第一章 永遠剣士編第一話「永遠」
永遠城。
永遠剣士たち、それにかかわる仲間のみが住んでいる移動する城。異界の海を漂うように浮かぶそれは今、静かに制止していた。
永遠城地下操縦室。
一人、複数の操作盤をたたき打つようにしている蒼髪黒衣の少女。彼女はたった一人の人物を広大な世界の中から特定しようと奔走していた。
たった一人の人物―――永遠剣の開祖ジェミニは数日前に永遠城から忽然と姿を消した。ただ、姿を消したのではなく、彼の居た広間は『何者かと交戦した』後があった。
つまり、彼は姿を消したのではなく、つれ去られたか何かでもあったはず。だが、永遠城の存在を知っているものなんてまずいない。
何より、この城に侵入できるものなんて要る筈が無かった―――!
「っ」
次第に焦燥が瞳をぎらつかせ、打つ指の早さもまして行く。
調べても調べても答えはいつも「ノー」だった。
「―――アビス」
「!!」
ぽんと肩をたたかれ、ばっと振り返った少女―――アビス。
たたいたのは黒髪黒衣の軽装を纏った少年―――睦月。同じく永遠剣士の一人として、彼女の焦燥を良く理解していた。
「そんなに探ってもいないんだろ? それって、何処かの世界にいるけど『特定』されないようにされていると想うぜ」
「……それでも」
彼の意見に構わず、アビスはもう一度入力を始めようとしたが再び、今度は肩を強く掴まれた。
「!」
「いい加減にしろ。そこまでしたんだ、もう休もう」
「い……や」
「上に戻るぞ」
睦月は返事を無視して、彼女を無理矢理引っ張りながら上への階層へと移動する。
その間、何度も手を振り解こうとするアビスと引っ張りダコのようにあいながらもどうにか上に辿り着いた。
もう着いた頃にはアビスも息を荒くして疲れの色を見せた。それは引っ張りあったからではなく、長時間の捜索に疲労が今になって身体に圧し掛かった。
「っ……」
「ふぅ……ったく」
「―――どうやら、引っ張り出したようだね睦月」
瞬く内に姿を出した白服の衣装を着た少年。顔の右目部分が髑髏のような白骨の仮面をつけた彼はそう言って睦月に話しかけてきた。
「ああ、フェイトか……どうにかな」
話しかけられた睦月は一息つくかのように床に尻餅づくように座り込んだ。フェイトはそのまま、話を続ける。
「ジェミニを探すにはもうこの城と共に探さないといけないね」
少なくとも彼の命はこの城とリンクしているらしく、この白がかなり傷つけばジェミニも重傷を負う。
逆に言えば、この城が無事――即ち、ジェミニもどこかでまだ生きているという事だった。
「でもさ、何処にいるかも解らないんだろ?」
「……行動しなければ、道は無いよ。―――なら、『タルタロス』と言う闇に近い世界に行ってみるのはどうだろう」
「? そこに何かあるのか」
「あそこはさまざまな外の世界のヒトたちが互いに協力し合って創り上げた世界――つまり、いろんな世界の情報がある。
もっとも、ジェミニの様な特別な力もった者たちが行方知れずなんて知ってるかどうかは言って見なければ解らないね」
フェイトはあえて決定権を睦月に譲り、徒労かもしれない、と念を押しての一言だ。
「……アビス、いいよな?」
「…………任せるわ」
ゆっくりと立ち上がった彼女は力ない足取りで自室へと戻っていった。
それを見届けた睦月はフェイトに視線を向ける。
「――すまねえ」
「気にしないでいいよ」
微笑み返した彼はぽんと睦月の肩をたたいて、踵を返して戻ろうとした。
「既に場所の特定は終わらせてるよ。何せ、操作室は下だけじゃあないからさ」
「ああ。じゃあ」
「永遠城はわれわれに任せろ」
声と共に、黒ずんだ青色の和服を着た無愛想な女性は彼らの前に姿を見せた。
名前はアルス・パウリナ。嘗ての永遠剣士だった者の仲間で、この城に取り入れる為に、肉体を捨て、転生した存在の一人。
「アルス、アビスを頼んだ」
「無論だ」
そう言って、彼女は床に沈むように消え去り、睦月は振り向いてフェイトに指示する。
「今からお前の行っていた世界に向かう。支度を整えてから降り立つ―――いいな」
「勿論。カナリア、皐月にも言ってあるよ。……じゃ」
フェイトは背を向けたまま、気さくに答え、さっさと部屋を出て行った。
それを見送った睦月は歩き去ったアビスを密かに思いながらも自分も準備を整えに自室に戻って行った。
■作者メッセージ
バトンを受け取りました夢旅人です。が、此処暫くは地獄を喰らっていたので更新は疎らになりかねないです。
後、注意事項としていうなら永遠剣士編はかなりパロディみたいなところがあります。ブリーチとかブリーチとか!!
後、注意事項としていうなら永遠剣士編はかなりパロディみたいなところがあります。ブリーチとかブリーチとか!!