Another the last chapter‐7
少し離れた場所でアクアが見つめる先に、三人が対峙した状態で互いの動きを観察している。
あえて突っ込まずに二人が隙を待っていると、急にセフィロスの姿が消えた。
「――後ろだっ!!」
ゼロボロスが叫ぶと同時に、自分の翼を広げる。
同じくウィドも振り返りつつ剣を構えると、背後にセフィロスが現れて二人纏めて真上に掬うように刀を振るった。
「「ぐぅ…!?」」
どうにか防御をするが、二人は少しだけ吹き飛ばされて体制を崩す。
その隙を狙って、さらにセフィロスが追撃をかける。
「消え失せろ」
そう言って手を上げると、巨大な炎の柱が立ち上る。
『ファイガウォール』を使い、セフィロスは二人纏めて炎へ呑み込もうとした。
「ゼロボロス、これを!」
「何?」
アクアの声に、セフィロスは炎の中で目を細める。
見ると、アクアがゼロボロスに向かって『エーテル』を投げている。
こうしてゼロボロスの魔力が回復すると、炎に引き寄せられる直前で拳を握り込んだ。
「新技、行くよ! 『迫撃零掌・轟』!!」
拳を地面に叩き込むと同時に、ゼロボロスとウィドの周りで岩が隆起する。
壁を作った事で炎へと引き寄せられるのを阻止すると、ウィドが剣を構えた。
「ゼロボロス、その力貰います!」
「分かった!!」
ゼロボロスが拳に白黒の炎を纏って頷くのを見て、ウィドは剣に冷気を漂わせる。
すると、二人はそのまま地面に剣と拳を打ち付けた。
「「『氷柱爆砕』!!」」
そうして二人の周りに、今度はセフィロスの炎に劣らない巨大な氷結の柱を隆起させる。
だが、少しもしない内に氷柱は罅割れを起こして崩れ去り巨大な氷の雨が降り注ぐ。
セフィロスは構わずに炎の柱を出して攻撃を相殺すると、戦ってから初めてその表情が変わった。
「私の魔法を打ち破るか…やるな、お前達」
若干目を細めて笑みを溢すセフィロスに対し、二人は何処か乾いた笑みを浮かべていた。
「ぶっつけ本番でしたが、成功しましたね…」
「これもアクアのおかげですね…」
ゼロボロスとウィドはそう話しながら、前にアクアから聞いた『ディメイションリンク』について思い出す。
これは本来、【繋がりの力】によって絆を結んだ人達の力を借りる事で、その人達の持つ力を使えるようになると言う代物だ。
まさしく絆を重んじるキーブレード使い特権の能力。キーブレードを使えない自分達でも何かの形で使えないだろうかと考えていると、アクアがもう一つの方法を教えてくれた。
それならば、他人と協力して技や魔法を出せばいい。自分達は共に旅する仲間なのだから、それぐらい出来るだろうと。
アクアのアドバイスに二人が感謝をしていると、セフィロスが動いた。
「だが、何時まで持つかな?」
刀を構えると同時に、セフィロスは空中へと飛び上がる。
攻撃の予備動作だと分かり、アクアは二人に向かって叫んだ。
「来るわ!?」
「舞え、『神速』」
そうして刀を一振りしただけで、幾つもの剣圧がウィドに飛んできた。
「くぅ…!?」
「見えまい」
すぐに剣を構えて剣圧を防御し終えると、セフィロスが目の前に現れる。
さらに上下に振られた刀も防御するが、重い一撃を喰ったのか後ろに地滑りを起こす。
それでもどうにかダメージを最小限で押えると、セフィロスが消えた。
「アクアっ!?」
現れる場所を察知したのか、ゼロボロスがアクアに向かって叫ぶ。
それと同時に、セフィロスがアクアの背後に現れて刀を振るう。
「『リフレク』!!」
すぐにアクアは、周りに魔法の障壁を展開させる。
セフィロスの一撃を防御すると、体制を立て直したウィドが動いた。
「『疾突』!!」
「くっ…!」
風を纏った素早い突きを、隙が出来たセフィロスに当てる。
そうしてセフィロスは吹き飛ばされるが、再び消えると上空へと現れた。
「逃がさないわ!! 『サンダガ』!!」
アクアが広範囲の雷の魔法を発動させるが、セフィロスは更に上空へ飛び上がる。
「約束の地へ…『獄門』」
そのまま範囲から逃れるなり、刀を構えて急降下してきた。
「「くっ!?」」
落下地点を避けようと、二人はそれぞれその場から後ろに跳躍する。
だが、セフィロスが地面に落下すると共に岩の隆起が周囲に現れ、距離を取った二人にまで届いた。
「きゃあぁ!?」
「ぐあぁ!?」
あまりの威力に、二人はそれぞれ悲鳴を上げて吹き飛ばされてしまう。
セフィロスが地面に刺さった刀を引き抜いていると、ある事に気づいた。
(おかしい…何故、あの男は攻撃しない?)
今まで二人と共に何かしらの攻撃していたゼロボロスが、攻撃して来ない。
セフィロスが不審に思って振り返ると、答えが分かった。
「『羅刹獄零脚』」
その言葉と共に、ゼロボロスの両足に白黒の炎が纏わりつく。
だが、先程見た炎よりも強い力を感じる。セフィロスはそれを感じつつ、ゼロボロスに話しかけた。
「二人は囮と言う事か?」
「囮と言う言い方は失礼ですよ。せめて時間稼ぎしてくれたと言ってください」
「それで、その炎を纏って何をする気だ?」
「そうですねぇ。あえて言うなら――」
そう言った直後、一瞬でセフィロスの目の前に現れた。
「スピードを格段に上昇させる事ぐらいですよ!! 『双月斬脚・零』!!」
もはやセフィロスでも捕えられない真空波を伴った連続蹴りを、ゼロボロスは力の限り浴びせた。
「うぁ…!?」
さすがのセフィロスも、これにはダメージを受けて吹き飛ばされる。
そうして体制を崩したセフィロスに、ゼロボロスはニヤリと笑いかけた。
「どうやら、この強化だけでもあなたには十分のようですね?」
「そのようだな…ならば、私も本気を出すまでだ」
そう言って手を上げると、セフィロスの全身に赤黒いオーラが包み込む。
そうしてすぐに刀を構えると、ゼロボロスが後ろを振り返って叫んだ。
「二人とも、ガードをっ!!」
とっさに叫ぶと、回復していたアクアとウィドがガードの構えを取る。
同時にセフィロスがすり抜けるように移動し、二人に向かって見えない斬撃が襲い掛かった。
「あうっ…!?」
「さっきよりも、強い…!!」
「まだだ」
強化した事によって、防御したにも関わらずさっきよりも腕が痺れていると、セフィロスが腕を振るう。
すると、二人の周りを無数の黒い球体が取り囲んだ。
「二度も喰らわないわ! 『リフレク』!!」
「『氷壁破』!!」
魔法の障壁と氷の壁を張る事で、迫ってきた『シャドウフレア』を防御する。
障壁は球体を弾き返し、氷の壁は相殺されて破片となって崩れていく。
そんな氷の壁に、アクアの脳裏に何かが閃いた。
「――使える」
「え?」
思わずウィドが聞き返すが、アクアはキーブレードの切先に光を溜めて上へと掲げた。
「光よ!」
キーブレードから光を放つと、氷の欠片が煌めく様に互いに反射しあう。
やがてその煌めきが幾つもの剣の形となると、セフィロスの周りを取り囲んだ。
「貫け! 『ブリリアントブレード』!!」
「くっ!」
バッと手を振るうと、意思を持ったように水晶の剣はセフィロスに襲い掛かる。
セフィロスはそれを刀で払うが、全てを払う事が出来ず剣の一つが翼を貫いた。
「ぐぅ!?」
「これはついで!! 『迫撃零掌』!!」
「がはっ!?」
更にゼロボロスが掌底を放ち、セフィロスに追撃をかける。
どうにかピンチを反撃に持っていくと、ゼロボロスはアクアを見た。
「もう僕とウィドがさっきやった技術を習得したんですか?」
「たまたまよ。それに…元々、そう言った事について教えたのは私でしょ?」
「そうでした。それよりも、注意してくださいよ?」
ゼロボロスが苦笑しながら、ある方向を指す。
見ると、ルキルを寝かせている近くの壁が丸く陥没している。
「あなた達、さっき跳ね返した魔法を危うくルキルに当てる所でしたから」
「「す、すみません…」」
さすがの二人も頭を下げて謝っていると、セフィロスが面白そうに口を歪めて笑い出した。
「ほう…その人形が大切か? ならば――」
そう言うなり、上空に高く飛び上がるセフィロス。
嫌な予感を感じ、アクアはゼロボロスに指示を出した。
「ゼロボロス!? 奴を止めて!!」
「言われなくても――!!」
ゼロボロスは飛び上がると、すぐにセフィロスの前へと躍り出る。
攻撃を中断させようと、高速で拳を出す。
「無駄だ」
だが、放った拳は刀で止められるなり、即座に弾き返される。
直後、僅かによろめいたゼロボロスに向かってセフィロスは高速で刀で次々と斬り付けた。
「ぐわあぁ!?」
「ゼロボロス!? 『ファイガ』!!」
「『空衝撃』!!」
アクアとウィドがセフィロスを引き離そうと、空中に大きな火球と衝撃波を飛ばす。
「ふん」
しかし、ゼロボロスを一気に斬り付けると同時に二人の攻撃も剣圧で相殺してしまう。
やがて急降下しながら、セフィロスは刀を構えた。
「消え去れ――『八刀一閃』」
そうして刀を振るうと、何とルキルに向かってここ一帯を両断する程の巨大な衝撃波を繰り出した。
「なっ…!!?」
これにはゼロボロスも目を見開くが、今の猛攻による痛みで思うように身体を動かせない。
地上にいるアクアも息を呑む中…ここで、ウィドが庇うようにルキルの前に出た。
「させない…!!」
「ウィド!!?」
居合抜きの構えを作って衝撃波を睨むウィドに、アクアが悲鳴に似た叫びを上げる。
そんな中、ウィドは頭上に迫る衝撃波を見ながら剣に力を込めた。
(私に、力を…!!)
まるで祈るようにして精神を研ぎ澄ませると、剣の柄と鞘を軽く鳴らして引き抜いた。
「『空衝撃――」
ここで通常よりも、更に力を纏わせる。
「――牙煉』っ!!!」
そうして剣を振るうと、先程出した物よりも大きな衝撃波を繰り出す。
ウィドの放った衝撃波は一直線にセフィロスの放った衝撃波とぶつかり合い、大きく弾けて相殺される。
間一髪でルキルを守れた事にウィドが息を切らしながら笑みを浮かべた。
「ほう? 私の攻撃を相殺するとは…面白い」
直後、ウィドの背後から声が響く。
すぐに振り返るが、その時にはセフィロスが刀で横に薙ぎ払うように攻撃してきた。
「ぐぅ!?」
「ウィド!?」
ウィドの悲鳴に、ゼロボロスの回復をしていたアクアが気づく。
見るとウィドは遠くに倒れ、セフィロスは中央で空中に浮かんで両手を広げていた。
「時は満ちた…終わりだ、『メテオ』」
その声と共に、無数の隕石が勢いよく三人に向かって降り注ぐ。
セフィロスの放つ災厄の魔法に、誰も止める術もなく呑み込まれようとした。
「『リフレガ』!!」
だが、一つの声と共に三人の周りに大きな魔法の障壁が現れる。
「「「え…?」」」
突然の事に何が起こったのか分からず、三人は障壁に守られながら茫然とする。
やがて隕石の攻撃が終わり視界が晴れると、セフィロスに向かって黒い何かが飛んだ。
「おらぁ!!」
「ぐっ…!?」
大技を使った事により隙の出来たセフィロスに向かって、蹴りを入れ吹き飛ばす。
飛ばされながらもセフィロスは空間移動しようとすると、身体に炎の鎖が巻き付き地面へと引き寄せられる。
「なっ…!?」
「『火之鎖刈突』!!」
セフィロスを引き寄せるなり、何者かが炎の一突きを見舞わせる。
これらの乱入者に三人が茫然とする中、アクアの隣に見知った人物が近づいた。
「大丈夫か、アクア!?」
「テラっ!!」
振り返ると、そこにはキーブレードを持ったテラがレイアと一緒に駆け付けてくれる。
「よぉ、無事か?」
「お前は…!?」
未だに蹲るウィドの傍に、先程セフィロスに蹴りを放ったクウが双翼を具現化しながらウィドに笑いかける。
「手を貸そう」
「助かります!!」
そして、セフィロスに大きな一撃を与えた無轟に、ゼロボロスも笑顔を作る。
増援が現れた光景に、セフィロスは何故か笑みを溢した。
「――どうやら、ここまでのようだな」
そう呟くなり、どう言う訳かセフィロスは武器を収めて7人から背を向ける。
そのまま渓谷の方に向かうセフィロスに、クウは訝しげな視線を送った。
「何だよ、逃げる気か?」
「私は試しただけだ。どちらにせよ、貴様らには私は倒せない。私を倒せるのは、奴だけだ…」
意味ありげな言葉に、全員眉を顰める。
だが次の瞬間、セフィロスは黒い羽根を散らす様にその場から消え去った。
あえて突っ込まずに二人が隙を待っていると、急にセフィロスの姿が消えた。
「――後ろだっ!!」
ゼロボロスが叫ぶと同時に、自分の翼を広げる。
同じくウィドも振り返りつつ剣を構えると、背後にセフィロスが現れて二人纏めて真上に掬うように刀を振るった。
「「ぐぅ…!?」」
どうにか防御をするが、二人は少しだけ吹き飛ばされて体制を崩す。
その隙を狙って、さらにセフィロスが追撃をかける。
「消え失せろ」
そう言って手を上げると、巨大な炎の柱が立ち上る。
『ファイガウォール』を使い、セフィロスは二人纏めて炎へ呑み込もうとした。
「ゼロボロス、これを!」
「何?」
アクアの声に、セフィロスは炎の中で目を細める。
見ると、アクアがゼロボロスに向かって『エーテル』を投げている。
こうしてゼロボロスの魔力が回復すると、炎に引き寄せられる直前で拳を握り込んだ。
「新技、行くよ! 『迫撃零掌・轟』!!」
拳を地面に叩き込むと同時に、ゼロボロスとウィドの周りで岩が隆起する。
壁を作った事で炎へと引き寄せられるのを阻止すると、ウィドが剣を構えた。
「ゼロボロス、その力貰います!」
「分かった!!」
ゼロボロスが拳に白黒の炎を纏って頷くのを見て、ウィドは剣に冷気を漂わせる。
すると、二人はそのまま地面に剣と拳を打ち付けた。
「「『氷柱爆砕』!!」」
そうして二人の周りに、今度はセフィロスの炎に劣らない巨大な氷結の柱を隆起させる。
だが、少しもしない内に氷柱は罅割れを起こして崩れ去り巨大な氷の雨が降り注ぐ。
セフィロスは構わずに炎の柱を出して攻撃を相殺すると、戦ってから初めてその表情が変わった。
「私の魔法を打ち破るか…やるな、お前達」
若干目を細めて笑みを溢すセフィロスに対し、二人は何処か乾いた笑みを浮かべていた。
「ぶっつけ本番でしたが、成功しましたね…」
「これもアクアのおかげですね…」
ゼロボロスとウィドはそう話しながら、前にアクアから聞いた『ディメイションリンク』について思い出す。
これは本来、【繋がりの力】によって絆を結んだ人達の力を借りる事で、その人達の持つ力を使えるようになると言う代物だ。
まさしく絆を重んじるキーブレード使い特権の能力。キーブレードを使えない自分達でも何かの形で使えないだろうかと考えていると、アクアがもう一つの方法を教えてくれた。
それならば、他人と協力して技や魔法を出せばいい。自分達は共に旅する仲間なのだから、それぐらい出来るだろうと。
アクアのアドバイスに二人が感謝をしていると、セフィロスが動いた。
「だが、何時まで持つかな?」
刀を構えると同時に、セフィロスは空中へと飛び上がる。
攻撃の予備動作だと分かり、アクアは二人に向かって叫んだ。
「来るわ!?」
「舞え、『神速』」
そうして刀を一振りしただけで、幾つもの剣圧がウィドに飛んできた。
「くぅ…!?」
「見えまい」
すぐに剣を構えて剣圧を防御し終えると、セフィロスが目の前に現れる。
さらに上下に振られた刀も防御するが、重い一撃を喰ったのか後ろに地滑りを起こす。
それでもどうにかダメージを最小限で押えると、セフィロスが消えた。
「アクアっ!?」
現れる場所を察知したのか、ゼロボロスがアクアに向かって叫ぶ。
それと同時に、セフィロスがアクアの背後に現れて刀を振るう。
「『リフレク』!!」
すぐにアクアは、周りに魔法の障壁を展開させる。
セフィロスの一撃を防御すると、体制を立て直したウィドが動いた。
「『疾突』!!」
「くっ…!」
風を纏った素早い突きを、隙が出来たセフィロスに当てる。
そうしてセフィロスは吹き飛ばされるが、再び消えると上空へと現れた。
「逃がさないわ!! 『サンダガ』!!」
アクアが広範囲の雷の魔法を発動させるが、セフィロスは更に上空へ飛び上がる。
「約束の地へ…『獄門』」
そのまま範囲から逃れるなり、刀を構えて急降下してきた。
「「くっ!?」」
落下地点を避けようと、二人はそれぞれその場から後ろに跳躍する。
だが、セフィロスが地面に落下すると共に岩の隆起が周囲に現れ、距離を取った二人にまで届いた。
「きゃあぁ!?」
「ぐあぁ!?」
あまりの威力に、二人はそれぞれ悲鳴を上げて吹き飛ばされてしまう。
セフィロスが地面に刺さった刀を引き抜いていると、ある事に気づいた。
(おかしい…何故、あの男は攻撃しない?)
今まで二人と共に何かしらの攻撃していたゼロボロスが、攻撃して来ない。
セフィロスが不審に思って振り返ると、答えが分かった。
「『羅刹獄零脚』」
その言葉と共に、ゼロボロスの両足に白黒の炎が纏わりつく。
だが、先程見た炎よりも強い力を感じる。セフィロスはそれを感じつつ、ゼロボロスに話しかけた。
「二人は囮と言う事か?」
「囮と言う言い方は失礼ですよ。せめて時間稼ぎしてくれたと言ってください」
「それで、その炎を纏って何をする気だ?」
「そうですねぇ。あえて言うなら――」
そう言った直後、一瞬でセフィロスの目の前に現れた。
「スピードを格段に上昇させる事ぐらいですよ!! 『双月斬脚・零』!!」
もはやセフィロスでも捕えられない真空波を伴った連続蹴りを、ゼロボロスは力の限り浴びせた。
「うぁ…!?」
さすがのセフィロスも、これにはダメージを受けて吹き飛ばされる。
そうして体制を崩したセフィロスに、ゼロボロスはニヤリと笑いかけた。
「どうやら、この強化だけでもあなたには十分のようですね?」
「そのようだな…ならば、私も本気を出すまでだ」
そう言って手を上げると、セフィロスの全身に赤黒いオーラが包み込む。
そうしてすぐに刀を構えると、ゼロボロスが後ろを振り返って叫んだ。
「二人とも、ガードをっ!!」
とっさに叫ぶと、回復していたアクアとウィドがガードの構えを取る。
同時にセフィロスがすり抜けるように移動し、二人に向かって見えない斬撃が襲い掛かった。
「あうっ…!?」
「さっきよりも、強い…!!」
「まだだ」
強化した事によって、防御したにも関わらずさっきよりも腕が痺れていると、セフィロスが腕を振るう。
すると、二人の周りを無数の黒い球体が取り囲んだ。
「二度も喰らわないわ! 『リフレク』!!」
「『氷壁破』!!」
魔法の障壁と氷の壁を張る事で、迫ってきた『シャドウフレア』を防御する。
障壁は球体を弾き返し、氷の壁は相殺されて破片となって崩れていく。
そんな氷の壁に、アクアの脳裏に何かが閃いた。
「――使える」
「え?」
思わずウィドが聞き返すが、アクアはキーブレードの切先に光を溜めて上へと掲げた。
「光よ!」
キーブレードから光を放つと、氷の欠片が煌めく様に互いに反射しあう。
やがてその煌めきが幾つもの剣の形となると、セフィロスの周りを取り囲んだ。
「貫け! 『ブリリアントブレード』!!」
「くっ!」
バッと手を振るうと、意思を持ったように水晶の剣はセフィロスに襲い掛かる。
セフィロスはそれを刀で払うが、全てを払う事が出来ず剣の一つが翼を貫いた。
「ぐぅ!?」
「これはついで!! 『迫撃零掌』!!」
「がはっ!?」
更にゼロボロスが掌底を放ち、セフィロスに追撃をかける。
どうにかピンチを反撃に持っていくと、ゼロボロスはアクアを見た。
「もう僕とウィドがさっきやった技術を習得したんですか?」
「たまたまよ。それに…元々、そう言った事について教えたのは私でしょ?」
「そうでした。それよりも、注意してくださいよ?」
ゼロボロスが苦笑しながら、ある方向を指す。
見ると、ルキルを寝かせている近くの壁が丸く陥没している。
「あなた達、さっき跳ね返した魔法を危うくルキルに当てる所でしたから」
「「す、すみません…」」
さすがの二人も頭を下げて謝っていると、セフィロスが面白そうに口を歪めて笑い出した。
「ほう…その人形が大切か? ならば――」
そう言うなり、上空に高く飛び上がるセフィロス。
嫌な予感を感じ、アクアはゼロボロスに指示を出した。
「ゼロボロス!? 奴を止めて!!」
「言われなくても――!!」
ゼロボロスは飛び上がると、すぐにセフィロスの前へと躍り出る。
攻撃を中断させようと、高速で拳を出す。
「無駄だ」
だが、放った拳は刀で止められるなり、即座に弾き返される。
直後、僅かによろめいたゼロボロスに向かってセフィロスは高速で刀で次々と斬り付けた。
「ぐわあぁ!?」
「ゼロボロス!? 『ファイガ』!!」
「『空衝撃』!!」
アクアとウィドがセフィロスを引き離そうと、空中に大きな火球と衝撃波を飛ばす。
「ふん」
しかし、ゼロボロスを一気に斬り付けると同時に二人の攻撃も剣圧で相殺してしまう。
やがて急降下しながら、セフィロスは刀を構えた。
「消え去れ――『八刀一閃』」
そうして刀を振るうと、何とルキルに向かってここ一帯を両断する程の巨大な衝撃波を繰り出した。
「なっ…!!?」
これにはゼロボロスも目を見開くが、今の猛攻による痛みで思うように身体を動かせない。
地上にいるアクアも息を呑む中…ここで、ウィドが庇うようにルキルの前に出た。
「させない…!!」
「ウィド!!?」
居合抜きの構えを作って衝撃波を睨むウィドに、アクアが悲鳴に似た叫びを上げる。
そんな中、ウィドは頭上に迫る衝撃波を見ながら剣に力を込めた。
(私に、力を…!!)
まるで祈るようにして精神を研ぎ澄ませると、剣の柄と鞘を軽く鳴らして引き抜いた。
「『空衝撃――」
ここで通常よりも、更に力を纏わせる。
「――牙煉』っ!!!」
そうして剣を振るうと、先程出した物よりも大きな衝撃波を繰り出す。
ウィドの放った衝撃波は一直線にセフィロスの放った衝撃波とぶつかり合い、大きく弾けて相殺される。
間一髪でルキルを守れた事にウィドが息を切らしながら笑みを浮かべた。
「ほう? 私の攻撃を相殺するとは…面白い」
直後、ウィドの背後から声が響く。
すぐに振り返るが、その時にはセフィロスが刀で横に薙ぎ払うように攻撃してきた。
「ぐぅ!?」
「ウィド!?」
ウィドの悲鳴に、ゼロボロスの回復をしていたアクアが気づく。
見るとウィドは遠くに倒れ、セフィロスは中央で空中に浮かんで両手を広げていた。
「時は満ちた…終わりだ、『メテオ』」
その声と共に、無数の隕石が勢いよく三人に向かって降り注ぐ。
セフィロスの放つ災厄の魔法に、誰も止める術もなく呑み込まれようとした。
「『リフレガ』!!」
だが、一つの声と共に三人の周りに大きな魔法の障壁が現れる。
「「「え…?」」」
突然の事に何が起こったのか分からず、三人は障壁に守られながら茫然とする。
やがて隕石の攻撃が終わり視界が晴れると、セフィロスに向かって黒い何かが飛んだ。
「おらぁ!!」
「ぐっ…!?」
大技を使った事により隙の出来たセフィロスに向かって、蹴りを入れ吹き飛ばす。
飛ばされながらもセフィロスは空間移動しようとすると、身体に炎の鎖が巻き付き地面へと引き寄せられる。
「なっ…!?」
「『火之鎖刈突』!!」
セフィロスを引き寄せるなり、何者かが炎の一突きを見舞わせる。
これらの乱入者に三人が茫然とする中、アクアの隣に見知った人物が近づいた。
「大丈夫か、アクア!?」
「テラっ!!」
振り返ると、そこにはキーブレードを持ったテラがレイアと一緒に駆け付けてくれる。
「よぉ、無事か?」
「お前は…!?」
未だに蹲るウィドの傍に、先程セフィロスに蹴りを放ったクウが双翼を具現化しながらウィドに笑いかける。
「手を貸そう」
「助かります!!」
そして、セフィロスに大きな一撃を与えた無轟に、ゼロボロスも笑顔を作る。
増援が現れた光景に、セフィロスは何故か笑みを溢した。
「――どうやら、ここまでのようだな」
そう呟くなり、どう言う訳かセフィロスは武器を収めて7人から背を向ける。
そのまま渓谷の方に向かうセフィロスに、クウは訝しげな視線を送った。
「何だよ、逃げる気か?」
「私は試しただけだ。どちらにせよ、貴様らには私は倒せない。私を倒せるのは、奴だけだ…」
意味ありげな言葉に、全員眉を顰める。
だが次の瞬間、セフィロスは黒い羽根を散らす様にその場から消え去った。