒れたまま動けないのを見て、軽く鼻で笑った。
「こうやって、さっさと終わらせれば良かった…」
そう呟くなり、リリスは槍を握って二人に近付いて行く。
「あら…?」
ソラの隣で倒れているリクを見て、何かに気付くように首を傾げる。
そうして少し考えると、ニッコリと満面の笑みを浮かべた。
「死で償わせようと思ったんだけど…――それよりも辛い経験を味わってからの方がよさそうね」
リクの傍でしゃがみ込むなり、リリスはそっと胸に手を当てる。
この行動に気付いたのか、リクは倒れたまま必死で歯を食い縛った。
「なに、を…!?」
「貴方はこの大事な世界を壊した。それ相当の罰を与えるの」
そう答えると、凍るような笑みをリクに向ける。
「心配しないで……この『呪い』を掛け終えてからしばらくして、二人と同じ所に連れて行ってあげるから」
すると、翳しているリリスの手に黒い靄が現れる。
その瞬間、リクの中でドス黒い何かが暴れるのを感じた。
痛みで動かない身体ではロクに抵抗も出来ず、ビクリと身体を痙攣させる。
「あ、ぐっ…がはぁ…!!!」
「リク…!?」
苦しそうに叫ぶリクに、ソラは歯噛みする。
もう少しで届きそうな距離にいる親友を、このまま何も出来ずに見るだけで終わるのか…。
そんな悔しさをバネにするように、痛みを堪えてどうにかリクに向かって手を伸ばそうとした。
「――うわああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
その時、空から少年の悲鳴が響き渡った。
思わずリリスが手を止めると同時に、空から何かが砂浜に落ちてきた。
「何?」
「いっててててて…――何処だよ、ここ…?」
リリスが振り返ると、茶色が混じった金髪の少年が尻餅をついて頭を擦っていた。
突然空から降ってきた少年に、ソラもリクはもちろん、カイリさえも倒れたままポカンと口を開く。
そんな中リリスはと言うと、冷静なのか目を鋭くしてすぐに魔法を唱えた。
「『ウォータ』!!」
「うわぁ!?」
少年の足元から水が溜まるので、すぐにその場から離れて攻撃を避ける。
そうして立ち上がった少年の顔に、カイリは首を傾げた。
「ロクサス…?」
そう。空から降ってきた少年の顔は、ソラのノーバディであるロクサスにそっくりなのだ。
まさか二人の危機を察してソラから離れたのか、とカイリが考えていると、少年がリリスを敵と認識したのか戦闘の構えをした。
「くそっ!!」
その声と共に、軽く手を振って手を光らせて武器を出現させた。
「キー、ブレード…?」
少年の手に現れた武器を見て、ソラは茫然と呟く。
その間にも少年はキーブレードを逆手に持って軽く回転させるとリリスに向かって走りこむ。
すぐにリリスに向かってキーブレードを振り下ろすと、それを槍で防御する。だが、少年は防御を崩そうと続けざまに素早い速さで攻撃を与えていく。
ソラが倒れたまま二人の戦いを見ていると、不意に身体の傷が癒える。見ると、リクが『キュアポーション』をかけてくれていた。
「リク…?」
「俺に、構うな…――それよりも、あいつを…」
「分かった…!!」
リクの意思を受け取り、ソラは傷が治った身体を立ち上がらせる。
そして、少年の援護をする為にキーブレードを握って駆け出した。
再び戦いの場へと向かったソラを見送るっていると、まだ苦痛で表情が歪んでいるカイリが近付いてリクを起き上がらせた。
「リク、本当に大丈夫…!?」
「どうにか、な…――まだ少し、動けないけど…」
何処か辛そうに答えると、リリスと戦っている少年を見た。
「それより…どうして、ロクサスが…?」