Another chapter8 Sora side‐8
リク達が休息を取っている頃。
上の階層の方では、ソラ達は下に続く坂を下っていた。
「大分奥まで来たな…」
「大丈夫かな、リク…」
未だに続く坂の下をヴェンが見ていると、後ろの方でソラが小さく呟く。
不安で一杯のソラに、隣にいたカイリは笑いかけた。
「リクなら大丈夫だよ。オパールも一緒にいるし」
「うん…」
カイリの言葉でも不安は拭えないのか、暗い表情のまま生返事を返す。
そんなソラに、ヴェンは何処か寂しそうに小さく笑った。
「心配、だよな。大切な友達と離れ離れになるの…」
「ヴェン?」
ソラが顔を上げると、ヴェンは表情を変えずに静かに語り始めた。
「話したよな…俺、仮面を被った奴にいろいろ言われて、テラを追いかけるように旅をしてたって」
テラがテラで無くなる―――ヴァニタスに言われた言葉に、テラを追いかける様にあの修行場の世界から旅立った。
いろんな世界を巡り、いろんな人と出会い、アンヴァースや闇を持った奴らと戦い…――そうして、ようやくテラと会えた。
だけど…。
「それで、あの世界でテラとアクアに再会したけど…二人とも、俺を置いて旅を続けたんだ。理由はあるんだろうけど、凄く不安で寂しかった…」
「ヴェン…」
何時か俺を救ってくれる。そう言って旅立ったテラは、今思えば何かを決意してた。そして、自分にあの地へ帰る様に言ったアクアも。
でも、その時は何だか自分一人置いていかれた気がして…とても寂しかったのを覚えている。
ポケットに仕舞ってあったアクアが作ってくれた『繋がりのお守り』を取り出すと、じっと見つめた。
「だから、ソラの気持ち分かるんだ。絆で繋がってるって分かっても…――やっぱり、一緒にいたいって思うよな」
この未来の世界ですれ違ってた絆は元には戻った。だけど、今もこうして離れ離れのまま。
再び心に芽生えた寂しさと一緒に離れているテラとアクアを思い、ヴェンはお守りを握りしめる。
そんなヴェンの様子に、カイリはお守りを握り手を包み込むように手を握った。
「大丈夫だよ、ヴェン。今はテラやアクアと離れているけど…でも、私達みたいに一人じゃないでしょ? その人達の事も、信じてあげよう」
「俺だってカイリやリクと離れ離れの時があったけど、こうして再会して一緒にいるからさ!! ヴェンだって、俺達みたいにテラやアクアとまた一緒になれるって!!」
そうして笑いかけてくれる二人に、ヴェンの表情に笑顔が戻った。
「ソラ、カイリ…ありがとう」
逆に励まされてしまったが、それでもヴェンは嬉しかった。
笑顔を浮かべながらお礼を述べると、ソラは満面の笑みを浮かべて前に出た。
「よーし! それじゃあ、早く三人を見つけるぞー!」
「もう、ソラ! こんな所で走ったら危ないでしょ!」
急いで坂を駆け下りるソラに、カイリは怒りつつも後を追いかける様に駆け下りる。
少しずつ遠ざかる二人を見て、ヴェンも笑いながら坂を駆け下りる。
そうして三人が坂を下り終えると、前方に三つに分かれた道があった。
「分かれ道だね…」
「何処に行けばいいんだろ?」
カイリとヴェンが分かれ道を見て迷っていると、突然ソラが手を叩いた。
「そうだ! ここは…」
そう言いながらキーブレードを取り出すと、何と道の真ん中に立てる。
何をしたいのか予想が付き、カイリは恐る恐る自信ありげのソラに聞いた。
「何、してるの?」
「ほら、どっちに行けばいいか迷った時はこうするだろ? で、倒れた方向に進めばいいって!」
「だからって…キーブレードをそんな風に使っていいのか?」
「でも、木の棒とかよりこっちの方が当ててくれそうだろ!? よーし、頼むぞキーブレード!」
ヴェンさえも呆れた目で見るが、ソラは気にせずにキーブレードを立てた状態で手を離した。
すると、キーブレードは支えを失い一回転して―――やがて左の方向に倒れた。
「こっちだな! おーい、リクー!! オパール!!」
ソラは落ちたキーブレードを拾うと、すぐさま大声で呼びながら左の道に進む。
この行動に、思わずカイリは不安げな目でヴェンを見た。
「ヴェン…これ、信じていいのかな?」
「どうだろう…?」
その頃―――オパールは軽く洞窟の下見を終え、二人のいる場所へと戻っている所だった。
(あたしばっかじゃ、フェアじゃないもんね)
そんな事を考え、泳ぎながら小さく笑う。
数日前に出会ったとは言え、リクといる時間は自分の方が上だ。
だから理由を付けて、眠っている間とは言えリリィを一緒に居させた。
(でも…本当に、良かったのかな?)
不意に、自分が取った行動に一種の不安が過る。
リリィの夢。そしてリクの言う感情。
繋がっている確証なんて、何処にもない…――それなのに、どうして不安が過るのだろう。
そうこう考えていると、二人がいる空洞の地点が見えて一気に上がった。
「――ハッ!」
水面に出ると、オパールは一気に息を吸い込む。
何度か大きく呼吸すると、二人がいる岸へと上がった。
「今戻った――…リリィ?」
軽く髪を絞っていると、何故かリリィが膝を抱えて座っている。
すぐに名前を呼ぶと、リリィはバッと焦ったように顔を上げてオパールを見た。
「あ、え? も、戻って来たんだね?」
「どうしたの? 何かあった?」
「う、ううん! 大丈夫、だから…!」
そう言うなり、ゆっくりと顔を俯かせる。
何があったのか嫌でも分かり、即座にリクを見るが何事も無く眠ったままだ。
未だに膝を抱えて蹲るリリィを見て、オパールは無理に問い質す事はせずに隣に座る。そうして何をするでもなく時間だけが過ぎていると、ようやくリリィが口を開いた。
「あの、ね…オパール」
「何?」
「もし…私が――」
そこまで言うと、再び口を閉じて首を横に振った。
「…ううん、何でもない」
「何でもない訳ないでしょ? いいから教えなさいって」
暗い顔をするリリィに、オパールは笑いかける。
それを聞いて、リリィは静かに拳に握って決意した表情を浮かべた。
「じゃあ、言うけど…」
そこで言葉を止めると、大きく深呼吸をして一拍置いた。
「――夢の人、かもしれない…」
誰が、とは聞かなくても分かった。
「…リク?」
ただそれだけを聞くと、リリィは黙って頷いた。
「思い過ごし…じゃ、ないんだよね?」
「…ごめんね」
心から謝るリリィに、オパールの中で複雑な気持ちが湧き上がる。
それでも一息吐いて気持ちを落ち着かせると、頭を下げるリリィに笑顔を見せた。
「何で謝るのよ? 今はリリィの気持ちが決まっただけで…勝負はこれから。それで、どっちが勝っても恨みっこ無し、でしょ?」
「うん…そうだね」
オパールの言葉に、少しだけリリィは笑みを浮かべる。
しかし、また顔を膝に埋めてしまうと小さく呟いた。
「本当に、ごめんね…」
尚も謝るリリィに、オパールは何も言えずに壁に凭れかかった。
しかし、この時のオパールは何も知らなかった。
彼女がどんな思いで、自分達に謝っていたのかを…。
上の階層の方では、ソラ達は下に続く坂を下っていた。
「大分奥まで来たな…」
「大丈夫かな、リク…」
未だに続く坂の下をヴェンが見ていると、後ろの方でソラが小さく呟く。
不安で一杯のソラに、隣にいたカイリは笑いかけた。
「リクなら大丈夫だよ。オパールも一緒にいるし」
「うん…」
カイリの言葉でも不安は拭えないのか、暗い表情のまま生返事を返す。
そんなソラに、ヴェンは何処か寂しそうに小さく笑った。
「心配、だよな。大切な友達と離れ離れになるの…」
「ヴェン?」
ソラが顔を上げると、ヴェンは表情を変えずに静かに語り始めた。
「話したよな…俺、仮面を被った奴にいろいろ言われて、テラを追いかけるように旅をしてたって」
テラがテラで無くなる―――ヴァニタスに言われた言葉に、テラを追いかける様にあの修行場の世界から旅立った。
いろんな世界を巡り、いろんな人と出会い、アンヴァースや闇を持った奴らと戦い…――そうして、ようやくテラと会えた。
だけど…。
「それで、あの世界でテラとアクアに再会したけど…二人とも、俺を置いて旅を続けたんだ。理由はあるんだろうけど、凄く不安で寂しかった…」
「ヴェン…」
何時か俺を救ってくれる。そう言って旅立ったテラは、今思えば何かを決意してた。そして、自分にあの地へ帰る様に言ったアクアも。
でも、その時は何だか自分一人置いていかれた気がして…とても寂しかったのを覚えている。
ポケットに仕舞ってあったアクアが作ってくれた『繋がりのお守り』を取り出すと、じっと見つめた。
「だから、ソラの気持ち分かるんだ。絆で繋がってるって分かっても…――やっぱり、一緒にいたいって思うよな」
この未来の世界ですれ違ってた絆は元には戻った。だけど、今もこうして離れ離れのまま。
再び心に芽生えた寂しさと一緒に離れているテラとアクアを思い、ヴェンはお守りを握りしめる。
そんなヴェンの様子に、カイリはお守りを握り手を包み込むように手を握った。
「大丈夫だよ、ヴェン。今はテラやアクアと離れているけど…でも、私達みたいに一人じゃないでしょ? その人達の事も、信じてあげよう」
「俺だってカイリやリクと離れ離れの時があったけど、こうして再会して一緒にいるからさ!! ヴェンだって、俺達みたいにテラやアクアとまた一緒になれるって!!」
そうして笑いかけてくれる二人に、ヴェンの表情に笑顔が戻った。
「ソラ、カイリ…ありがとう」
逆に励まされてしまったが、それでもヴェンは嬉しかった。
笑顔を浮かべながらお礼を述べると、ソラは満面の笑みを浮かべて前に出た。
「よーし! それじゃあ、早く三人を見つけるぞー!」
「もう、ソラ! こんな所で走ったら危ないでしょ!」
急いで坂を駆け下りるソラに、カイリは怒りつつも後を追いかける様に駆け下りる。
少しずつ遠ざかる二人を見て、ヴェンも笑いながら坂を駆け下りる。
そうして三人が坂を下り終えると、前方に三つに分かれた道があった。
「分かれ道だね…」
「何処に行けばいいんだろ?」
カイリとヴェンが分かれ道を見て迷っていると、突然ソラが手を叩いた。
「そうだ! ここは…」
そう言いながらキーブレードを取り出すと、何と道の真ん中に立てる。
何をしたいのか予想が付き、カイリは恐る恐る自信ありげのソラに聞いた。
「何、してるの?」
「ほら、どっちに行けばいいか迷った時はこうするだろ? で、倒れた方向に進めばいいって!」
「だからって…キーブレードをそんな風に使っていいのか?」
「でも、木の棒とかよりこっちの方が当ててくれそうだろ!? よーし、頼むぞキーブレード!」
ヴェンさえも呆れた目で見るが、ソラは気にせずにキーブレードを立てた状態で手を離した。
すると、キーブレードは支えを失い一回転して―――やがて左の方向に倒れた。
「こっちだな! おーい、リクー!! オパール!!」
ソラは落ちたキーブレードを拾うと、すぐさま大声で呼びながら左の道に進む。
この行動に、思わずカイリは不安げな目でヴェンを見た。
「ヴェン…これ、信じていいのかな?」
「どうだろう…?」
その頃―――オパールは軽く洞窟の下見を終え、二人のいる場所へと戻っている所だった。
(あたしばっかじゃ、フェアじゃないもんね)
そんな事を考え、泳ぎながら小さく笑う。
数日前に出会ったとは言え、リクといる時間は自分の方が上だ。
だから理由を付けて、眠っている間とは言えリリィを一緒に居させた。
(でも…本当に、良かったのかな?)
不意に、自分が取った行動に一種の不安が過る。
リリィの夢。そしてリクの言う感情。
繋がっている確証なんて、何処にもない…――それなのに、どうして不安が過るのだろう。
そうこう考えていると、二人がいる空洞の地点が見えて一気に上がった。
「――ハッ!」
水面に出ると、オパールは一気に息を吸い込む。
何度か大きく呼吸すると、二人がいる岸へと上がった。
「今戻った――…リリィ?」
軽く髪を絞っていると、何故かリリィが膝を抱えて座っている。
すぐに名前を呼ぶと、リリィはバッと焦ったように顔を上げてオパールを見た。
「あ、え? も、戻って来たんだね?」
「どうしたの? 何かあった?」
「う、ううん! 大丈夫、だから…!」
そう言うなり、ゆっくりと顔を俯かせる。
何があったのか嫌でも分かり、即座にリクを見るが何事も無く眠ったままだ。
未だに膝を抱えて蹲るリリィを見て、オパールは無理に問い質す事はせずに隣に座る。そうして何をするでもなく時間だけが過ぎていると、ようやくリリィが口を開いた。
「あの、ね…オパール」
「何?」
「もし…私が――」
そこまで言うと、再び口を閉じて首を横に振った。
「…ううん、何でもない」
「何でもない訳ないでしょ? いいから教えなさいって」
暗い顔をするリリィに、オパールは笑いかける。
それを聞いて、リリィは静かに拳に握って決意した表情を浮かべた。
「じゃあ、言うけど…」
そこで言葉を止めると、大きく深呼吸をして一拍置いた。
「――夢の人、かもしれない…」
誰が、とは聞かなくても分かった。
「…リク?」
ただそれだけを聞くと、リリィは黙って頷いた。
「思い過ごし…じゃ、ないんだよね?」
「…ごめんね」
心から謝るリリィに、オパールの中で複雑な気持ちが湧き上がる。
それでも一息吐いて気持ちを落ち着かせると、頭を下げるリリィに笑顔を見せた。
「何で謝るのよ? 今はリリィの気持ちが決まっただけで…勝負はこれから。それで、どっちが勝っても恨みっこ無し、でしょ?」
「うん…そうだね」
オパールの言葉に、少しだけリリィは笑みを浮かべる。
しかし、また顔を膝に埋めてしまうと小さく呟いた。
「本当に、ごめんね…」
尚も謝るリリィに、オパールは何も言えずに壁に凭れかかった。
しかし、この時のオパールは何も知らなかった。
彼女がどんな思いで、自分達に謝っていたのかを…。