Another chapter4 Sora&Terra side‐2
一時期は虚ろな城へと変わっていた光の都―――『レイディアントガーデン』。
その世界で商店街の一角に一つのグミシップが降り立つと、ソラが背伸びしながら降り立った。
「ここも久々だな〜!」
ソラが笑顔で辺りを見回していると、ヴェンに続いてカイリとリクも降り立つ。
最後にオパールが降り立つと、辺りを見回していたヴェンが訝しげに聞いてきた。
「なあ、ここ本当に『レイディアントガーデン』なのか?」
「そうだけど、何で?」
「いや…俺が来た時は、もっとこう…――綺麗だったって言うか…」
オパールが聞き返すと、ヴェンは頭を掻いて当時の『レイディアントガーデン』を思い出す。
あの時はアンヴァースが発生していたものの、水や花があって綺麗な町だった。その頃と比べると、何処か寂れているように感じる。
そんなヴェンの疑問に、オパールは腕を組んで遠い目をした。
「仕方ないわよ……今から十年前、ここにハートレスの大群が襲ってきたの。おかげでこの世界は闇に包まれ、ハートレスの巣食う殺伐とした場所に変わったわ」
「ハートレス?」
「すぐに分かるわよ、嫌でも遭うから」
そう言っていると、五人に妙な感覚が過ぎる。
その方向に目を向けると、ハートレスのソルジャーが数匹現れた。
「――ほらね」
オパールはそう呟くと、腰にあるタガーに手をかける。
それを合図に、ソラとリク、そしてヴェンもキーブレードを取り出して構えた。
「カイリ、離れてて!」
「うん!」
ソラの言葉に、戦えないカイリはすぐに四人から距離を取る。
こうして戦いのスピースが作られると、リクが訝しげにオパールを見た。
「あんた、戦えるのか?」
「当たり前、でしょ!」
リクの言葉に答えつつ、オパールは飛び蹴りを放ってきたソルジャーを避ける。
そうして、後ろから素早くタガーで斬りつける。斬りつけた部分は弱点だったのか、一撃で闇に消えていく。
そのすぐ近くでは、ヴェンがキーブレードを後ろに構えていた。
「いっけぇ!!」
丁度集まっていたソルジャーに向かって、キーブレードを回転させて投げつける。
ソルジャーに『ストライグレイド』を当てると、気絶したのか頭をクラクラさせている。
それを見て、ソラはすぐにキーブレードを上に掲げた。
「集まれ!!」
『マグネ』を発動させると、気絶していたハートレスが磁石に引き寄せられるように集まってくる。
成す術も無く空中の球体に引き寄せられるソルジャーに向かって、リクが一気に近づいた。
「てりゃぁ!!」
渾身の一撃でキーブレードを振ると、『マグネ』で集まっていたソルジャーは全て消え去った。
そのままリクが着地すると、辺りを見回しつつキーブレードを消した。
「これで全部だな」
「今のがハートレスなのか? アンヴァースとは違うな…」
アンヴァースとはまた違った敵にヴェンが呟いていると、タガーを腰のベルトに付いた鞘に仕舞いながらオパールが声をかけた。
「んじゃ、レオン達のいるアンセムの研究室まで行くわよ。しっかりついて来なさい」
その後、ソラ達は何度かハートレスの奇襲に遭いつつ、どうにか研究所前に到着した。
中に入ると、割れたガラスや何かの本が散乱している。その奥には、一人の男の肖像画がある。
それを見てヴェンは一瞬立ち止まるものの、ソラ達が横の通路に行くのですぐに追いかけた。
広い空間にある廊下を渡り、ようやくメインコンピューターに辿り着くと四人の男女が待っていた。
「レオン! エアリス! ユフィ! シド!」
ソラが嬉しそうに声をかけると、ユフィも笑顔を見せて近づいた。
「あっ、ソラ…――あれ…もしかして、カイリ!? 元気だった!?」
「久しぶりだね、ユフィ!!」
歳も近いからか、それなりに仲良くなった二人は再会を喜ぶ。
そんな二人の横では、レオンがリクとヴェンを見て首を傾げていた。
「ソラ、その二人は?」
「ああ……こっちは親友のリク。で、こっちは友達のヴェン」
「よろしくな!」
「よろしく」
二人が挨拶していると、エアリスはクスリと笑ってオパールを見た。
「オパール、ちゃんと連れて着たんだね」
「ね? あたしだって、やれば出来るのよ」
何処か得意げにオパールが言った瞬間、ガンッと殴りつける音が響く。
見ると、シドが拳をコンピューターに叩きつけ怒りを露わにしてオパールを睨んでいた。
「何がやれば出来るだっ!!! こっちはどれだけ心配したか分かってるのか!!?」
「うっさいわね!! まだ一日も経ってないでしょ!?」
「二人とも、喧嘩は止めろ」
「お前は黙ってろぉ!!!」 「レオンは黙っててっ!!!」
レオンが止めようとしたが、逆にシドとオパールに睨み返される。
これにはレオンも思わず怯んでしまうと、二人の激しい口喧嘩が始まってしまった。
「はぁ…」
「えっと、レオン…――オパールと、どう言う関係…?」
疲れた溜め息を吐くレオンに、恐る恐るソラが声をかける。
このソラの問いに、エアリスが苦笑しながら答えた。
「オパールはシドの姪なの…――帰ってきたのはつい最近だから、ソラが知らないのも無理ないけど」
「「え…? えええええええええええええええええええっ!!!??」」
意外なエアリスの言葉に、ソラとカイリは思わず絶叫を上げる。
再び喧嘩している二人を見るが、どう見ても似ても似つかない。
「信じられない…!!」
「全然血が繋がっているようには見えないよ…!!」
『えっと、そろそろいいかい…?』
大きなコンピューターから聞こえた声に、ソラ達だけでなくシドとオパールも喧嘩を止めて振り返る。
そして当初の目的を思い出したのか、ソラがコンピューターに近づいた。
「なあ、トロン。俺に何の用なんだ?」
『実は……この研究データから、人工的に作るハートレスの装置の設計図が何者かに盗まれてしまったんだ』
「何だって!?」
ソラだけでなく他の人達も驚くが、ヴェンだけはよく分かってないようで首を傾げている。
『昨日、ここに怪しい男が来てメインコンピューターの一部を壊されてしまってね……その所為で何も出来ずにデータのアクセスを許してしまった…』
「そんな…!! 一体どうなるんだ!?」
『一応、装置を作るには莫大な費用と材料がかかるから大丈夫だとは思うんだけど……もし悪用されれば、とんでもない事になる。それこそ、十三機関と同じように世界を危機に陥れる事にもなる』
このトロンの説明に、ソラだけでなくリクやカイリも驚きの表情を見せる。
世界にまた危機が訪れる。一年かけてようやく日常を取り戻したのに、それがまた壊されてしまう。
部屋の中が重い空気に包まれている中、オパールが腕を組んでトロンを見た。
「…トロン、念の為にそのアクセスを調べていい? もしかしたら、何かしらの穴が見つかるかもしれないから」
「おい、オパール!!」
「捜査の基本は、何度も調べる事よ。頭も年取ってるんだから充分若いあたしに任せなさいって」
ニッとシドに強気の笑みを浮かげると、さっそくコンピューターに近付いてキーボードに指を当てた。
「待て、俺も調べる」
そんなオパールに、意外にもリクが声をかける。
この申し出に、訝しげに眉を潜めてリクを見た。
「あんた、コンピューター扱えるの?」
「バカにするな。これでも一流の研究者に教えて貰ったからな」
「へぇ、言うじゃない……じゃ、共同戦と行きましょうか」
オパールが笑いながらそう言うと、リクもフッと笑みを浮かべて隣に立つ。
それを合図に、二人は素早い指捌きでキーボードを打ち出した。
この様子に、ソラは何処か安堵した表情を浮かべて頭の後ろで腕を組んだ。
「…最初はどうなるかと思ったけど、仲良くなったみたいだな」
「ああして見ると、意外とお似合いだね」
「お似合いだとぉ!!? あの銀髪、俺のオパールを取る気じゃねえだろうなぁ…!!!」
「シド、落ち着いて…」
カイリの言葉に激怒するシドを、ソラが両手を広げて宥める。
その時、大きな振動がここ一帯に響いた。
「何だっ!?」
全員がどうにか足を踏ん張って耐えると、ヴェンが辺りを見回す。
すると、レオンがガンブレードを取り出して入口を見た。
「外からだ!! ユフィ、行くぞ!!」
「オッケー!! グレート忍者、ユフィちゃんの出番だね!!」
ユフィも大きな手裏剣を取り出すと、レオンと共に外に向かう。
「レオン、俺も行く!!」
「だったら俺も!!」
そんな二人に、ソラとヴェンはキーブレードを取り出して申し出る。
それを聞き、レオンは足を止めて二人を見た。
「すまない、助かる!!」
それだけ言うと、レオンはユフィと共に研究所を出た。
ソラとヴェンもその後を追いかけようとすると、コンピューターを操作しながらリクが声をかけた。
「頼む、ソラ!! こっちの解析が終わったらすぐに行くからっ!!」
「分かった!!」
リクの言葉に頷くと、ソラは二人の後を追いかけるようにヴェンと共に研究所を出た。