Another the last chapter‐8
「消えた、か…」
セフィロスの気配が完全に消え、ゼロボロスは小さく呟く。
その言葉を合図に他の人達も武器を収める中、テラは心配そうにアクアを見た。
「アクア、怪我は?」
「少し、かな…大丈夫、すぐに治すわ」
「それなら、俺達の凄腕魔導師に任せとけよ。レイア、頼むぞ」
「もう、クウさん…そう言う事言わないでください…!」
クウに言われ、レイアは恥ずかしそうに顔を赤らめるものの、また杖を取り出して魔法を唱える。
そうして三人の傷を直そうとしていると、クウの腕をウィドが掴み出した。
「まさか、こんなに早くあなたに会えるとは思ってもみませんでした。さあ、今日こそは話して貰いましょうか?」
逃がさないと言った目つきで睨み、腕を掴む手に力を込める。
しかし、クウは軽く溜息を吐くなり、自分の腕を握っているウィドの手首を掴み上げて軽く捻り上げた。
「つぅ!?」
「その前に、怪我を治す方が先だ。これでもまだ軽めな方だぜ?」
「…くっ!」
何処か淡々と話すクウに、ウィドは悔しそうに顔を逸らす。
そんなウィドに、クウは目を逸らすと神妙な面付きを浮かべた。
「――俺だって、話したいとは思ってる。だから、もう少しだけ待ってくれ」
「本当に、話してくれるんですか…!?」
「あぁ、心の整理がつき次第な」
「心の整理って――!!」
無神経にも聞こえる言葉に、思わずウィドは手を払い除けて突っかかる。
その時、ウィドを引き止めるかの様に、何と無轟が腕を掴み上げて拘束した。
「何を…!?」
「どんな事情を持ってるか知らないが、そう焦るな。返って物事が遠ざかるだけだ」
「あなたには関係ありません!! それに姉さんの情報を持ってる人間が目の前にいるのに、遠ざかるなど――!!」
「クウも覚悟をそれなりに決めている。なのに、お前の焦りで覚悟を鈍らせている。今すべきことは、攻める事ではない。忍耐強く待つ事だ」
無轟の放つ一言一言がやけに重く感じ、ウィドは顔を俯かせる。
クウや無轟だけでなく周りの人達も黙って見ていると、やがてポツリと呟いた。
「……一緒に行動してる間に、姉さんの事教えなかったら斬ります」
「分かった…その間に、どうにか心の整理つけとく」
どうにか場が丸く収まり、無轟はようやくウィドの拘束を解く。
他の人達も肩の力を抜いていると、レイアがある方向を見て首を傾げた。
「あの、その人…リクさん、ですか?」
レイアの見る方向には、未だに眠るルキルが横たわっている。
彼女達はあの時ルキルに会っていないが、黒髪である事からリクとは別人だと思ったのだろう。テラが不思議そうにアクアに聞いた。
「髪が黒い…彼は一体?」
「あの…この子は――」
これまでの複雑な経緯を、アクアが説明しようとする。
その直後、辺りに不穏な空気が漂い7人はそれぞれ周りに目を向ける。
すると、闇や狭間と共にそれらに巣食う存在が姿を現した。
「「ハートレス!?」」
「「ノーバディ!?」」
クウとレイア、ウィドとゼロボロスがそれぞれ叫ぶと同時に、それらは一斉に襲い掛かる。
「みんな、避けて!!」
「くっ!?」
アクアの号令に全員は散り散りに動く中、ゼロボロスに向かって天使のようなノーバディが剣を振るってくる。
それをギリギリで避けていると、横からクウが蹴りを放ってノーバディを吹き飛ばした。
「よそ見すんなよ!」
「助かった!」
ゼロボロスがお礼を言うと、今度は梟型のノーバディが急降下で襲ってくる。
二人はそれを避けるなり、互いに背中を合わせた。
「さて…見事に分担されてしまったね」
背中を合わせながら少し先を見ると、アクア達が向こうで戦っている。それで手一杯になっているのか、自分達に気づく様子はない。
そんなゼロボロスに、クウは軽く拳を叩いて周りの敵を睨みつけた。
「だったら強行突破だ。行くぜ、ゼロ!」
「“ゼロ”?」
思わぬ言葉にゼロボロスが首を傾げると、クウは振り返ってニッと笑いかけた。
「【ゼロボロス】なんて、いちいち長ったらしいからな。不服だったか?」
「…いえ。では行きましょうか、クウ!!」
そうして拳を握るゼロボロスに、クウも構えを作り…二人同時に地を蹴った。
その頃、ソラ達はハートレスが襲い掛かる中で建設中通路を通っていた。
「『スパーク』!!」
「『エアリルスラム』!!」
向かってくるハートレス達に、ソラは光の結晶で身を守りつつ攻撃し、ヴェンは大きな敵を真上に飛ばし、最後に地面に叩きつけて他の敵を巻き込んで攻撃する。
ハートレスを蹴散らしながら前に進む二人の後ろで、フードを被って顔を隠したリクは殿を守る様に後ろで戦っていた。
「数が多すぎる…!! カイリ、平気か!?」
「私は平気。でも…」
ここで言葉を切ると、カイリは心配そうに隣を見る。
「何で…どうして…」
今にも消えそうな声でオパールはそう呟きながら、ずっと顔を俯かせている。
きっと昔の記憶が蘇ったのだろう。戦う意思すらもなく意気消沈しているオパールに、リクも声をかけきれず前に進む事に専念する。
やがて5人が城壁広場まで辿り着くと、聞き覚えのある声が上から降ってきた。
「ソラ!!」
見上げると、レオンがガンブレードを持って自分達の所まで飛び降りる。
そんなレオンに、ソラはすぐに疑問をぶつけた。
「レオン! なあ、これどうなってるんだ!?」
「分からん! 突然大量に現れたんだ!」
「レオーン!! 手が足りない、手伝って!!」
レオンが答えていると、ユフィの悲鳴が上から聞こえてくる。
見ると、先程レオンがいた場所でユフィがダスクやクリーパーと言った下位ノーバディに向かって手裏剣を投げている。
「ユフィ…きゃあ!?」
ユフィの声に反応したのか、オパールが顔を上げているとハートレスが魔法を放って攻撃してきた。
「「「「オパール!?」」」」
一人離れた場所に吹き飛ばされたオパールに、レオンだけでなく、ソラ、ヴェン、リクも声を上げる。
そうして倒れているオパールに、近くにいたハートレスが腕を振り上げてトドメを刺そうとする。
しかし、そのハートレスに一つの弾丸が飛んでくると、巻き込む様に爆発した。
「大丈夫か、オパール!!」
「シ、ド…?」
オパールが上半身を起こすと、大きな銃口の付いた機械を持ったシドが駆け寄ってくる。
それを茫然として見ていると、更に別の声が聞こえた。
「癒しの光よ! 『ケアルガ』!」
「エアリス…」
身体の傷が癒されるのを実感しながら、オパールは今度は崩れた城壁を見上げる。
そこには、エアリスが笑みを浮かべてこちらを見ている。
やがてオパールの傍にリクが駆け寄るなり、シドに頭を下げた。
「すまない、助かった」
「『助かった』だぁ? てめえ、俺の大事な姪を前に何してた!! しかもその服着て顔隠してるとは、何者だ――!!」
「ま、待って――!?」
怒りを露わにしながら、隠しているフードをシドが掴みかかる。
慌ててソラが止めに入ろうとするが、時既に遅くフードが外されて顔が露わになった。
「なっ!?」
「アンセム、だと…!?」
「誤解だよ!? この人は――!!」
驚愕の表情を浮かべるシドとレオンに、カイリが誤解を解こうと叫ぶ。
しかし、シドは聞くよりも前にリクの胸倉を掴み上げて思いっきり睨みつけた。
「おい、アンセム…いや、ゼアノートさんよ!! うちの姪に近づいて何するつもり――!!」
「止めなさいよ、バカ親父っ!!!」
その瞬間、怒鳴り声が辺りに響くなりシドの頬に拳が飛んできた。
「ごはぁ!?」
「オ、オパール…?」
殴られて吹き飛ばされるシドを視界に抑えつつ、リクは軽く息切れを起こしながら殴ったばかりの拳を構えるオパールを見る。
他の人達も固まっている中、オパールは軽く頭を振りしっかりとした目つきになってレオンとユフィを見た。
「二人も警戒を解いて。どんなになっても、リクは味方だから」
「リク!? え、嘘!? 何でゼアノートの姿になってるの!?」
「説明は後!! レオン、このハートレス何処から来てるんだ!?」
思わずうろたえるユフィに、ソラはレオンに質問する。
「分からない…だが、何処かに原因があるのは確かだ」
「何処かって何処っ!?」
その答えにソラが困惑していると、オパールは口元に手を当てて考えながらレオンに聞いた。
「レオン、住宅街は見てきたのよね?」
「あ、ああ」
「城には特に異変は無かった。ここからの道も…――だったら、残るは一つね!!」
消去法で一つ一つの考えを打ち消していくと、オパールは一つの答えを導き出す。
その答えがエアリスにも分かったのか、笑みを浮かべて奥の方を指した。
「あの渓谷、だね!」
こうして次に進むべき道を見出すと、ソラはレオン達を振り返った。
「ハートレスは俺達が何とかするから、レオン達は町を頼むな!」
「行こう、ソラ!」
ヴェンが促すと、ソラは一つ頷いて一緒に渓谷の方へと走り出す。
二人が先に行くと、オパールも完全に吹っ切れたのか負けじとリクとカイリに振り返って叫んだ。
「あたし達も行くわよ! シド、レオン、ユフィ、エアリス! そっちはお願い!!」
「お、おいオパール!?」
「お前まで行く必要はない!! 戻って来い!!」
オパールも渓谷へ向かうなり、レオンとシドが引き留めようとする。
そんな二人の前を、何とリクが立ち塞がった。
「待ってくれ!!」
「お前、何を――!!」
「彼女は俺が守ります! だから、一緒に行かせてやってください!」
思わぬリクの言葉に、二人だけでなく女性三人も目を見開く。
そんな中、シドは何かを言おうとしたがレオンに腕を掴まれる。
そのままシドを押さえると、レオンは静かに目の前のリクを見た。
「…リク、だったな」
「ああ」
真剣な眼差しで頷き返すリクを、レオンは何かを探るようにじっと見つめる。
やがて軽く息を吐くと、顔を逸らして小さく笑みを浮かべた。
「オパールを頼む。あいつは昔から何かと首を突っ込むから危なっかしくてな…ユフィ、行くぞ!」
「分かった! シド、行くよ!!」
「離せ、二人ともぉ!! 俺は信用した訳じゃねーからなぁ!!!」
レオンとユフィに腕を掴まれて引き摺られながらも、シドはリクに怒りながら叫ぶ。
こうして三人が離れていく中、エアリスは笑顔を浮かべてリクに向かって叫んだ。
「オパールの事、お願い!」
「もちろんです!」
エアリスにそう返すと、リクはカイリと一緒に渓谷の方へと走り出した。
それを最後まで見送っていると、不意にエアリスの脳裏に本当のリクの容姿が思い浮かぶ。
それと一緒に、つい先程出会った少年が頭に過ぎった。
「銀髪に、水色の目…あの女の子と一緒…?」
「そろそろ、我も覚悟を決める時かの…」
足元まである銀髪の少女は、渓谷の高い場所から町の至る所にいるハートレスやノーバディを見て呟く。
それらから背を向けて歩いていると、視界の端にある物を捕らえた。
「何じゃ、あの空間の裂け目は?」
少し小さめの空間の裂け目を見つけるなり、少女は迷う事なく入り込む。
中は白く透明な空間で、周りを見回していると一人の少年が倒れていた。
「あ奴は…?」
少女は近づくなり、倒れている少年を観察する。
灰色の髪に茶色のニット帽。そこまで観察していると、ズボンのポケットから星型のキーホルダーが顔を覗かせていた。
「星型の…いや、パオプの実か?」
すぐに少女は少年のポケットからキーホルダーを取り出すと、ある事に気付いた。
「このキーホルダー…あの子の力を感じるの。記憶の力で本来の形を変えておるのか?」
脳裏に金髪の少女を思い浮かべながら、少女はキーホルダーに指先を触れるように置く。
直後、キーホルダーが輝き出して形を変えた。
「ざっとこんなものじゃな」
少女は何処か得意げに胸を張ると、本来の姿に戻した物を見た。
「これは…貝殻のペンダント? よく見ればロケットになっておるの」
キーホルダーは不思議な色をした貝殻が二枚合わさっており、弄ってみると開く仕組みになっている。
さっそく少女は蓋の部分を開くなり、中を覗いた。
「――っ!!?」
その瞬間、少女の目が驚愕で見開かれた。
「まさか…こやつは…っ!!?」
セフィロスの気配が完全に消え、ゼロボロスは小さく呟く。
その言葉を合図に他の人達も武器を収める中、テラは心配そうにアクアを見た。
「アクア、怪我は?」
「少し、かな…大丈夫、すぐに治すわ」
「それなら、俺達の凄腕魔導師に任せとけよ。レイア、頼むぞ」
「もう、クウさん…そう言う事言わないでください…!」
クウに言われ、レイアは恥ずかしそうに顔を赤らめるものの、また杖を取り出して魔法を唱える。
そうして三人の傷を直そうとしていると、クウの腕をウィドが掴み出した。
「まさか、こんなに早くあなたに会えるとは思ってもみませんでした。さあ、今日こそは話して貰いましょうか?」
逃がさないと言った目つきで睨み、腕を掴む手に力を込める。
しかし、クウは軽く溜息を吐くなり、自分の腕を握っているウィドの手首を掴み上げて軽く捻り上げた。
「つぅ!?」
「その前に、怪我を治す方が先だ。これでもまだ軽めな方だぜ?」
「…くっ!」
何処か淡々と話すクウに、ウィドは悔しそうに顔を逸らす。
そんなウィドに、クウは目を逸らすと神妙な面付きを浮かべた。
「――俺だって、話したいとは思ってる。だから、もう少しだけ待ってくれ」
「本当に、話してくれるんですか…!?」
「あぁ、心の整理がつき次第な」
「心の整理って――!!」
無神経にも聞こえる言葉に、思わずウィドは手を払い除けて突っかかる。
その時、ウィドを引き止めるかの様に、何と無轟が腕を掴み上げて拘束した。
「何を…!?」
「どんな事情を持ってるか知らないが、そう焦るな。返って物事が遠ざかるだけだ」
「あなたには関係ありません!! それに姉さんの情報を持ってる人間が目の前にいるのに、遠ざかるなど――!!」
「クウも覚悟をそれなりに決めている。なのに、お前の焦りで覚悟を鈍らせている。今すべきことは、攻める事ではない。忍耐強く待つ事だ」
無轟の放つ一言一言がやけに重く感じ、ウィドは顔を俯かせる。
クウや無轟だけでなく周りの人達も黙って見ていると、やがてポツリと呟いた。
「……一緒に行動してる間に、姉さんの事教えなかったら斬ります」
「分かった…その間に、どうにか心の整理つけとく」
どうにか場が丸く収まり、無轟はようやくウィドの拘束を解く。
他の人達も肩の力を抜いていると、レイアがある方向を見て首を傾げた。
「あの、その人…リクさん、ですか?」
レイアの見る方向には、未だに眠るルキルが横たわっている。
彼女達はあの時ルキルに会っていないが、黒髪である事からリクとは別人だと思ったのだろう。テラが不思議そうにアクアに聞いた。
「髪が黒い…彼は一体?」
「あの…この子は――」
これまでの複雑な経緯を、アクアが説明しようとする。
その直後、辺りに不穏な空気が漂い7人はそれぞれ周りに目を向ける。
すると、闇や狭間と共にそれらに巣食う存在が姿を現した。
「「ハートレス!?」」
「「ノーバディ!?」」
クウとレイア、ウィドとゼロボロスがそれぞれ叫ぶと同時に、それらは一斉に襲い掛かる。
「みんな、避けて!!」
「くっ!?」
アクアの号令に全員は散り散りに動く中、ゼロボロスに向かって天使のようなノーバディが剣を振るってくる。
それをギリギリで避けていると、横からクウが蹴りを放ってノーバディを吹き飛ばした。
「よそ見すんなよ!」
「助かった!」
ゼロボロスがお礼を言うと、今度は梟型のノーバディが急降下で襲ってくる。
二人はそれを避けるなり、互いに背中を合わせた。
「さて…見事に分担されてしまったね」
背中を合わせながら少し先を見ると、アクア達が向こうで戦っている。それで手一杯になっているのか、自分達に気づく様子はない。
そんなゼロボロスに、クウは軽く拳を叩いて周りの敵を睨みつけた。
「だったら強行突破だ。行くぜ、ゼロ!」
「“ゼロ”?」
思わぬ言葉にゼロボロスが首を傾げると、クウは振り返ってニッと笑いかけた。
「【ゼロボロス】なんて、いちいち長ったらしいからな。不服だったか?」
「…いえ。では行きましょうか、クウ!!」
そうして拳を握るゼロボロスに、クウも構えを作り…二人同時に地を蹴った。
その頃、ソラ達はハートレスが襲い掛かる中で建設中通路を通っていた。
「『スパーク』!!」
「『エアリルスラム』!!」
向かってくるハートレス達に、ソラは光の結晶で身を守りつつ攻撃し、ヴェンは大きな敵を真上に飛ばし、最後に地面に叩きつけて他の敵を巻き込んで攻撃する。
ハートレスを蹴散らしながら前に進む二人の後ろで、フードを被って顔を隠したリクは殿を守る様に後ろで戦っていた。
「数が多すぎる…!! カイリ、平気か!?」
「私は平気。でも…」
ここで言葉を切ると、カイリは心配そうに隣を見る。
「何で…どうして…」
今にも消えそうな声でオパールはそう呟きながら、ずっと顔を俯かせている。
きっと昔の記憶が蘇ったのだろう。戦う意思すらもなく意気消沈しているオパールに、リクも声をかけきれず前に進む事に専念する。
やがて5人が城壁広場まで辿り着くと、聞き覚えのある声が上から降ってきた。
「ソラ!!」
見上げると、レオンがガンブレードを持って自分達の所まで飛び降りる。
そんなレオンに、ソラはすぐに疑問をぶつけた。
「レオン! なあ、これどうなってるんだ!?」
「分からん! 突然大量に現れたんだ!」
「レオーン!! 手が足りない、手伝って!!」
レオンが答えていると、ユフィの悲鳴が上から聞こえてくる。
見ると、先程レオンがいた場所でユフィがダスクやクリーパーと言った下位ノーバディに向かって手裏剣を投げている。
「ユフィ…きゃあ!?」
ユフィの声に反応したのか、オパールが顔を上げているとハートレスが魔法を放って攻撃してきた。
「「「「オパール!?」」」」
一人離れた場所に吹き飛ばされたオパールに、レオンだけでなく、ソラ、ヴェン、リクも声を上げる。
そうして倒れているオパールに、近くにいたハートレスが腕を振り上げてトドメを刺そうとする。
しかし、そのハートレスに一つの弾丸が飛んでくると、巻き込む様に爆発した。
「大丈夫か、オパール!!」
「シ、ド…?」
オパールが上半身を起こすと、大きな銃口の付いた機械を持ったシドが駆け寄ってくる。
それを茫然として見ていると、更に別の声が聞こえた。
「癒しの光よ! 『ケアルガ』!」
「エアリス…」
身体の傷が癒されるのを実感しながら、オパールは今度は崩れた城壁を見上げる。
そこには、エアリスが笑みを浮かべてこちらを見ている。
やがてオパールの傍にリクが駆け寄るなり、シドに頭を下げた。
「すまない、助かった」
「『助かった』だぁ? てめえ、俺の大事な姪を前に何してた!! しかもその服着て顔隠してるとは、何者だ――!!」
「ま、待って――!?」
怒りを露わにしながら、隠しているフードをシドが掴みかかる。
慌ててソラが止めに入ろうとするが、時既に遅くフードが外されて顔が露わになった。
「なっ!?」
「アンセム、だと…!?」
「誤解だよ!? この人は――!!」
驚愕の表情を浮かべるシドとレオンに、カイリが誤解を解こうと叫ぶ。
しかし、シドは聞くよりも前にリクの胸倉を掴み上げて思いっきり睨みつけた。
「おい、アンセム…いや、ゼアノートさんよ!! うちの姪に近づいて何するつもり――!!」
「止めなさいよ、バカ親父っ!!!」
その瞬間、怒鳴り声が辺りに響くなりシドの頬に拳が飛んできた。
「ごはぁ!?」
「オ、オパール…?」
殴られて吹き飛ばされるシドを視界に抑えつつ、リクは軽く息切れを起こしながら殴ったばかりの拳を構えるオパールを見る。
他の人達も固まっている中、オパールは軽く頭を振りしっかりとした目つきになってレオンとユフィを見た。
「二人も警戒を解いて。どんなになっても、リクは味方だから」
「リク!? え、嘘!? 何でゼアノートの姿になってるの!?」
「説明は後!! レオン、このハートレス何処から来てるんだ!?」
思わずうろたえるユフィに、ソラはレオンに質問する。
「分からない…だが、何処かに原因があるのは確かだ」
「何処かって何処っ!?」
その答えにソラが困惑していると、オパールは口元に手を当てて考えながらレオンに聞いた。
「レオン、住宅街は見てきたのよね?」
「あ、ああ」
「城には特に異変は無かった。ここからの道も…――だったら、残るは一つね!!」
消去法で一つ一つの考えを打ち消していくと、オパールは一つの答えを導き出す。
その答えがエアリスにも分かったのか、笑みを浮かべて奥の方を指した。
「あの渓谷、だね!」
こうして次に進むべき道を見出すと、ソラはレオン達を振り返った。
「ハートレスは俺達が何とかするから、レオン達は町を頼むな!」
「行こう、ソラ!」
ヴェンが促すと、ソラは一つ頷いて一緒に渓谷の方へと走り出す。
二人が先に行くと、オパールも完全に吹っ切れたのか負けじとリクとカイリに振り返って叫んだ。
「あたし達も行くわよ! シド、レオン、ユフィ、エアリス! そっちはお願い!!」
「お、おいオパール!?」
「お前まで行く必要はない!! 戻って来い!!」
オパールも渓谷へ向かうなり、レオンとシドが引き留めようとする。
そんな二人の前を、何とリクが立ち塞がった。
「待ってくれ!!」
「お前、何を――!!」
「彼女は俺が守ります! だから、一緒に行かせてやってください!」
思わぬリクの言葉に、二人だけでなく女性三人も目を見開く。
そんな中、シドは何かを言おうとしたがレオンに腕を掴まれる。
そのままシドを押さえると、レオンは静かに目の前のリクを見た。
「…リク、だったな」
「ああ」
真剣な眼差しで頷き返すリクを、レオンは何かを探るようにじっと見つめる。
やがて軽く息を吐くと、顔を逸らして小さく笑みを浮かべた。
「オパールを頼む。あいつは昔から何かと首を突っ込むから危なっかしくてな…ユフィ、行くぞ!」
「分かった! シド、行くよ!!」
「離せ、二人ともぉ!! 俺は信用した訳じゃねーからなぁ!!!」
レオンとユフィに腕を掴まれて引き摺られながらも、シドはリクに怒りながら叫ぶ。
こうして三人が離れていく中、エアリスは笑顔を浮かべてリクに向かって叫んだ。
「オパールの事、お願い!」
「もちろんです!」
エアリスにそう返すと、リクはカイリと一緒に渓谷の方へと走り出した。
それを最後まで見送っていると、不意にエアリスの脳裏に本当のリクの容姿が思い浮かぶ。
それと一緒に、つい先程出会った少年が頭に過ぎった。
「銀髪に、水色の目…あの女の子と一緒…?」
「そろそろ、我も覚悟を決める時かの…」
足元まである銀髪の少女は、渓谷の高い場所から町の至る所にいるハートレスやノーバディを見て呟く。
それらから背を向けて歩いていると、視界の端にある物を捕らえた。
「何じゃ、あの空間の裂け目は?」
少し小さめの空間の裂け目を見つけるなり、少女は迷う事なく入り込む。
中は白く透明な空間で、周りを見回していると一人の少年が倒れていた。
「あ奴は…?」
少女は近づくなり、倒れている少年を観察する。
灰色の髪に茶色のニット帽。そこまで観察していると、ズボンのポケットから星型のキーホルダーが顔を覗かせていた。
「星型の…いや、パオプの実か?」
すぐに少女は少年のポケットからキーホルダーを取り出すと、ある事に気付いた。
「このキーホルダー…あの子の力を感じるの。記憶の力で本来の形を変えておるのか?」
脳裏に金髪の少女を思い浮かべながら、少女はキーホルダーに指先を触れるように置く。
直後、キーホルダーが輝き出して形を変えた。
「ざっとこんなものじゃな」
少女は何処か得意げに胸を張ると、本来の姿に戻した物を見た。
「これは…貝殻のペンダント? よく見ればロケットになっておるの」
キーホルダーは不思議な色をした貝殻が二枚合わさっており、弄ってみると開く仕組みになっている。
さっそく少女は蓋の部分を開くなり、中を覗いた。
「――っ!!?」
その瞬間、少女の目が驚愕で見開かれた。
「まさか…こやつは…っ!!?」