Another chapter4 Sora&Terra side‐4
二人が駆け出すと同時に、ガードアーマーのパーツが分裂した。
そうして意思を持ったように右手と左足が胴体から離れると、二人に向かって襲いかかる。
「はぁ!!」
それを見て、テラは軽く飛び上がって左足にキーブレードを思いっきり叩きつける。
『エアリルブレイク』を放つ横では、クウが手に闇を纏って空中に浮かぶ右手を見ていた。
「少しはじっとしろっ!!」
指の間に四つの黒い羽を闇で具現化すると、勢いよく右手に投げつける。
その攻撃に怯んでいると、クウはもう片方の手に再度黒の羽根を具現化させた。
「攻撃は『フェザーノクターン』だけじゃねーぜ!!」
そう言って右手の真下に黒い羽根を刺した途端、黒い雷が右手に襲い掛かった。
『ダークサンダガ』をぶつけていると、テラと戦っていた左足が右手の近くに飛んできた。
テラは即座に近付くと、二つを巻き込むようにキーブレードを振り回した。
「『ロックライズ』!!」
地面に叩きつけると、岩が突き出して二つを串刺しにする。
この二人の戦いを、無轟は腕を組んで静かに傍観しているとレオンが声をかけた。
「あんたは戦わないのか?」
「このくらいの敵、俺の出る幕ではないからな」
無轟はフッと笑って答えると、横目でレオンを見た。
「そう言うお前はどうなんだ?」
「…俺も似たようなもの、かな…?」
レオンは顔を背け、何処か寂しげに言った。
そう。これはもう、自分の出る幕ではない。それだけ、あの二人が強いのが分かる。
例えここで加勢に出ても、きっと自分がする事は何も無いだろう。
テラとクウの戦いを寂しげに眺めているレオンから少し離れた所では、倒れているソラとヴェンの傍でレイアが魔法を唱えていた。
「――『ケアルガ』」
二人に癒しの光が包むと、見る見る内に傷が治っていった。
そうして、レイアはガードアーマーにつけられた傷を完治させると二人に微笑んだ。
「はい、これで治りましたよ」
「「あ、ありがと…」」
ソラとヴェンが照れくさそうに頭を掻いていると、何かが壊れる音が響く。
見ると、二人が丁度ガードアーマーの右足と左手を壊した所だった。
頭と胴体だけとなり、二人は同時に笑った。
「よし、あと一息だ!!」
「折角だ、一気に終わらせるぞ!!」
テラとクウが残った胴体に向かって睨みつける。
それを見て、ソラは立ち上がって再びキーブレードを構えた。
「だったら一緒に!!」
「いいぜ、遅れるなよ!!」
そんなソラの言葉に乗ったのはクウだった。
二人は互いに笑いかけると、ガードアーマーの胴体に向かって走り出す。
そして、一気に飛び上がると空中でキーブレードと拳を思いっきり振り上げた。
「「はあああああああああああっ!!!」」
二人は叫びながら、それぞれの武器をガードアーマーに向かって同時に振り下ろす。
ガァン、と言う金属音が辺りに響くとグラリとガードアーマーはよろける。
そのままソラとクウが着地すると同時に、ヴェンとテラが駆け出した。
「テラ!!」
「ヴェン、行くぞ!!」
互いに声をかけると、同じように跳躍した。
「「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」」
二人はガードアーマーに向かってキーブレードでクロスするように斬りつける。
確かな手ごたえを感じつつ振り向きながら着地すると、ガードアーマーの頭部が激しく揺れ出した。
胴体と共に地面に倒れると、大きなハートが飛び出して消え去った。
完全にガードアーマーが消えたのを確認するなり、クウが口を開いた。
「これで終わったな……そっちは終わったか?」
そう言って振り返ると、レイアが負傷したユフィの傷を治している所だった。
『ケアルガ』を使って傷を完治するなり、笑顔を浮かべて立ち上がった。
「はい、今終わりました」
一つ頷き、レイアはクウの元へ歩き出す。
その時、レイアの後ろから銀色の球体が現れる。
それに気付いた時には、一匹の大きな銀色の梟が現れた。
顔には、ノーバディのマークが付いている。
「あれは――!!」
「レイアァ!!」
驚くソラに、クウが叫びながら駆け出す。
突然のクウの行動に、レイアは思わず足を止める。
それと同時に、ノーバディがレイアに向かって鋭い鉤爪を広げて急降下してきた。
「え…?」
ようやくレイアがノーバディの存在に気付いて後ろを振り返る。
―――直後、彼女の前に何者かが立ち憚ってノーバディを一閃した。
闇に溶けるように消えるノーバディをレイアが人越しに見ていると、その人物が振り返った。
「無事か?」
「え、えっと…!?」
急の事にレイアの思考が混乱していると、ソラが怒ったように声をかけた。
「リク、遅いぞ!!」
「悪いな、ソラ。思ったより手間取った」
そう言って、レイアを助けたリクはフッと笑いかける。
間一髪でレイアを助けたリクにクウが固まっている中、テラは目を見開いていた。
「君は…!」
「――やはり、上手くは行かないか」
突然上から聞こえた声に、全員は顔を向ける。
そこには、黒いショートヘアの髪と赤い目に小さい丸眼鏡を掛けている男が城にある大きなパイプの上に立っていた。
この人物に、ソラがキーブレードを構えながら怒鳴った。
「誰だっ!!」
ソラの言葉に、男は小さく笑うと胸に手を当てて答えた。
「私はクォーツ。これで満足かな?」
そうして答えるクォーツを、クウが歯軋りしながら睨み付ける。
手には、何時でも攻撃できるように闇を纏っている。
「てめえ、よくもレイアに手ぇ出したな…!!」
「だから?」
クウの唸るような声に、クォーツは何でもないように首を傾げる。
「――これはお礼だぁ!!!」
叫ぶと同時に、両手を勢いよく振って黒の羽根を投げつけた。
八つの羽根が鋭く飛んでくるのを見るなり、手を上げる。
すると、彼の前に巨大な鏡が現れて黒の羽根はすべてその中に吸い込まれるように入って行った。
「なっ…!?」
攻撃が意外な方法で防がれた事にクウが目を丸くしていると、クォーツは後ろに『闇の回廊』を作った。
「嫌われているようなので、私は退散しよう。ハートレスのデータもある程度分かった」
「ちょっと、どう言う意味よ!!」
リクと共に追いついたオパールが声を上げるが、クォーツはそのまま逃げるように回廊の中に入って行った。
そうして闇と共に消えると、レオンは悔しそうに拳を握り締めた。
「逃げたか…!!」
レオンの呟きに、他の人も釈然としない苛立ちを沸かせる。
そんな中、ヴェンは不安そうな表情でゆっくりとテラに近づいた。
「えっと、テラ…」
勇気を出し、恐る恐るヴェンは声をかける。
この『レイディアントガーデン』で再開してから、アクアや自分の間でちょっとした亀裂が出来ている。もしかしたら、またあの時のように拒絶されるかもしれない。
不安でたまらないヴェンの肩に、ふと暖かい温もりが伝わった。
顔を上げると、目の前ではテラが安堵の表情を浮かべて自分を見つめていた。
「無事で良かった、ヴェン」
「テラ…!!」
テラの言葉に、ヴェンの瞳に光が差し込む。
と、ここで何かを思い出したのかすぐにテラを見返した。
「そうだ!! テラもここにいるって事は、銀色の少女に連れて来られたのか!?」
「まさか、ヴェンもか!?」
ヴェンの質問に、テラも驚きの表情を浮かべる。
「あのさー、あたし達を除け者にしないでくれるー?」
横から聞こえたオパールの声に、二人は我に返る。
それを見計らうように、オパールと共に来たカイリがヴェンに質問した。
「ヴェン、この人は?」
「ああ。さっき話した、俺の友達のテラ。で、えっと…?」
困ったようにクウ達を見るヴェンに、テラが説明した。
「クウ、レイア、無轟だ。俺は今、この人達と旅をしているんだ」
「レイアと言います、よろしくお願いします」
「よろしく、麗しきレディ達。どうです、今からそこら辺で散歩でぎゃああああああああああああっ!!?」
即座にオパール達をナンパするクウだったが、言葉の途中で何処からか砲弾が飛んできて爆発した。
飛んできた方を見ると、そこにはシドがバズーカを持って目をギラつかせクウを睨んでいた。
「てめえ…!!! うちの姪をナンパしてんじゃねえぞゴラアアアアアアアアアアアアアアっ!!!」
辺り一帯に響く叫びと共に、何度もクウに向かってバズーカを打ち込むシド。
この光景にソラ達が絶句する中、ヴェンは困ったようにテラを見た。
「えっと、テラ…?」
「ま…まあ、あれでも強いのはヴェンも見ただろ? それで、彼らは?」
「この未来で知り合ったソラ、リク、カイリだ。で、あっちはオパールにレオンとユフィ」
ヴェンが紹介すると、ソラとユフィがテラに向かって挨拶した。
「よろしくな!」
「よろしく!」
二人が笑顔で挨拶していると、ようやくシドの攻撃の音が止んだ。
クウを見ると、黒焦げの状態だが痙攣しているのを見ると辛うじて生きているようだ。
この様子を収めつつ、リクが全員に声をかけた。
「とりあえず、まずは状況確認からだ。場所を移動しよう」