Another chapter3 Aqua side‐3
本来行き来が出来ない、外の世界に通じる禁断の道―――『異空の回廊』。
アクアは鎧を着てキーブレードを乗り物にし、ゼロボロスは背中に白と黒の翼を生やして飛んで回廊を進んでいた。
「――そうか、そんな旅を」
回廊を進みながら、ゼロボロスはアクアからこれまでの旅の話を聞いていた。
そんなゼロボロスに、アクアは一つ頷いた。
「はい。この世界の脅威であるアンヴァースを倒し、友人であるテラを闇から救うのが私の使命です」
「そして、テラとヴェンに何かをしようとするヴァニタスを倒す、と……それだけ、二人の事が大事なんだ」
「ええ、二人は共に過してきたライバルであり弟であり…――大事な友人です」
「大事な人、か…」
アクアの言葉に、ゼロボロスは懐かしそうに目を遠くに向ける。
遠い昔、まだ自分がゼロボロスとなる前にいた、大事な人と胸を張って言えた仲間と最愛の人。
『奴』に取り付かれたとは言え、彼らを殺したのは自分だ。その深くて大きな心の傷は未だに癒えていない。
「光を感じる…」
不意に呟いたアクアの声に、ゼロボロスは我に返る。
前を見ると、回廊の先に暖かい光が差していた。
二人が辿り着いたのは、海に浮かぶ小島の世界だった。
海の向こうでは太陽が沈んでおり、辺りを夕焼けに染める。
アクアが辺りを見回して橋を渡っていると、隣にいたゼロボロスが呟いた。
「『ディスティニーアイランド』…」
「知っているんですか?」
「まあね。と言っても、小耳に挟んだぐらいだけど」
アクアが足を止めて質問すると、ゼロボロスは軽く頷く。
その時、橋の向こうにある島に一つの妙な木があるのを見つけた。
「あれは…」
ゼロボロスの呟きに、アクアが振り返る。
視線の先には、星型の実をつけた木がある。
アクアはそれに近付いて見上げると、星型の青いペンダント―――つながりのお守りを取り出してじっと見つめた。
「テラ…ヴェン…――私に、この後待ち受ける戦いは――」
何かを思いつめるようなアクアの様子に、ゼロボロスは視線を逸らす。
「ん?」
そうして船着場に目を向けると、首を傾げる。
アクアも我に返ってゼロボロスを見ると、砂浜を駆ける足音が聞こえた。
「待って、待って!」
「ほーらソラ、置いてくぞ!」
続けて聞こえてきた男の子の声に、ゼロボロスと同じように砂浜を見る。
そこには、茶色の髪をした男の子と銀髪の男の子が砂浜でかけっこをしていた。
自分達の歩いた橋を通り抜けると、やがて二人は足を止めた。
先にゴールした銀髪の男の子は余裕の表情だが、茶色の髪をした男の子は息を整えている。
「どうやら、この世界の子供みたいだね…――あれ?」
二人を見ながらゼロボロスが呟いていると、アクアが自分の横を通り過ぎた。
「もう一回、今度こそ負けないから!」
茶色の髪の男の子が負けん気で銀髪の男の子に言っている。
すると、銀髪の男の子はアクアに気付いたのか急に顔を上げて橋を見た。
「え!?」
この様子に、茶色の髪の男の子も橋を見る。
アクアは足を止めると、こちらを見つめてくる男の子に顔を向ける。
二人を同じように見つめて微笑むと、アクアはその場にしゃがんで飛び降りた。
「――よっ!」
そうして二人のすぐ傍に着地すると、茶色の髪の男の子は驚いて飛び退く。
それが可笑しかったのか、すぐに頭を掻いてアクアに笑いかける。
アクアもその子につられて笑うと、銀髪の男の子をじっと見つめた。
(この子は純粋すぎる…まるでテラ)
そう考えると、隣にいた茶色の髪の男の子を見つめる。
(こっちの子は――…ヴェンそのものね)
今もどこかで旅をしている二人を思い浮かべ、思わず笑ってしまう。
そんなアクアに二人が不思議そうに顔を見合わせていると、急に遠い目になった。
「この子達のどちらかになら――」
何かを決意するような目に、遠くで眺めていたゼロボロスが首を傾げた。
「アクア…?」
ゼロボロスは遠くで傍観しながら、事の行く先を見る事にする。
アクアは二人に笑いかけると、首を傾げながら話し掛けた。
「ね? 君達の名前を教えてくれる?」
「俺はソラ!」
すると、茶色の髪の男の子―――ソラが元気よく手を上げて答える。
それを聞くと、アクアはソラの隣にいる男の子に聞いた。
「君は?」
「リク」
銀髪の男の子―――リクが答えると、ふと彼の中で懐かしい気配を感じた。
(この子はもうキーブレードの――…もしや、テラ?)
『レイディアントガーデン』で決別したテラの気配を感じ、複雑そうに顔を俯かせる。
二人はまた不思議そうに顔を見合わせると、アクアは笑みを浮かべてソラに聞いた。
「ソラはリクの事が好き?」
「あたりまえだよ! リクは親友なんだ」
「そう」
ソラの言葉にアクアは頷くと、何かを思い浮かべるように話し出した。
「そしたら、リクがもし道に迷うような事があったら――…もし、暗闇の道へと迷い込む事があったら――」
ここで言葉を一旦切ると、フッと笑いかけた。
「今みたいに、隣にて助けてあげるのよ」
このアクアの言葉に、二人はまた顔を見合わせた。
その二人の様子を見ながら、アクアは心に浮かぶ思いを伝える。
「それは――…ソラにしか出来ない事だから」
そう言うと、アクアは笑顔を浮かべて両手を伸ばして二人の頭を優しく撫で始める。
そんな三人を、ゼロボロスは遠くで静かに眺めていた。
やがて別れの時間となり、アクアは船着場に向かう二人を見送った。
大人と共に船に乗り、二人は海の向こうに見える遠くの島に帰っていく。
それからしばらくしてゼロボロスはパオプの木に凭れかかり、木に腰掛けて黄昏に染まった海を眺めているアクアに声をかけた。
「いい子だったね、あの子達」
そう声をかけるが、アクアは聞いていないのか黙って海を眺める。
二人と別れてから、まるで何かを思いつめたようにぼんやりとしている。
ゼロボロスは軽く肩を竦めると、二人が帰っていった島を見つめた。
そして、さっき戦ったヴァニタスとソラを思い浮かべる。
(にしても、ソラって子。本当に似ている…――世界は広いから同じ人は二、三人はいるって言うけど…)
ヴァニタスの被っているメットの一部を壊した時に見えた顔は、ソラと似ていた。
だが、見た限りではソラとヴァニタスは十ぐらいは歳が離れている。何より、世界は無限にある。それを考えれば二人の関係性はきっと無い筈だ。
しかし、もし。もしもソラがヴァニタスと何かしら関係があるのならば――
「――選ばれし者は、近づきすぎてはいけない…」
突然のアクアの呟きに、ゼロボロスは思考を中断する。
アクアを見ると、悲しそうな目で海を眺めていた。
「あの子達に、私達と同じ道を歩ませてはいけない」
そう言って、つながりのお守りを取り出してじっと見つめた。
「テラ…――私達はこの先、どうなってしまうの…?」
「……アクア?」
ゼロボロスはアクアの傍に近付くと、再び声をかける。
ようやく気付いたのか、アクアは我に返ってお守りを仕舞った。
「あっ……すみません、ちょっと考え事をしていて…」
「何か、気になる事が?」
首を傾げてゼロボロスが聞くと、アクアは顔を俯かせつつもゆっくりと口を開いた。
「…テラが、この世界に来ていた」
「あなたの友人が?」
その言葉に、アクアはコクリと頷く。
それから二人が去って行った方向に目を向けると何処か辛そうに胸に右手を当てた。
「あの、リクって子に継承をしていたの。そう…――キーブレードの継承を」
「それに問題が?」
「特に問題はないわ…――だけど、あの二人が私達のようになってしまわないか不安で…」
ここでアクアの言いたい事が伝わったのか、ゼロボロスは苦笑して口を開いた。
「自分達の二の舞は起こしたくない、かな?」
ゼロボロスがそう言って首を傾げると、アクアはフッと笑う。
少しだけ元気を取り戻すと、再びお守りを取り出した。
「そうね…テラが何を思って、リクに継承したのかは分からない。それでも、私達のような道は歩ませてはいけない」
「あの子達、これからどうなるんだろうね…?」
「知りたいか?」
突然返された言葉に、二人は視線を向ける。
そこにいたのは、足元まである長い銀髪に銀色の瞳の少女だ。
何処か神秘的な雰囲気を感じ、二人は警戒も忘れて少女に見惚れた。
「あなたは…?」
「見せてやろう、あの子達の…――いや、世界の未来を」
少女はそう言うと、スッと手を上げる。
すると二人の周りに蒼い光が纏わりついた。
「うわっ!?」
「この光は…!?」
驚くゼロボロスに、アクアが目を細める。
そうこうしている内に、光は二人を見えなくなるまで包み込んだ。
「きゃあああああああっ!!」
「アクアっ!!」
悲鳴を上げるアクアに、ゼロボロスが必死で手を伸ばす。
しかし、二人は互いに触れる事無くその場から消えていった。
二人が消えたのを確認すると、少女は手を下ろして一息吐いた。
「――これで、我のやれるべき事はやった…」
直後、足がふらついて地面に膝を付いた。
両手をつけて四つん這いになると、呼吸を荒くした。
「さすがに、力を使いすぎたかの…!」
辛そうに呟く少女の額には、じわりと汗が浮かんでいた。
顔を上げて海に沈む夕日を見ると、口の端を上げてフッと笑った。
「しばらくは、お主の持つ剣で休ませて貰うぞ…ウィド」
この世界に来て作った『殻』を持つ青年を思い浮かべ、ゆっくりと横になる。
すると、少しずつ少女の身体が透けていく。
その状態でゆっくりと瞼を閉じながら、この状況を助けてくれるであろう人達を思い浮かべた。
「皆の者、頼む…奴の企みを阻止してくれ…」
まるで祈るように呟くと、瞼を完全に閉じた。
「守られるだけの我を許してくれ…」
その言葉を最後に、少女はその場から消えていった。
後に残ったのは、波の音だけだった…。
星の海には、無数とも言える数の世界が存在する。
その内の一つに、灰色の雲が空を覆いつくし大地は真っ白な雪が降り積もっている世界がある。
そこで、一つの物語が始まろうとしていた…。
「――はぁ!!」
「うわっ!?」
一人の少年が吹き飛ばされ、積もっている雪に埋もれる。
そんな少年を、長い銀髪を後ろで一つに括った青い瞳をした青年が笑いながら見ていた。
「まだまだ、ですね」
そう言うと、握っている銀色の細い剣を腰のベルトにつけている鞘に仕舞う。
そうして、先程吹き飛ばした少年に手を伸ばす。すると、少年は倒れた状態でその手を掴む。
すぐに青年が助け起こすようにして引っ張って立ち上がらせると、身体に付いた雪を叩き落としながら少年が苦笑を浮かべた。
「さすがだよな…もうその剣を使いこなすなんて」
「そんな事ないですよ。それよりもすみません、こんな事に付き合わせてしまって」
「いいさ、別に。俺だって腕を鈍らせたくなかったし」
そう言いながら、少年は握っている剣を見る。
握られているのは、悪魔の羽を象ったような片手剣。
「でも、そんな細身の剣を使えるなんてすごいな…」
「えぇ…――これでも前にいた世界で過ごしていた教会の神父から、護身用として多少剣術を学んでいましたから。でも…」
青年は口を閉ざし、鞘に収めた銀色の剣を見つめる。
確かに、これぐらい細身だと力が強くない自分には軽くて扱いやすい。
だが、やけにしっくりとくるのだ。まるで、ずっと昔から使っていたかのように…。
「先生?」
いつの間にか思考に耽っていたのか、少年の声で我に返る。
どうにか誤魔化そうと、青年は少年に微笑を返した。
「さて、そろそろ戻りましょう。夜は特に冷え込みますから…」
「相変わらず、凄い寒がりだよな……夜までまだ時間はあるのに…」
少年は呆れながら、夜までまだ時間のある曇天の空を仰ぐ。
それから先に行った青年の後を追っていると、少年の横の茂みで何かが光った。
「ん…?」
思わず少年が足を止め、光った方へと近づく。
茂みを掻き分けながら近づくと、そこには青い髪の女性と黒髪の少年が倒れていた。
「この人達は…?」
「ルキル、どうしました?」
首を傾げていると、青年が声をかける。
それを聞き、少年――…ルキルは肩まである長い銀髪を揺らしてすぐに大声で呼んだ。
「先生、来てくれっ!!」
アクアは鎧を着てキーブレードを乗り物にし、ゼロボロスは背中に白と黒の翼を生やして飛んで回廊を進んでいた。
「――そうか、そんな旅を」
回廊を進みながら、ゼロボロスはアクアからこれまでの旅の話を聞いていた。
そんなゼロボロスに、アクアは一つ頷いた。
「はい。この世界の脅威であるアンヴァースを倒し、友人であるテラを闇から救うのが私の使命です」
「そして、テラとヴェンに何かをしようとするヴァニタスを倒す、と……それだけ、二人の事が大事なんだ」
「ええ、二人は共に過してきたライバルであり弟であり…――大事な友人です」
「大事な人、か…」
アクアの言葉に、ゼロボロスは懐かしそうに目を遠くに向ける。
遠い昔、まだ自分がゼロボロスとなる前にいた、大事な人と胸を張って言えた仲間と最愛の人。
『奴』に取り付かれたとは言え、彼らを殺したのは自分だ。その深くて大きな心の傷は未だに癒えていない。
「光を感じる…」
不意に呟いたアクアの声に、ゼロボロスは我に返る。
前を見ると、回廊の先に暖かい光が差していた。
二人が辿り着いたのは、海に浮かぶ小島の世界だった。
海の向こうでは太陽が沈んでおり、辺りを夕焼けに染める。
アクアが辺りを見回して橋を渡っていると、隣にいたゼロボロスが呟いた。
「『ディスティニーアイランド』…」
「知っているんですか?」
「まあね。と言っても、小耳に挟んだぐらいだけど」
アクアが足を止めて質問すると、ゼロボロスは軽く頷く。
その時、橋の向こうにある島に一つの妙な木があるのを見つけた。
「あれは…」
ゼロボロスの呟きに、アクアが振り返る。
視線の先には、星型の実をつけた木がある。
アクアはそれに近付いて見上げると、星型の青いペンダント―――つながりのお守りを取り出してじっと見つめた。
「テラ…ヴェン…――私に、この後待ち受ける戦いは――」
何かを思いつめるようなアクアの様子に、ゼロボロスは視線を逸らす。
「ん?」
そうして船着場に目を向けると、首を傾げる。
アクアも我に返ってゼロボロスを見ると、砂浜を駆ける足音が聞こえた。
「待って、待って!」
「ほーらソラ、置いてくぞ!」
続けて聞こえてきた男の子の声に、ゼロボロスと同じように砂浜を見る。
そこには、茶色の髪をした男の子と銀髪の男の子が砂浜でかけっこをしていた。
自分達の歩いた橋を通り抜けると、やがて二人は足を止めた。
先にゴールした銀髪の男の子は余裕の表情だが、茶色の髪をした男の子は息を整えている。
「どうやら、この世界の子供みたいだね…――あれ?」
二人を見ながらゼロボロスが呟いていると、アクアが自分の横を通り過ぎた。
「もう一回、今度こそ負けないから!」
茶色の髪の男の子が負けん気で銀髪の男の子に言っている。
すると、銀髪の男の子はアクアに気付いたのか急に顔を上げて橋を見た。
「え!?」
この様子に、茶色の髪の男の子も橋を見る。
アクアは足を止めると、こちらを見つめてくる男の子に顔を向ける。
二人を同じように見つめて微笑むと、アクアはその場にしゃがんで飛び降りた。
「――よっ!」
そうして二人のすぐ傍に着地すると、茶色の髪の男の子は驚いて飛び退く。
それが可笑しかったのか、すぐに頭を掻いてアクアに笑いかける。
アクアもその子につられて笑うと、銀髪の男の子をじっと見つめた。
(この子は純粋すぎる…まるでテラ)
そう考えると、隣にいた茶色の髪の男の子を見つめる。
(こっちの子は――…ヴェンそのものね)
今もどこかで旅をしている二人を思い浮かべ、思わず笑ってしまう。
そんなアクアに二人が不思議そうに顔を見合わせていると、急に遠い目になった。
「この子達のどちらかになら――」
何かを決意するような目に、遠くで眺めていたゼロボロスが首を傾げた。
「アクア…?」
ゼロボロスは遠くで傍観しながら、事の行く先を見る事にする。
アクアは二人に笑いかけると、首を傾げながら話し掛けた。
「ね? 君達の名前を教えてくれる?」
「俺はソラ!」
すると、茶色の髪の男の子―――ソラが元気よく手を上げて答える。
それを聞くと、アクアはソラの隣にいる男の子に聞いた。
「君は?」
「リク」
銀髪の男の子―――リクが答えると、ふと彼の中で懐かしい気配を感じた。
(この子はもうキーブレードの――…もしや、テラ?)
『レイディアントガーデン』で決別したテラの気配を感じ、複雑そうに顔を俯かせる。
二人はまた不思議そうに顔を見合わせると、アクアは笑みを浮かべてソラに聞いた。
「ソラはリクの事が好き?」
「あたりまえだよ! リクは親友なんだ」
「そう」
ソラの言葉にアクアは頷くと、何かを思い浮かべるように話し出した。
「そしたら、リクがもし道に迷うような事があったら――…もし、暗闇の道へと迷い込む事があったら――」
ここで言葉を一旦切ると、フッと笑いかけた。
「今みたいに、隣にて助けてあげるのよ」
このアクアの言葉に、二人はまた顔を見合わせた。
その二人の様子を見ながら、アクアは心に浮かぶ思いを伝える。
「それは――…ソラにしか出来ない事だから」
そう言うと、アクアは笑顔を浮かべて両手を伸ばして二人の頭を優しく撫で始める。
そんな三人を、ゼロボロスは遠くで静かに眺めていた。
やがて別れの時間となり、アクアは船着場に向かう二人を見送った。
大人と共に船に乗り、二人は海の向こうに見える遠くの島に帰っていく。
それからしばらくしてゼロボロスはパオプの木に凭れかかり、木に腰掛けて黄昏に染まった海を眺めているアクアに声をかけた。
「いい子だったね、あの子達」
そう声をかけるが、アクアは聞いていないのか黙って海を眺める。
二人と別れてから、まるで何かを思いつめたようにぼんやりとしている。
ゼロボロスは軽く肩を竦めると、二人が帰っていった島を見つめた。
そして、さっき戦ったヴァニタスとソラを思い浮かべる。
(にしても、ソラって子。本当に似ている…――世界は広いから同じ人は二、三人はいるって言うけど…)
ヴァニタスの被っているメットの一部を壊した時に見えた顔は、ソラと似ていた。
だが、見た限りではソラとヴァニタスは十ぐらいは歳が離れている。何より、世界は無限にある。それを考えれば二人の関係性はきっと無い筈だ。
しかし、もし。もしもソラがヴァニタスと何かしら関係があるのならば――
「――選ばれし者は、近づきすぎてはいけない…」
突然のアクアの呟きに、ゼロボロスは思考を中断する。
アクアを見ると、悲しそうな目で海を眺めていた。
「あの子達に、私達と同じ道を歩ませてはいけない」
そう言って、つながりのお守りを取り出してじっと見つめた。
「テラ…――私達はこの先、どうなってしまうの…?」
「……アクア?」
ゼロボロスはアクアの傍に近付くと、再び声をかける。
ようやく気付いたのか、アクアは我に返ってお守りを仕舞った。
「あっ……すみません、ちょっと考え事をしていて…」
「何か、気になる事が?」
首を傾げてゼロボロスが聞くと、アクアは顔を俯かせつつもゆっくりと口を開いた。
「…テラが、この世界に来ていた」
「あなたの友人が?」
その言葉に、アクアはコクリと頷く。
それから二人が去って行った方向に目を向けると何処か辛そうに胸に右手を当てた。
「あの、リクって子に継承をしていたの。そう…――キーブレードの継承を」
「それに問題が?」
「特に問題はないわ…――だけど、あの二人が私達のようになってしまわないか不安で…」
ここでアクアの言いたい事が伝わったのか、ゼロボロスは苦笑して口を開いた。
「自分達の二の舞は起こしたくない、かな?」
ゼロボロスがそう言って首を傾げると、アクアはフッと笑う。
少しだけ元気を取り戻すと、再びお守りを取り出した。
「そうね…テラが何を思って、リクに継承したのかは分からない。それでも、私達のような道は歩ませてはいけない」
「あの子達、これからどうなるんだろうね…?」
「知りたいか?」
突然返された言葉に、二人は視線を向ける。
そこにいたのは、足元まである長い銀髪に銀色の瞳の少女だ。
何処か神秘的な雰囲気を感じ、二人は警戒も忘れて少女に見惚れた。
「あなたは…?」
「見せてやろう、あの子達の…――いや、世界の未来を」
少女はそう言うと、スッと手を上げる。
すると二人の周りに蒼い光が纏わりついた。
「うわっ!?」
「この光は…!?」
驚くゼロボロスに、アクアが目を細める。
そうこうしている内に、光は二人を見えなくなるまで包み込んだ。
「きゃあああああああっ!!」
「アクアっ!!」
悲鳴を上げるアクアに、ゼロボロスが必死で手を伸ばす。
しかし、二人は互いに触れる事無くその場から消えていった。
二人が消えたのを確認すると、少女は手を下ろして一息吐いた。
「――これで、我のやれるべき事はやった…」
直後、足がふらついて地面に膝を付いた。
両手をつけて四つん這いになると、呼吸を荒くした。
「さすがに、力を使いすぎたかの…!」
辛そうに呟く少女の額には、じわりと汗が浮かんでいた。
顔を上げて海に沈む夕日を見ると、口の端を上げてフッと笑った。
「しばらくは、お主の持つ剣で休ませて貰うぞ…ウィド」
この世界に来て作った『殻』を持つ青年を思い浮かべ、ゆっくりと横になる。
すると、少しずつ少女の身体が透けていく。
その状態でゆっくりと瞼を閉じながら、この状況を助けてくれるであろう人達を思い浮かべた。
「皆の者、頼む…奴の企みを阻止してくれ…」
まるで祈るように呟くと、瞼を完全に閉じた。
「守られるだけの我を許してくれ…」
その言葉を最後に、少女はその場から消えていった。
後に残ったのは、波の音だけだった…。
星の海には、無数とも言える数の世界が存在する。
その内の一つに、灰色の雲が空を覆いつくし大地は真っ白な雪が降り積もっている世界がある。
そこで、一つの物語が始まろうとしていた…。
「――はぁ!!」
「うわっ!?」
一人の少年が吹き飛ばされ、積もっている雪に埋もれる。
そんな少年を、長い銀髪を後ろで一つに括った青い瞳をした青年が笑いながら見ていた。
「まだまだ、ですね」
そう言うと、握っている銀色の細い剣を腰のベルトにつけている鞘に仕舞う。
そうして、先程吹き飛ばした少年に手を伸ばす。すると、少年は倒れた状態でその手を掴む。
すぐに青年が助け起こすようにして引っ張って立ち上がらせると、身体に付いた雪を叩き落としながら少年が苦笑を浮かべた。
「さすがだよな…もうその剣を使いこなすなんて」
「そんな事ないですよ。それよりもすみません、こんな事に付き合わせてしまって」
「いいさ、別に。俺だって腕を鈍らせたくなかったし」
そう言いながら、少年は握っている剣を見る。
握られているのは、悪魔の羽を象ったような片手剣。
「でも、そんな細身の剣を使えるなんてすごいな…」
「えぇ…――これでも前にいた世界で過ごしていた教会の神父から、護身用として多少剣術を学んでいましたから。でも…」
青年は口を閉ざし、鞘に収めた銀色の剣を見つめる。
確かに、これぐらい細身だと力が強くない自分には軽くて扱いやすい。
だが、やけにしっくりとくるのだ。まるで、ずっと昔から使っていたかのように…。
「先生?」
いつの間にか思考に耽っていたのか、少年の声で我に返る。
どうにか誤魔化そうと、青年は少年に微笑を返した。
「さて、そろそろ戻りましょう。夜は特に冷え込みますから…」
「相変わらず、凄い寒がりだよな……夜までまだ時間はあるのに…」
少年は呆れながら、夜までまだ時間のある曇天の空を仰ぐ。
それから先に行った青年の後を追っていると、少年の横の茂みで何かが光った。
「ん…?」
思わず少年が足を止め、光った方へと近づく。
茂みを掻き分けながら近づくと、そこには青い髪の女性と黒髪の少年が倒れていた。
「この人達は…?」
「ルキル、どうしました?」
首を傾げていると、青年が声をかける。
それを聞き、少年――…ルキルは肩まである長い銀髪を揺らしてすぐに大声で呼んだ。
「先生、来てくれっ!!」
■作者メッセージ
これにて、アクア編は一旦終了です。
今回、前の掲示板で投稿した際に無かったアクア達が飛ばされた後も書けて良かったです。始めて読んだ方は二人を助けたのは誰なのか、一度見た方は青年の剣についての謎が膨らんだかと…思えるかな?(聞くな
さて、次の断章にてようやく私パートは終わって夢さんにバトンタッチです。お待たせしてしまって本当にすみません。
では、最後に人物紹介とおまけを張り付けておきます。
さて、明日にでもチャット会の返事を夢さん達に返さなければ…。
アクア (主な出演作品:KH Bbs)
厳しさと優しさを持ち合わせた、キーブレードマスターの少女。
師からアンヴァース討伐とテラの監視、そして勝手に旅立ったヴェンを連れ戻す命を受けて故郷を旅立った。
やがてテラ達と再開するものの、仲違いを起こしてしまう。その後はテラやヴェンの安否を心配しつつも、世界を巡る旅を続けていた。
そして訪れた【ネバーランド】にてヴァニアスに消されそうになった所をゼロボロスに助けられ、共に旅立つ事になった。
【ディスティニーアイランド】にてまだ幼かったソラとリクと出会った後、これからの事をゼロボロスに話している際に、謎の少女によって未来へ飛ばされてしまう。
武器は【レインストーム】。魔法による攻撃とサポートを中心に、キーブレードを使った攻撃も行う。
ゼロボロス (夢旅人様のオリキャラ)
セミショートの黒髪で紫の瞳をした青年。見た目は10代後半ぐらいだが、実年齢は全パーティ内でナンバー1である。多分(マテ
本名は『紫苑』と言って、故郷の世界である敵と戦い、身体を乗っ取られて大切な人や仲間を虐殺した過去を持つ。今は世界を巡る旅をしつつ、『管理者』としてさまざまな世界のバランスを調整している。
ちなみに名前はシオンと一緒だが、夢旅人様曰く『たまたまです』との事。なので、責めないでやってください(オイマテ
辿り着いた世界にてたまたまヴァニタスに遭遇し、アクアを助けて戦いを挑む。その後は気配をたどって出会ったアクアと共に一時的だが旅をする事に。
彼の武器は右が白色、左が黒色のグローブの【心を知り求める者(ハーティクルメント)】。さらに、双翼と『式』と言う“炎髪灼眼の打ち手”から教えて貰った特殊な術を仕様する。
NGシーン ヴァニタス戦
(注:KHキャラではない別作品のキャラが登場します。苦手な方は、『戻る』をクリック)
ゼロボロス「『羅刹獄零脚』――」
ゼロボロスが両足に炎を纏い、身を屈めて――
謎の少女「ちょっと、ゼロボロス!! 話が違うじゃない!!」(二人の間に乱入する)
ゼロボロス&ヴァニタス「「へ?」」
謎の少女「開店前から行列が出来る程の『至高のメロンパン』を売ってる店だって言うから朝早くから沢山の人達に紛れて並んで食べてみれば……何よ、あのメロンパン!! 外道もいい所だわ!! こんなメロンパンの為に『自在法』教えたのが馬鹿みたいじゃない!! どう責任取ってくれるの!!」
ヴァニタス「な、何だよあの女!? お前の知り合いか!?」
ゼロボロス「ええ、まあ…――あのー、ここは一応『KH』の世界だから、違うキャラであるあなたが出てくるといろいろと問題が――」
謎の少女「そんな事情関係ない!! このメロンパンの怒り…思い知るがいいわっ!!!」(炎を纏い、炎髪灼眼となって刀を握っている)
ヴァニタス「な、何だ…おい、お前!! 早くあいつを何とかしろっていないっ!?」
少女のペンダント『どうやら、あの『自在法』を使って逃げたようだな。身体能力に使うとは、なかなかのものだ』
ヴァニタス「ああ、さっきの技か…――って、誰だ!? どこから声が!?」
謎の少女「《炎髪灼眼の打ち手》…――メロンパンの恨み、とくとその身に教えてあげるっ!!!」(刀に炎を纏い、襲いかかる)
ヴァニタス「またこのパターンかぁぁぁ!!?」(巨大な炎に巻き込まれる)
そんな二人から離れた場所では―――
アクア「何故でしょうか…ヴァニタスが哀れに思えてくるのですが?」
ゼロボロス「いやー、あなた達の所の作者は面白いですねー」
そう言いながら、ゼロボロスが振り返ると―――
クウ「おーい、氷か水の魔法準備しろー。あと消火器持ってこーい」
オパール「エーテルの準備も出来たわよー。ビシビシ魔法連発しても大丈夫だからー」(大量のエーテルが入った紙袋を持っている)
テラ「無轟用にストックしてた消火器だが……まさか、こんな所で使うとはな」(両手に消火器を持っている)
ヴェン「ソラー、ヴァニタスの予備のメットは用意したか?」
ソラ「バッチリ! ついでに髪染めとカラーコンタクトも用意したし、何時でも役交代出来るから!」(片手にヴァニタスのメット、もう片手に黒の髪染めを持っている)
ゼロボロス「こんな状況でも皆さん落ち着いて、アフターケアも万全で…いやはや、僕なんかがこの空気に付いてこれますかねぇ?」
アクア「あなたなら出来そうな気がするわ…」
今回、前の掲示板で投稿した際に無かったアクア達が飛ばされた後も書けて良かったです。始めて読んだ方は二人を助けたのは誰なのか、一度見た方は青年の剣についての謎が膨らんだかと…思えるかな?(聞くな
さて、次の断章にてようやく私パートは終わって夢さんにバトンタッチです。お待たせしてしまって本当にすみません。
では、最後に人物紹介とおまけを張り付けておきます。
さて、明日にでもチャット会の返事を夢さん達に返さなければ…。
アクア (主な出演作品:KH Bbs)
厳しさと優しさを持ち合わせた、キーブレードマスターの少女。
師からアンヴァース討伐とテラの監視、そして勝手に旅立ったヴェンを連れ戻す命を受けて故郷を旅立った。
やがてテラ達と再開するものの、仲違いを起こしてしまう。その後はテラやヴェンの安否を心配しつつも、世界を巡る旅を続けていた。
そして訪れた【ネバーランド】にてヴァニアスに消されそうになった所をゼロボロスに助けられ、共に旅立つ事になった。
【ディスティニーアイランド】にてまだ幼かったソラとリクと出会った後、これからの事をゼロボロスに話している際に、謎の少女によって未来へ飛ばされてしまう。
武器は【レインストーム】。魔法による攻撃とサポートを中心に、キーブレードを使った攻撃も行う。
ゼロボロス (夢旅人様のオリキャラ)
セミショートの黒髪で紫の瞳をした青年。見た目は10代後半ぐらいだが、実年齢は全パーティ内でナンバー1である。多分(マテ
本名は『紫苑』と言って、故郷の世界である敵と戦い、身体を乗っ取られて大切な人や仲間を虐殺した過去を持つ。今は世界を巡る旅をしつつ、『管理者』としてさまざまな世界のバランスを調整している。
ちなみに名前はシオンと一緒だが、夢旅人様曰く『たまたまです』との事。なので、責めないでやってください(オイマテ
辿り着いた世界にてたまたまヴァニタスに遭遇し、アクアを助けて戦いを挑む。その後は気配をたどって出会ったアクアと共に一時的だが旅をする事に。
彼の武器は右が白色、左が黒色のグローブの【心を知り求める者(ハーティクルメント)】。さらに、双翼と『式』と言う“炎髪灼眼の打ち手”から教えて貰った特殊な術を仕様する。
NGシーン ヴァニタス戦
(注:KHキャラではない別作品のキャラが登場します。苦手な方は、『戻る』をクリック)
ゼロボロス「『羅刹獄零脚』――」
ゼロボロスが両足に炎を纏い、身を屈めて――
謎の少女「ちょっと、ゼロボロス!! 話が違うじゃない!!」(二人の間に乱入する)
ゼロボロス&ヴァニタス「「へ?」」
謎の少女「開店前から行列が出来る程の『至高のメロンパン』を売ってる店だって言うから朝早くから沢山の人達に紛れて並んで食べてみれば……何よ、あのメロンパン!! 外道もいい所だわ!! こんなメロンパンの為に『自在法』教えたのが馬鹿みたいじゃない!! どう責任取ってくれるの!!」
ヴァニタス「な、何だよあの女!? お前の知り合いか!?」
ゼロボロス「ええ、まあ…――あのー、ここは一応『KH』の世界だから、違うキャラであるあなたが出てくるといろいろと問題が――」
謎の少女「そんな事情関係ない!! このメロンパンの怒り…思い知るがいいわっ!!!」(炎を纏い、炎髪灼眼となって刀を握っている)
ヴァニタス「な、何だ…おい、お前!! 早くあいつを何とかしろっていないっ!?」
少女のペンダント『どうやら、あの『自在法』を使って逃げたようだな。身体能力に使うとは、なかなかのものだ』
ヴァニタス「ああ、さっきの技か…――って、誰だ!? どこから声が!?」
謎の少女「《炎髪灼眼の打ち手》…――メロンパンの恨み、とくとその身に教えてあげるっ!!!」(刀に炎を纏い、襲いかかる)
ヴァニタス「またこのパターンかぁぁぁ!!?」(巨大な炎に巻き込まれる)
そんな二人から離れた場所では―――
アクア「何故でしょうか…ヴァニタスが哀れに思えてくるのですが?」
ゼロボロス「いやー、あなた達の所の作者は面白いですねー」
そう言いながら、ゼロボロスが振り返ると―――
クウ「おーい、氷か水の魔法準備しろー。あと消火器持ってこーい」
オパール「エーテルの準備も出来たわよー。ビシビシ魔法連発しても大丈夫だからー」(大量のエーテルが入った紙袋を持っている)
テラ「無轟用にストックしてた消火器だが……まさか、こんな所で使うとはな」(両手に消火器を持っている)
ヴェン「ソラー、ヴァニタスの予備のメットは用意したか?」
ソラ「バッチリ! ついでに髪染めとカラーコンタクトも用意したし、何時でも役交代出来るから!」(片手にヴァニタスのメット、もう片手に黒の髪染めを持っている)
ゼロボロス「こんな状況でも皆さん落ち着いて、アフターケアも万全で…いやはや、僕なんかがこの空気に付いてこれますかねぇ?」
アクア「あなたなら出来そうな気がするわ…」