第一章 永遠剣士編第七話「黒龍魔王/猫」
「!!」
「―――」
強烈な光と、光から出来た鎖がフェイトの孔からあふれ出し、ジェミニ諸共に飲み込んで消え去った。
ジェミニには困惑を浮かべながらも、周囲を見渡した。
白い大地以外は全て虚空な世界。そんな不思議な閉鎖空間に送り込んだ張本人を睨み据えた。
「これが匣の『中身』か?」
光を放ち終えたフェイトは一息、噴出して彼を見やった。
「正確には此処は『狭間』だよ。匣の名前は『カハ・ネガシオン』。これは、僕たち破面の下僕『従属官』を幽閉するために作られたものだ……僕自身、ここに入るのは初めてけどね」
「幽閉? なら、此処から出られないのか」
「その答えは明瞭だよ」
フェイトは微笑みを浮かべて、白刃を構える。
「―――赦せ、『黒龍刃』―――」
刀身から溢れ出す黒い水がフェイトを包み込み、球体のように丸くなった。
そして、中身を切り出すように内側から銀に照らされた黒い竜鱗の翼、篭手、尾を生やし、装着したフェイトが姿を現した。白い王冠はフェイトを最上の破面と証明するかのように彼の頭に装飾されていた。
「貴方を倒せば、僕と共に脱出すればいいだけですから」
「……そんな、情けは要らない……斬り捨てろ、私を!」
「残念だけど……それは叶わないよ。睦月たちは何より、あの子が―――アビスが赦してくれない」
「構うものか、斬り捨てろ! フェイトぉお!!」
「―――……その仮面が君を苦しめているのか」
斬りかかったジェミニの剣撃を受け止め、空いた左手を伸ばした。
「引き剥がしてやるよ、ジェミニ・ソロモン・レーサム!」
「っ!」
引き伸ばした彼の腕を切り捨て、再び彼に斬り挑んだ。
苦悶の顔色を零したフェイトは切り飛ばされた腕に構わず、彼へと剣尖を向けた。
「『黒龍の魔槍』!!」
「ぐっ……!」
黒に剣先を染め、ジェミニ目掛けて長く突き伸ばした。それをぎりぎり、刀身を盾にして防いだ。強力な一撃で、刀身に皹が走った。
そして、その勢いのままに突き飛ばされたジェミニは虚空で受身を取り、フェイトは刀を傍にさし、地に落ちた腕を拾い上げた。
「流石だ……長く戦えば、僕が死んでしまいそうだ」
「……」
「―――意識がそろそろ飲まれかかってるね」
既に、ジェミニを包んでいた仮面は素顔を覆うほどに侵食されていた。すでに自分を切り捨てろと懇願し始め、此処での戦いの最中には、もう――。
フェイトはきっと彼の最後の伝えるべき事だったんだろうと想った。だが、彼を倒せるのは自分だけだから。
「喰い赦せ」
―――『黒龍魔王』―――
そう唱えると、フェイトの翼が大きく広げ、彼を、刺しおかれた刀を、包み込んだ。
更に中身ごと『ぐちゃぐちゃ』にかき回すように回転し、音の一切が砕ける。真円の黒い球体、その真ん中から内より黒い刃が生え出て、切りあげていく。
そして、真っ二つに切り裂かれると出でるものは全身を白く染め上げた竜の様な顔をした何かだった。尾は細長く、その右腕が黒い刀となっていた。
『……』
「ぉおおおお」
支配されたジェミニは彼の姿を見て、声を上げた。
それは感嘆でも、驚きでも、嫌悪でもない。
「―――おおおおおぁあああああああああ!!」
恐怖。殺意。
滲み出る恐怖と殺意がジェミニの身体を突き動かした。
八ノ剱を虚空へ消し、真の一振り―――『永闢皇』を抜刀する。
『永遠剣士は喰らう者』
斬りかかった彼の一閃を受け止め、竜の口で、フェイトは言う。
『僕の死は、罪の顕在は【暴食】』
あらゆる他者を引き裂き、屠り、喰らい尽くす。虚しい餓えに塗れたモノ。その果てに飢えで野垂れ死ぬ。
『でも、それは過去の自分の一面に過ぎない。別に変わろうとも想わない。でも、今の僕は』
細く伸びた尾でジェミニの両腕を締め付け、そのまま一気に宙へ放り上げた。自身も続いて、大きくジャンプした。
『―――いや』
今の貴方には聞こえないか。
『大凶津の断罪』
刀身が黒く煌めき、
「……」
自分の敗北を悟った。
その瞬間、真黒の波濤が全てを覆い尽くした。
「喰らえぇ!」
白い翼を羽ばたかせ、皐月は光弾を無数に放った。だが、男は雷光を閃かせ、切り捨てる。
そして、紫電の光弾を鋭い槍のように連続にうち返した。
「ぐっ……!」
防御を構えたが、光弾の勢いは更に増し、打ち崩した。すかさず、男は皐月の懐にもぐりこみ、雷を纏った剣で攻撃してきた。
「『帝王剣舞』!」
「うわあああああ!!」
無数の連撃を直撃し、トドメの雷撃の衝撃波で皐月は地上へと落ちていった。
その姿を見た睦月は驚きと絶望の含んだ顔を浮かべて、
「皐月いいい!!」
「よし、アイツから捕らえるとするか」
助けに向かおうとした睦月に、無数の金に煌めく勾玉が星の軌道を描くように回転し、結界を展開した。
「っ、この! この!!」
「無駄だ。ディアウス! 後は任せろ、そのまま、その塔に攻撃しろ」
「……解った」
アバタールの命令に男――ディアウスは頷き返し、雷弾をためて、塔へ攻撃を再開した。そして、動きの止められた睦月を尻目に、アバタールは落ちていった皐月をとらえに向かった。
皐月が落下した場所は市街の屋上だった。痛みに呻く中、アバタールはそこへ降り立った。
「さて、まずはお前か」
「くっ……!」
「永遠剣士一人くらいなら、アイツも文句は無いだろうな」
「―――させないわよ」
「っ!」
女性の声と共に無数の糸が現れ、アバタールの身体を締め上げる。
「っ! 誰だ?!」
「名乗る気は無いわよ」
そう言って、アバタールを思い切り、建物の壁の方へ投げつけ、打ち込まれた彼は小さな断末魔を吐き出し、地表へと落ちた。
「――ふう」
落ちた彼の姿を確認し、姿をあわした女性は倒れた皐月を起き上がらせた。
「あ……貴女は」
程よく伸びた青みを帯びた銀髪、妖しい赤の瞳をした黒スーツの女性は微笑みを浮かべて、
「イヴよ、はじめまして。
塔の防衛に向かっていたら、貴方がここに落ちてきたものだから助けに来たわ。危なかったしね」
「……ええ」
あと一歩、イヴの助力がなければ皐月はアバタールに捕らえられていただろう。それはつまり、ジェミニと同じ末路になる。
冷汗を拭い取り、皐月は上空を仰いだ。
「兄さんも危ない、行かないと……」
「でも、その様子だと上の敵は厄介ね」
イヴは翼を羽ばたかせようとした皐月に、質素に呟いた。それを聞いた皐月は少し反論できずに顔色を悪くした。
そんな様子に彼女は苦笑を零して、一応フォローする。
「ああ、責めている訳じゃないから。――なら、貴方はお兄さんを助けに行きなさい。
私が塔を攻撃している奴と戦うわ」
「え、でも……」
「ふふ、急がないとさっきの『悪たれ』も戻ってくるわよ?」
イヴ自身、あの程度では死なないだろうと見計らっている。彼が復活する前に、行動をとらなければいけない。
「解りました。兄さんを助けて、すぐにそちらを手伝いますね」
「ええ。お願いするわ」
皐月は一礼して、一気に空へと飛翔していった。同時に、イヴは壁をよじ登るように駆け上がっていった。
「兄さん!」
「皐月!? 無事だったのか!」
空へ戻ってきた皐月に驚いた睦月。どこか嬉しそうな顔を浮かべ、すぐに真剣な顔で話す。
「アイツはどうした」
「アバタールは今身動きが取れません。あの人のお陰で助かりました」
皐月が視線を落とすと、塔に攻撃を仕掛けていたディアウスに糸を巻きつかせて、阻止したイヴが居た。
「よし、じゃあさっさと解いてくれ」
「うん」
皐月は勾玉の結界を一閃し、破壊した。
「っと! 皐月。今からお前は一旦、永遠城に戻るんだ」
「え…どうして?」
「―――どうにも町の状況が掴めねえ。永遠城から状況を調べ上げくれ。其の後にでも此処に戻るなり、居座っても構わない」
睦月はアバタールの事、ジェミニの事を見据えて、彼とアビスの残った永遠剣士だけでも護ろうと想い、言った。
戸惑いを浮かべる皐月だったが、彼の真摯な思いに反論は出来なかった。
「……解ったよ。戻った後、調べ上げて、伝える。だから、その後……一緒に―――」
「いけ、もうきやがった」
皐月は頷き、永遠城へと羽ばたいていった。そして、睦月は再び、戻ってきたアバタールを見やった。
全身、砂埃に塗れた酷い姿だ。顔色は無論、怒りに満ちた顔だ。
「よお、随分とボロボロだな」
「黙れ……! アヤツは……おのれ、逃がすものか……ディアウ―――ちっ」
睦月のからかいに怒りで吐き捨て、ディアウスに命令しようとしたがやめた。彼は今、イヴと交戦状態だった。
更にいえば、イヴの糸を駆使した柔軟な戦い方に彼は押されていた。
「……お前だけでもアイツの元に連れて行く」
「力尽くでか?」
「なら、手段をとればいい」
勾玉が無数、睦月の周囲に飛び交い、幾つもの魔法陣を刻む。
「!」
「さあ、アチラに行こうか?」
「―――おらぁっ!!」
右腕が巨大な砲身となり、一気に引き金を引いた。光弾は無数に枝分かれ、全ての魔法陣を打ち抜いた。
「!!」
「てめえの勾玉、一つ喰ったんでね……もうきかねえな」
「貴様ぁ!!」
「来いよ、てめえは俺がぶちのめす。そして、ジェミニを操った張本人の情報を洗い浚い吐き出せる!!」
「―――」
強烈な光と、光から出来た鎖がフェイトの孔からあふれ出し、ジェミニ諸共に飲み込んで消え去った。
ジェミニには困惑を浮かべながらも、周囲を見渡した。
白い大地以外は全て虚空な世界。そんな不思議な閉鎖空間に送り込んだ張本人を睨み据えた。
「これが匣の『中身』か?」
光を放ち終えたフェイトは一息、噴出して彼を見やった。
「正確には此処は『狭間』だよ。匣の名前は『カハ・ネガシオン』。これは、僕たち破面の下僕『従属官』を幽閉するために作られたものだ……僕自身、ここに入るのは初めてけどね」
「幽閉? なら、此処から出られないのか」
「その答えは明瞭だよ」
フェイトは微笑みを浮かべて、白刃を構える。
「―――赦せ、『黒龍刃』―――」
刀身から溢れ出す黒い水がフェイトを包み込み、球体のように丸くなった。
そして、中身を切り出すように内側から銀に照らされた黒い竜鱗の翼、篭手、尾を生やし、装着したフェイトが姿を現した。白い王冠はフェイトを最上の破面と証明するかのように彼の頭に装飾されていた。
「貴方を倒せば、僕と共に脱出すればいいだけですから」
「……そんな、情けは要らない……斬り捨てろ、私を!」
「残念だけど……それは叶わないよ。睦月たちは何より、あの子が―――アビスが赦してくれない」
「構うものか、斬り捨てろ! フェイトぉお!!」
「―――……その仮面が君を苦しめているのか」
斬りかかったジェミニの剣撃を受け止め、空いた左手を伸ばした。
「引き剥がしてやるよ、ジェミニ・ソロモン・レーサム!」
「っ!」
引き伸ばした彼の腕を切り捨て、再び彼に斬り挑んだ。
苦悶の顔色を零したフェイトは切り飛ばされた腕に構わず、彼へと剣尖を向けた。
「『黒龍の魔槍』!!」
「ぐっ……!」
黒に剣先を染め、ジェミニ目掛けて長く突き伸ばした。それをぎりぎり、刀身を盾にして防いだ。強力な一撃で、刀身に皹が走った。
そして、その勢いのままに突き飛ばされたジェミニは虚空で受身を取り、フェイトは刀を傍にさし、地に落ちた腕を拾い上げた。
「流石だ……長く戦えば、僕が死んでしまいそうだ」
「……」
「―――意識がそろそろ飲まれかかってるね」
既に、ジェミニを包んでいた仮面は素顔を覆うほどに侵食されていた。すでに自分を切り捨てろと懇願し始め、此処での戦いの最中には、もう――。
フェイトはきっと彼の最後の伝えるべき事だったんだろうと想った。だが、彼を倒せるのは自分だけだから。
「喰い赦せ」
―――『黒龍魔王』―――
そう唱えると、フェイトの翼が大きく広げ、彼を、刺しおかれた刀を、包み込んだ。
更に中身ごと『ぐちゃぐちゃ』にかき回すように回転し、音の一切が砕ける。真円の黒い球体、その真ん中から内より黒い刃が生え出て、切りあげていく。
そして、真っ二つに切り裂かれると出でるものは全身を白く染め上げた竜の様な顔をした何かだった。尾は細長く、その右腕が黒い刀となっていた。
『……』
「ぉおおおお」
支配されたジェミニは彼の姿を見て、声を上げた。
それは感嘆でも、驚きでも、嫌悪でもない。
「―――おおおおおぁあああああああああ!!」
恐怖。殺意。
滲み出る恐怖と殺意がジェミニの身体を突き動かした。
八ノ剱を虚空へ消し、真の一振り―――『永闢皇』を抜刀する。
『永遠剣士は喰らう者』
斬りかかった彼の一閃を受け止め、竜の口で、フェイトは言う。
『僕の死は、罪の顕在は【暴食】』
あらゆる他者を引き裂き、屠り、喰らい尽くす。虚しい餓えに塗れたモノ。その果てに飢えで野垂れ死ぬ。
『でも、それは過去の自分の一面に過ぎない。別に変わろうとも想わない。でも、今の僕は』
細く伸びた尾でジェミニの両腕を締め付け、そのまま一気に宙へ放り上げた。自身も続いて、大きくジャンプした。
『―――いや』
今の貴方には聞こえないか。
『大凶津の断罪』
刀身が黒く煌めき、
「……」
自分の敗北を悟った。
その瞬間、真黒の波濤が全てを覆い尽くした。
「喰らえぇ!」
白い翼を羽ばたかせ、皐月は光弾を無数に放った。だが、男は雷光を閃かせ、切り捨てる。
そして、紫電の光弾を鋭い槍のように連続にうち返した。
「ぐっ……!」
防御を構えたが、光弾の勢いは更に増し、打ち崩した。すかさず、男は皐月の懐にもぐりこみ、雷を纏った剣で攻撃してきた。
「『帝王剣舞』!」
「うわあああああ!!」
無数の連撃を直撃し、トドメの雷撃の衝撃波で皐月は地上へと落ちていった。
その姿を見た睦月は驚きと絶望の含んだ顔を浮かべて、
「皐月いいい!!」
「よし、アイツから捕らえるとするか」
助けに向かおうとした睦月に、無数の金に煌めく勾玉が星の軌道を描くように回転し、結界を展開した。
「っ、この! この!!」
「無駄だ。ディアウス! 後は任せろ、そのまま、その塔に攻撃しろ」
「……解った」
アバタールの命令に男――ディアウスは頷き返し、雷弾をためて、塔へ攻撃を再開した。そして、動きの止められた睦月を尻目に、アバタールは落ちていった皐月をとらえに向かった。
皐月が落下した場所は市街の屋上だった。痛みに呻く中、アバタールはそこへ降り立った。
「さて、まずはお前か」
「くっ……!」
「永遠剣士一人くらいなら、アイツも文句は無いだろうな」
「―――させないわよ」
「っ!」
女性の声と共に無数の糸が現れ、アバタールの身体を締め上げる。
「っ! 誰だ?!」
「名乗る気は無いわよ」
そう言って、アバタールを思い切り、建物の壁の方へ投げつけ、打ち込まれた彼は小さな断末魔を吐き出し、地表へと落ちた。
「――ふう」
落ちた彼の姿を確認し、姿をあわした女性は倒れた皐月を起き上がらせた。
「あ……貴女は」
程よく伸びた青みを帯びた銀髪、妖しい赤の瞳をした黒スーツの女性は微笑みを浮かべて、
「イヴよ、はじめまして。
塔の防衛に向かっていたら、貴方がここに落ちてきたものだから助けに来たわ。危なかったしね」
「……ええ」
あと一歩、イヴの助力がなければ皐月はアバタールに捕らえられていただろう。それはつまり、ジェミニと同じ末路になる。
冷汗を拭い取り、皐月は上空を仰いだ。
「兄さんも危ない、行かないと……」
「でも、その様子だと上の敵は厄介ね」
イヴは翼を羽ばたかせようとした皐月に、質素に呟いた。それを聞いた皐月は少し反論できずに顔色を悪くした。
そんな様子に彼女は苦笑を零して、一応フォローする。
「ああ、責めている訳じゃないから。――なら、貴方はお兄さんを助けに行きなさい。
私が塔を攻撃している奴と戦うわ」
「え、でも……」
「ふふ、急がないとさっきの『悪たれ』も戻ってくるわよ?」
イヴ自身、あの程度では死なないだろうと見計らっている。彼が復活する前に、行動をとらなければいけない。
「解りました。兄さんを助けて、すぐにそちらを手伝いますね」
「ええ。お願いするわ」
皐月は一礼して、一気に空へと飛翔していった。同時に、イヴは壁をよじ登るように駆け上がっていった。
「兄さん!」
「皐月!? 無事だったのか!」
空へ戻ってきた皐月に驚いた睦月。どこか嬉しそうな顔を浮かべ、すぐに真剣な顔で話す。
「アイツはどうした」
「アバタールは今身動きが取れません。あの人のお陰で助かりました」
皐月が視線を落とすと、塔に攻撃を仕掛けていたディアウスに糸を巻きつかせて、阻止したイヴが居た。
「よし、じゃあさっさと解いてくれ」
「うん」
皐月は勾玉の結界を一閃し、破壊した。
「っと! 皐月。今からお前は一旦、永遠城に戻るんだ」
「え…どうして?」
「―――どうにも町の状況が掴めねえ。永遠城から状況を調べ上げくれ。其の後にでも此処に戻るなり、居座っても構わない」
睦月はアバタールの事、ジェミニの事を見据えて、彼とアビスの残った永遠剣士だけでも護ろうと想い、言った。
戸惑いを浮かべる皐月だったが、彼の真摯な思いに反論は出来なかった。
「……解ったよ。戻った後、調べ上げて、伝える。だから、その後……一緒に―――」
「いけ、もうきやがった」
皐月は頷き、永遠城へと羽ばたいていった。そして、睦月は再び、戻ってきたアバタールを見やった。
全身、砂埃に塗れた酷い姿だ。顔色は無論、怒りに満ちた顔だ。
「よお、随分とボロボロだな」
「黙れ……! アヤツは……おのれ、逃がすものか……ディアウ―――ちっ」
睦月のからかいに怒りで吐き捨て、ディアウスに命令しようとしたがやめた。彼は今、イヴと交戦状態だった。
更にいえば、イヴの糸を駆使した柔軟な戦い方に彼は押されていた。
「……お前だけでもアイツの元に連れて行く」
「力尽くでか?」
「なら、手段をとればいい」
勾玉が無数、睦月の周囲に飛び交い、幾つもの魔法陣を刻む。
「!」
「さあ、アチラに行こうか?」
「―――おらぁっ!!」
右腕が巨大な砲身となり、一気に引き金を引いた。光弾は無数に枝分かれ、全ての魔法陣を打ち抜いた。
「!!」
「てめえの勾玉、一つ喰ったんでね……もうきかねえな」
「貴様ぁ!!」
「来いよ、てめえは俺がぶちのめす。そして、ジェミニを操った張本人の情報を洗い浚い吐き出せる!!」