Another the last chapter‐16
その後、全員は狭間の回廊を無言で歩き続ける。
そんな彼らの空気は、何処か重苦しい。
「え、えーと…随分歩いてるけど、出口って何処にあるのかしらね?」
「さあな」
「とにかく、歩くしかないだろう」
どうにかオパールが話題を振るが、リクと無轟によって一蹴されてしまう。
即座に会話が終了し、オパールは困ったように溜息を吐いた。
「もう…何とかならないの、この空気…」
「そう簡単にどうにかなれば苦労しませんよ。クウはともかく、ウィドはもう僕らを信用していない。何を話した所で、聞き入れる耳など持ってないでしょう」
たまたま隣にいたゼロボロスが答えると、前を進むウィドに目を向ける。
全員から離れるように前を歩いており、僅かだが闇らしき感情が滲み出ている。
完全に自分達を信用していない彼に、カイリも悲しそうにウィドを見た。
「…それだけ、スピカさんの事を思ってたんだね」
アクアやゼロボロスのように一緒にいた訳ではないが、今のウィドの様子から姉であるスピカの事をどれだけ思っていたかが伝わってくる。
「一応、ウィドを説得出来る人がいるにはいるんだけど…こんな状況でも目覚めないとなると、何かあったとしか思えない」
ゼロボロスは険しい表情を浮かべるなり、少し離れた所で歩いている無轟に背負われているルキルを見る。
あれだけの事があったのに今も尚眠り続けるルキルに、会話が聞こえたのかソラが輪に入ってきた。
「そう言えば、ルキルってどうして髪が黒くなったんだ? リクと同じ銀色の髪だったよな?」
「分からないんだ。目を離した隙に、倒れたっきり目覚めなくて…」
「あいつがいれば、この状況もどうにか出来そうなんだな…」
首を横に振ってゼロボロスが言うと、リクも何処か感傷気にルキルを見る。
しかし、自分達がどうしようと状況は変わらない。そう思いながら、ゼロボロスは前を見据えた。
「とにかく、早くここから出ないとね…何時までも長居出来ないのも事実だし」
「どうして?」
ソラが問い返すと、ゼロボロスは周りを見回しながら説明した。
「この狭間の回廊は、『闇の回廊』や『異空の回廊』と違って不安定なんだ。それゆえ、何処に道があるか分からないから逃げるには適しているんだけど…長時間生身の状態でいれば闇に呑まれてしまう」
「ちょ!? それって、危険じゃない!?」
説明を終えるなり、オパールが顔色を変えて叫ぶ。
この道の危険性を知らされるなり、黙って話を聞いていたテラも神妙な面付きを浮かべる。
「俺達は鎧を纏えばどうにかなる。クウとレイアも良いとして、他は危険だな」
「まあ、そうですね。だからこそ、早くここから出なければ」
「――その必要はないですよ」
ゼロボロスが結論付けた直後、突然声が響き渡る。
急いで全員が振り返ると、そこには一人の人物が立っている。
黒い十字架が入った白いコートに長ズボン、顔は白い布で巻かれており、その間からは黒い髪と金色の目が覗いている。
この男性の姿に、一部の人達が反応した。
「お前、あの時のっ!!」
「何時の間に!?」
前に会った事のあるソラだけでなく、テラも歯を噛み締めながらキーブレードを取りだす。
二人だけでなくヴェンやリク、クウも敵意を露わにしていると、男性はやれやれと言った風に手を頭に置いた。
「酷い物ですね…折角、“彼女”と再会させてあげたと言うのに」
「なに…!?」
男性が放った“彼女”と言う単語に、ウィドが大きく反応を見せる。
ここでクウも何かに気づいたのか、怒りを露わにして男性に怒鳴りつけた。
「まさか、てめえかぁ!! スピカをあんな目に遭わせたのはっ!!!」
クウが睨みつけていると、男性は少しだけ笑いながら口を開いた。
「…そうだと言ったら?」
この言葉にウィドは剣を握り締め、クウも拳に力を込めた。
「貴様、だけは…!!」
「てめえ、だけは…!!」
湧き上がる怒りを力に変え、二人は元凶を睨みつける。
鋭い眼光を浴びても、男性は布越しでも表情を変えてないのが分かる。これが更に二人の癪に障り、同時に地を蹴った。
「「許さねぇ(許しません)っ!!!」」
「二人とも!?」
ウィドはもちろんの事、レイアをおぶったまま突撃するクウにアクアが叫ぶ。
そのまま攻撃しようとする二人に、男性は何処か冷静に呟いた。
「『リフレクトウォール』」
直後、男性を包むように魔法の障壁が張られる。
それでも冷静さを欠いた二人は剣と拳をぶつけて攻撃をすると、障壁によって倍に攻撃を反射されてその身に衝撃が襲い掛かった。
「「がぁ!?」」
「っ…!?」
力任せに攻撃した為、二人は高く飛ばされる。
その際に、クウの背中に背負われていたレイアまでもが離れるように空中に飛ばされる。
「なっ!?」
「レイア!?」
空中に浮いたレイアに、オパールとカイリが悲鳴を上げる。
ノーバディとは言え、二人と違い未だに体調が万全でない。そんな状態で地面に激突すれば、ただでは済まない。
成す術もなく落下するレイアだが、どうにかリクが両手で抱き抱えるようにキャッチした。
「無事か?」
「ハ、ハイ…」
「どうなってるの!?」
リクの腕の中でレイアが力なく頷く中、アクアは男性の使った魔法に目を瞠る。
『リフレガ』の魔法でも、あんな風に倍に攻撃を跳ね返したりは出来ない。何よりも、うっすらとだが未だに魔法の効果が続いているのが分かる。
普通に考えれば今みたいに考えも無しに攻撃するのは危険だ。だが、二人に続いて動く人物がいた。
「それが…何だって言うのよ!?」
癇癪に似た叫びを上げながら、オパールがナイフを引き抜く。
明らかに怒りで我を失っており、慌ててテラが腕を掴んで押さえつけた。
「待て、オパール!?」
「放して!! あいつの話が本当なら…あのハートレス製造機を設置したのもこいつって事になるんだからぁ!!」
故郷を闇に陥れようとした人物を前にじっとするのが嫌なのか、必死でテラの拘束を解こうとするオパール。
そうしていると、リクも険しい表情を浮かべてカイリにレイアを差し出した。
「カイリ、レイアを連れて離れてろ」
「リク…?」
「俺も…あいつには、聞きたい事が山ほどあるんだ…!! リリスの事、全て答えて貰うぞ、エンっ!!!」
男性―――エンの名を叫びながら、リクはキーブレードを取り出す。
名前を知っている事にその場にいる全員が驚く中、エンは何処か納得したように布越しから微かに笑みを浮かべた。
「――なるほど、リリスから聞いた訳ですか」
「やっぱり、お前が…っ!!」
リリィをリリスに変えさせたのがエンの仕業だと確信し、リクも怒りを露わにさせる。
そうしてさまざまな人達がエンに怒りや憎しみをぶつける中、ゼロボロスは冷静に拳を握りしめた。
「どうやら、彼も敵の一人ですか」
「ああ…出来れば、会いたくはなかったがな」
「そうですね…彼からは途方もない強さが滲み出ているのが伝わります」
神妙な面付きで無轟が頷くと、アクアもキーブレードを握る手に汗がじんわりと浮かぶ。
しかし、アクアの言葉に無轟は顔を俯かせて呟いた。
「…そう言う意味ではない」
「え?」
思わずアクアが顔を向けると、何故か無轟はアクアに背負っていたルキルを押し付けた。
「あ、あの…!?」
「彼を頼む。さすがに背負ったままでは辛い」
何処か一方的に言うなり、無轟は刀を取り出す。
そして、エンに向かって駆け出す物だからゼロボロスは目を見開いた。
「無轟!?」
「私達も負けてられないわ…カイリ、彼をお願い!! みんな、行くわよ!!」
「ああっ!!」
すぐにアクアはカイリにルキルを任せると、全員に向かって叫ぶ。
それにヴェンが答えると共に、彼との戦いが始まった…。
そんな彼らの空気は、何処か重苦しい。
「え、えーと…随分歩いてるけど、出口って何処にあるのかしらね?」
「さあな」
「とにかく、歩くしかないだろう」
どうにかオパールが話題を振るが、リクと無轟によって一蹴されてしまう。
即座に会話が終了し、オパールは困ったように溜息を吐いた。
「もう…何とかならないの、この空気…」
「そう簡単にどうにかなれば苦労しませんよ。クウはともかく、ウィドはもう僕らを信用していない。何を話した所で、聞き入れる耳など持ってないでしょう」
たまたま隣にいたゼロボロスが答えると、前を進むウィドに目を向ける。
全員から離れるように前を歩いており、僅かだが闇らしき感情が滲み出ている。
完全に自分達を信用していない彼に、カイリも悲しそうにウィドを見た。
「…それだけ、スピカさんの事を思ってたんだね」
アクアやゼロボロスのように一緒にいた訳ではないが、今のウィドの様子から姉であるスピカの事をどれだけ思っていたかが伝わってくる。
「一応、ウィドを説得出来る人がいるにはいるんだけど…こんな状況でも目覚めないとなると、何かあったとしか思えない」
ゼロボロスは険しい表情を浮かべるなり、少し離れた所で歩いている無轟に背負われているルキルを見る。
あれだけの事があったのに今も尚眠り続けるルキルに、会話が聞こえたのかソラが輪に入ってきた。
「そう言えば、ルキルってどうして髪が黒くなったんだ? リクと同じ銀色の髪だったよな?」
「分からないんだ。目を離した隙に、倒れたっきり目覚めなくて…」
「あいつがいれば、この状況もどうにか出来そうなんだな…」
首を横に振ってゼロボロスが言うと、リクも何処か感傷気にルキルを見る。
しかし、自分達がどうしようと状況は変わらない。そう思いながら、ゼロボロスは前を見据えた。
「とにかく、早くここから出ないとね…何時までも長居出来ないのも事実だし」
「どうして?」
ソラが問い返すと、ゼロボロスは周りを見回しながら説明した。
「この狭間の回廊は、『闇の回廊』や『異空の回廊』と違って不安定なんだ。それゆえ、何処に道があるか分からないから逃げるには適しているんだけど…長時間生身の状態でいれば闇に呑まれてしまう」
「ちょ!? それって、危険じゃない!?」
説明を終えるなり、オパールが顔色を変えて叫ぶ。
この道の危険性を知らされるなり、黙って話を聞いていたテラも神妙な面付きを浮かべる。
「俺達は鎧を纏えばどうにかなる。クウとレイアも良いとして、他は危険だな」
「まあ、そうですね。だからこそ、早くここから出なければ」
「――その必要はないですよ」
ゼロボロスが結論付けた直後、突然声が響き渡る。
急いで全員が振り返ると、そこには一人の人物が立っている。
黒い十字架が入った白いコートに長ズボン、顔は白い布で巻かれており、その間からは黒い髪と金色の目が覗いている。
この男性の姿に、一部の人達が反応した。
「お前、あの時のっ!!」
「何時の間に!?」
前に会った事のあるソラだけでなく、テラも歯を噛み締めながらキーブレードを取りだす。
二人だけでなくヴェンやリク、クウも敵意を露わにしていると、男性はやれやれと言った風に手を頭に置いた。
「酷い物ですね…折角、“彼女”と再会させてあげたと言うのに」
「なに…!?」
男性が放った“彼女”と言う単語に、ウィドが大きく反応を見せる。
ここでクウも何かに気づいたのか、怒りを露わにして男性に怒鳴りつけた。
「まさか、てめえかぁ!! スピカをあんな目に遭わせたのはっ!!!」
クウが睨みつけていると、男性は少しだけ笑いながら口を開いた。
「…そうだと言ったら?」
この言葉にウィドは剣を握り締め、クウも拳に力を込めた。
「貴様、だけは…!!」
「てめえ、だけは…!!」
湧き上がる怒りを力に変え、二人は元凶を睨みつける。
鋭い眼光を浴びても、男性は布越しでも表情を変えてないのが分かる。これが更に二人の癪に障り、同時に地を蹴った。
「「許さねぇ(許しません)っ!!!」」
「二人とも!?」
ウィドはもちろんの事、レイアをおぶったまま突撃するクウにアクアが叫ぶ。
そのまま攻撃しようとする二人に、男性は何処か冷静に呟いた。
「『リフレクトウォール』」
直後、男性を包むように魔法の障壁が張られる。
それでも冷静さを欠いた二人は剣と拳をぶつけて攻撃をすると、障壁によって倍に攻撃を反射されてその身に衝撃が襲い掛かった。
「「がぁ!?」」
「っ…!?」
力任せに攻撃した為、二人は高く飛ばされる。
その際に、クウの背中に背負われていたレイアまでもが離れるように空中に飛ばされる。
「なっ!?」
「レイア!?」
空中に浮いたレイアに、オパールとカイリが悲鳴を上げる。
ノーバディとは言え、二人と違い未だに体調が万全でない。そんな状態で地面に激突すれば、ただでは済まない。
成す術もなく落下するレイアだが、どうにかリクが両手で抱き抱えるようにキャッチした。
「無事か?」
「ハ、ハイ…」
「どうなってるの!?」
リクの腕の中でレイアが力なく頷く中、アクアは男性の使った魔法に目を瞠る。
『リフレガ』の魔法でも、あんな風に倍に攻撃を跳ね返したりは出来ない。何よりも、うっすらとだが未だに魔法の効果が続いているのが分かる。
普通に考えれば今みたいに考えも無しに攻撃するのは危険だ。だが、二人に続いて動く人物がいた。
「それが…何だって言うのよ!?」
癇癪に似た叫びを上げながら、オパールがナイフを引き抜く。
明らかに怒りで我を失っており、慌ててテラが腕を掴んで押さえつけた。
「待て、オパール!?」
「放して!! あいつの話が本当なら…あのハートレス製造機を設置したのもこいつって事になるんだからぁ!!」
故郷を闇に陥れようとした人物を前にじっとするのが嫌なのか、必死でテラの拘束を解こうとするオパール。
そうしていると、リクも険しい表情を浮かべてカイリにレイアを差し出した。
「カイリ、レイアを連れて離れてろ」
「リク…?」
「俺も…あいつには、聞きたい事が山ほどあるんだ…!! リリスの事、全て答えて貰うぞ、エンっ!!!」
男性―――エンの名を叫びながら、リクはキーブレードを取り出す。
名前を知っている事にその場にいる全員が驚く中、エンは何処か納得したように布越しから微かに笑みを浮かべた。
「――なるほど、リリスから聞いた訳ですか」
「やっぱり、お前が…っ!!」
リリィをリリスに変えさせたのがエンの仕業だと確信し、リクも怒りを露わにさせる。
そうしてさまざまな人達がエンに怒りや憎しみをぶつける中、ゼロボロスは冷静に拳を握りしめた。
「どうやら、彼も敵の一人ですか」
「ああ…出来れば、会いたくはなかったがな」
「そうですね…彼からは途方もない強さが滲み出ているのが伝わります」
神妙な面付きで無轟が頷くと、アクアもキーブレードを握る手に汗がじんわりと浮かぶ。
しかし、アクアの言葉に無轟は顔を俯かせて呟いた。
「…そう言う意味ではない」
「え?」
思わずアクアが顔を向けると、何故か無轟はアクアに背負っていたルキルを押し付けた。
「あ、あの…!?」
「彼を頼む。さすがに背負ったままでは辛い」
何処か一方的に言うなり、無轟は刀を取り出す。
そして、エンに向かって駆け出す物だからゼロボロスは目を見開いた。
「無轟!?」
「私達も負けてられないわ…カイリ、彼をお願い!! みんな、行くわよ!!」
「ああっ!!」
すぐにアクアはカイリにルキルを任せると、全員に向かって叫ぶ。
それにヴェンが答えると共に、彼との戦いが始まった…。