Fragment4-3
口をパクパクと動かしたシャオの姿がぶれて、消える。
結果、槍は夕暮れをバックにした虚空を突いていた。
「…ほぅ?」
まるで天に翳している左手を見ながら、ゆっくりと槍を下ろす。
そうして後ろを振り返ると、シャオが息を荒くして肩膝を付いていた。
「はぁ…はぁ…!!」
移動魔法の一つである『テレポ』を使って脱出したシャオを、ジャスは黙って見据える。
そうしている内に、シャオは息が整ったのか立ち上がる。
ジャスが槍を構えると、シャオは顔を俯かせながら口を開いた。
「すっかり忘れていたよ…ジャスさんの『心を読む能力』の事」
思いがけない言葉に、ジャスの動きが止まった。
その間にも、シャオは話を続けた。
「今まで攻撃が防がれていたのは、ずっと僕の心を読んでどう攻撃が来るのか分かっていたからでしょ?」
ジャスの能力は“心”を司る。一度、ハートレスを操った所を見た際に教えて貰った。
さらに、その能力を使って嫉妬、慈悲、信念を元にした三本の槍を作り出したり、自分の『ウィング・モード』みたいに翼を生やして飛ぶ事も出来る。
そして、他者の心を読み取って思考を覗き見る事も。
「正直、その能力ってチートだよ。心は誰にでも存在するから、簡単に読み取る事が出来る……でも、どんな能力にも弱点がある。師匠の言う通り、その心を読む方法だって弱点は存在した」
そう言って顔を上げると、左手の人差し指を見せた。
「一つは不確定な心を持つ事。何て言うか…酔っ払いとか読み取れない行動を瞬時に起こすから、そんな感じの思考を持つ事。だけど、いきなり出来る事じゃないから使えない」
自分の言った言葉を切り捨てると、今度は中指を立てる。
「二つは心を無くす事、でもそれはノーバディになるって事と同義だからボクには使えない。三つ目は心を読む前に素早く攻撃する事だけど、コンマの差での攻撃なんて常人には無理だから使えない」
次々と方法を述べては切り捨てるシャオに、さすがのジャスも目を細める。
その間にも、シャオは小指を立てる。
「四つ目は、心を“無”にする事。これがいいんだろうけど…ボクはまだ修行中で出来ない。だから、ボクにしか使えない五つ目を使う事にしたよ」
ここで言葉を切ると、キーブレードを握り締める。
同時に光輝くのを見て、ジャスが白い槍を握り締めてシャオの心を読み取る。
(力を溜めての斬り込みか…――だが…!?)
読み取った内容に防御の構えを取るものの、シャオの言う方法が引っ掛かる。
それでも迫ってくるシャオを見据えて、来るであろう攻撃に槍を握る。
次の瞬間、突然ジャスの目の前でシャオが消えた。
「――ボクの心に、別の『記憶』を刷り込む方法をね」
「っ…!!」
後ろから声が聞こえ、反射的にジャスは身を屈めて横に避ける。
そのまま声の方に目を向けると、シャオがキーブレードを縦に振るっていた。
自分の予想が外れた事に驚きを隠せないものの、ジャスはとっさに手を広げる。
「ジャッジメント!! 『ケイジ・オブ・ドロウ』!!」
手を握り締め、シャオを四方から清流で閉じ込める。
しかし、シャオは冷静にキーブレードを思いっきり地面に突き刺す。
すると、シャオを中心に地面から爆発が起こって周りの清流を弾き飛ばした。
『イラプション』を使って魔法を打ち破ったシャオに思わずジャスが目を見開いていると、何処か真剣な目で見返した。
「――記憶と心、二つはとても深い繋がりがある。そう父さんが教えてくれてた」
驚くジャスを見つつ、キーブレードを両手で持つ。
「ジャスさんの心を使う力にボクが対抗する方法は、これしかないからね……いろんな人達から貰った、記憶の力でねっ!!! モード・解除っ!!!」
シャオにあの光が纏って弾けると、服の色やキーブレードが前の状態に戻っていた。
『モード・スタイル』を解いたシャオはキーブレードを頭上に掲げた。
(いいか? 戦いには流れがあり、どんな相手にもチャンスもある)
師匠の言葉を思い出しながら、シャオは力を解放する。
異世界の少女が行なった地獄の特訓をした事によって習得した技を。
(そのチャンスが来たら、絶対にその機会を手放すな。次があるなんて考えは捨てろ)
ジャスの能力を封じた今――…一撃を与えるチャンスはここしかない。
キーブレードに自分の持てる全力を注ぎ…解き放つ。
ジャスを中心に、辺り一帯に光の柱が降り注いだ。
「はああああぁ!!!」
「これぐらい…何て事は――っ!?」
即座にジャスが『ロンギヌス』を作り出し、頭上から襲い掛かる光を吸収する。
こうして攻撃を防御するジャスだったが、突然表情を変えた。
頭上の光を吸収する自分に向かって、シャオが近づいていたからだ。
(防がれたり、予想外の反撃をしてきても焦るな。その状態でも自分に流れがあると感じたら―――その流れに身を委ねるんだ)
真上の光の洪水により、両手は武器を握って防ぐのに使っている。
相手は魔法も反撃も出来ない。シャオは完全に自分の流れを感じながら、ジャス目掛けてキーブレードを振り下ろした。
「――『フォトレジストアワー』っ!!!」
何も出来ないジャスの顔面に、思いっきりキーブレードを振り下ろした。
「ぐ、あっ…!?」
ジャスにとって不意打ち同然であり人にとって重要な器官でもある脳に響く攻撃に、思わず武器を手放す。
それにより『ロンギヌス』の吸収の力が遮断され、未だに降り注ぐ光の柱に飲み込まれた。
「――はぁ…はぁ…!!」
一気に近づいた際に残ったスピードを、シャオは殺すように足で地滑りを起こす。
そうして間合いを取ってジャスを見ると、肩膝を付いてその場で蹲っていた。
だが、ジャスはゆっくりと起き上がる。思わずシャオが身構える中、ジャスはレンズの割れた眼鏡を外しながら顔を上げる。
そこには、戦っていた時とは違って優しい笑みを浮かべていた。
「――いいでしょう、合格です」
口調も普段の物に戻ったのを聞き、シャオは気が抜けたのかキーブレードを消しながら地面に座り込んだ。
「は、ははは……や…った…!!」
「随分と疲れてますね…――まあ、普通なら僕のような人物に傷をつけるのはなかなかいませんからね」
安堵するシャオに、ジャスも笑い掛ける。
「シャオ君、少しベンチで休んでてください。飲み物でも買ってきますから」
疲れているシャオを気遣おうと、そう言って公園の外に向かって歩き出すジャス。
シャオは背中を見送りつつ、どうにか立って近くのベンチに歩き出した。
ベンチに座って今までの緊張を解しつつ、『ケアル』を使って傷を癒していると、ジャスが自動販売機に売っていたポーションを持ってきた。
「はい、どうぞ」
座っているシャオに、ジャスはポーションを差し出す。
すぐにシャオは受け取り、蓋を開けて一気に飲み出した。
「んぐっ、んぐっ…んぐっ――…ぷはぁ!! 生き返る〜!!」
(それほどまで疲労していた訳ですが、この子は…)
気持ちよさそうに口元を拭うシャオに、ジャスは何処か冷静になって観察する。
そうしていると、シャオがポーションを飲み干して手を差し出した。
「それでさ、ジャスさん。合格したのなら、早くチケット頂戴! ボク、すぐにでも行きたいんだ!!」
「もう、ですか?」
「そうだよ! 善は急げって言うでしょ?」
「僕と戦ったばかりでもう行くとは…――あなた、死にたいんですか?」
「大丈夫だって!! ちゃんと『ポーション』飲んで元気になったし、伊達に師匠に鍛えられてる訳じゃないんだよ!!」
立ち上がり、エヘンと胸を張るシャオ。
これにはジャスも肩を竦めるが、懐に手を入れた。
「まあ、約束は約束ですしね。いいでしょう」
そう言うと、例のカードを取り出してシャオに渡した。
「これが、過去の異世界に行けるチケットか…!!」
(まるで見た事の無い場所に冒険に向かう子供の表情ですね…)
目を輝かせながらカードを見るシャオに、ジャスは内心で笑う。
「…まあ、それも当たってますか」
「ジャスさん、何か言った?」
「いえ、何も。折角ですので、こちらもプレゼントします」
そう言うと、一つの荷物袋を取り出してシャオに渡した。
突然渡された荷物袋に不思議そうに受け取るシャオに、笑いながら説明した。
「その中には『ポーション』や『エーテル』など、ある程度必要な治療薬を入れてます。そして、これも」
そう言うなり、ジャスはズボンのポケットに手を入れる。
そこから取り出したのは、黄色の星のキーホルダーだ。
ジャスの持つキーホルダーに、シャオは思わず首を捻った。
「何これ? もしかして、パオプの実のキーホルダー?」
「ちょっとしたお守りです。あなた専用のね」
「ボク専用のお守り? ジャスさん、何か企んでる?」
「失礼ですね。これでもあなたの事を思っていると言うのに…」
やれやれと肩を竦めるジャスに、シャオは半目になる。
だが、貰える物は貰おうとキーホルダーに手を伸ばした。
「ハイハイ…とりあえず、貰っておくよ」
ジャスからお守りを貰うなり、ズボンの後ろのポケットにねじり込む。
こうして旅立ちの準備が整うと、シャオは白いカードを握り締めた。
「じゃあ、行って来るね!! あ、父さん達には上手く誤魔化しといて!!」
「分かりました。では、行ってらっしゃい」
嬉しそうに笑うシャオに、ジャスがニコヤカに手を振る。
同時に、シャオが握っているカードが光って一つの列車が現れる。
列車はシャオを横切るように通り過ぎ、一瞬の内に消えてしまった。
そのまま列車が不思議な回廊へと消えていくのを見送りながら、ジャスはもう届かない彼に呟いた。
「――世界を救い、真実を取り戻す旅に…ね」
過去と今、そして未来。
全ての役者が揃し時、彼らに待つのは希望と絶望のどちらだろうか?
しかし、これだけはお分かりだろう。彼らが紡ぎだす旅の終焉に待つのは…約束されし、因果の交差路。
いよいよ、幕開けとなる。一つの存在によって歪められた、もう一つの物語が。
結果、槍は夕暮れをバックにした虚空を突いていた。
「…ほぅ?」
まるで天に翳している左手を見ながら、ゆっくりと槍を下ろす。
そうして後ろを振り返ると、シャオが息を荒くして肩膝を付いていた。
「はぁ…はぁ…!!」
移動魔法の一つである『テレポ』を使って脱出したシャオを、ジャスは黙って見据える。
そうしている内に、シャオは息が整ったのか立ち上がる。
ジャスが槍を構えると、シャオは顔を俯かせながら口を開いた。
「すっかり忘れていたよ…ジャスさんの『心を読む能力』の事」
思いがけない言葉に、ジャスの動きが止まった。
その間にも、シャオは話を続けた。
「今まで攻撃が防がれていたのは、ずっと僕の心を読んでどう攻撃が来るのか分かっていたからでしょ?」
ジャスの能力は“心”を司る。一度、ハートレスを操った所を見た際に教えて貰った。
さらに、その能力を使って嫉妬、慈悲、信念を元にした三本の槍を作り出したり、自分の『ウィング・モード』みたいに翼を生やして飛ぶ事も出来る。
そして、他者の心を読み取って思考を覗き見る事も。
「正直、その能力ってチートだよ。心は誰にでも存在するから、簡単に読み取る事が出来る……でも、どんな能力にも弱点がある。師匠の言う通り、その心を読む方法だって弱点は存在した」
そう言って顔を上げると、左手の人差し指を見せた。
「一つは不確定な心を持つ事。何て言うか…酔っ払いとか読み取れない行動を瞬時に起こすから、そんな感じの思考を持つ事。だけど、いきなり出来る事じゃないから使えない」
自分の言った言葉を切り捨てると、今度は中指を立てる。
「二つは心を無くす事、でもそれはノーバディになるって事と同義だからボクには使えない。三つ目は心を読む前に素早く攻撃する事だけど、コンマの差での攻撃なんて常人には無理だから使えない」
次々と方法を述べては切り捨てるシャオに、さすがのジャスも目を細める。
その間にも、シャオは小指を立てる。
「四つ目は、心を“無”にする事。これがいいんだろうけど…ボクはまだ修行中で出来ない。だから、ボクにしか使えない五つ目を使う事にしたよ」
ここで言葉を切ると、キーブレードを握り締める。
同時に光輝くのを見て、ジャスが白い槍を握り締めてシャオの心を読み取る。
(力を溜めての斬り込みか…――だが…!?)
読み取った内容に防御の構えを取るものの、シャオの言う方法が引っ掛かる。
それでも迫ってくるシャオを見据えて、来るであろう攻撃に槍を握る。
次の瞬間、突然ジャスの目の前でシャオが消えた。
「――ボクの心に、別の『記憶』を刷り込む方法をね」
「っ…!!」
後ろから声が聞こえ、反射的にジャスは身を屈めて横に避ける。
そのまま声の方に目を向けると、シャオがキーブレードを縦に振るっていた。
自分の予想が外れた事に驚きを隠せないものの、ジャスはとっさに手を広げる。
「ジャッジメント!! 『ケイジ・オブ・ドロウ』!!」
手を握り締め、シャオを四方から清流で閉じ込める。
しかし、シャオは冷静にキーブレードを思いっきり地面に突き刺す。
すると、シャオを中心に地面から爆発が起こって周りの清流を弾き飛ばした。
『イラプション』を使って魔法を打ち破ったシャオに思わずジャスが目を見開いていると、何処か真剣な目で見返した。
「――記憶と心、二つはとても深い繋がりがある。そう父さんが教えてくれてた」
驚くジャスを見つつ、キーブレードを両手で持つ。
「ジャスさんの心を使う力にボクが対抗する方法は、これしかないからね……いろんな人達から貰った、記憶の力でねっ!!! モード・解除っ!!!」
シャオにあの光が纏って弾けると、服の色やキーブレードが前の状態に戻っていた。
『モード・スタイル』を解いたシャオはキーブレードを頭上に掲げた。
(いいか? 戦いには流れがあり、どんな相手にもチャンスもある)
師匠の言葉を思い出しながら、シャオは力を解放する。
異世界の少女が行なった地獄の特訓をした事によって習得した技を。
(そのチャンスが来たら、絶対にその機会を手放すな。次があるなんて考えは捨てろ)
ジャスの能力を封じた今――…一撃を与えるチャンスはここしかない。
キーブレードに自分の持てる全力を注ぎ…解き放つ。
ジャスを中心に、辺り一帯に光の柱が降り注いだ。
「はああああぁ!!!」
「これぐらい…何て事は――っ!?」
即座にジャスが『ロンギヌス』を作り出し、頭上から襲い掛かる光を吸収する。
こうして攻撃を防御するジャスだったが、突然表情を変えた。
頭上の光を吸収する自分に向かって、シャオが近づいていたからだ。
(防がれたり、予想外の反撃をしてきても焦るな。その状態でも自分に流れがあると感じたら―――その流れに身を委ねるんだ)
真上の光の洪水により、両手は武器を握って防ぐのに使っている。
相手は魔法も反撃も出来ない。シャオは完全に自分の流れを感じながら、ジャス目掛けてキーブレードを振り下ろした。
「――『フォトレジストアワー』っ!!!」
何も出来ないジャスの顔面に、思いっきりキーブレードを振り下ろした。
「ぐ、あっ…!?」
ジャスにとって不意打ち同然であり人にとって重要な器官でもある脳に響く攻撃に、思わず武器を手放す。
それにより『ロンギヌス』の吸収の力が遮断され、未だに降り注ぐ光の柱に飲み込まれた。
「――はぁ…はぁ…!!」
一気に近づいた際に残ったスピードを、シャオは殺すように足で地滑りを起こす。
そうして間合いを取ってジャスを見ると、肩膝を付いてその場で蹲っていた。
だが、ジャスはゆっくりと起き上がる。思わずシャオが身構える中、ジャスはレンズの割れた眼鏡を外しながら顔を上げる。
そこには、戦っていた時とは違って優しい笑みを浮かべていた。
「――いいでしょう、合格です」
口調も普段の物に戻ったのを聞き、シャオは気が抜けたのかキーブレードを消しながら地面に座り込んだ。
「は、ははは……や…った…!!」
「随分と疲れてますね…――まあ、普通なら僕のような人物に傷をつけるのはなかなかいませんからね」
安堵するシャオに、ジャスも笑い掛ける。
「シャオ君、少しベンチで休んでてください。飲み物でも買ってきますから」
疲れているシャオを気遣おうと、そう言って公園の外に向かって歩き出すジャス。
シャオは背中を見送りつつ、どうにか立って近くのベンチに歩き出した。
ベンチに座って今までの緊張を解しつつ、『ケアル』を使って傷を癒していると、ジャスが自動販売機に売っていたポーションを持ってきた。
「はい、どうぞ」
座っているシャオに、ジャスはポーションを差し出す。
すぐにシャオは受け取り、蓋を開けて一気に飲み出した。
「んぐっ、んぐっ…んぐっ――…ぷはぁ!! 生き返る〜!!」
(それほどまで疲労していた訳ですが、この子は…)
気持ちよさそうに口元を拭うシャオに、ジャスは何処か冷静になって観察する。
そうしていると、シャオがポーションを飲み干して手を差し出した。
「それでさ、ジャスさん。合格したのなら、早くチケット頂戴! ボク、すぐにでも行きたいんだ!!」
「もう、ですか?」
「そうだよ! 善は急げって言うでしょ?」
「僕と戦ったばかりでもう行くとは…――あなた、死にたいんですか?」
「大丈夫だって!! ちゃんと『ポーション』飲んで元気になったし、伊達に師匠に鍛えられてる訳じゃないんだよ!!」
立ち上がり、エヘンと胸を張るシャオ。
これにはジャスも肩を竦めるが、懐に手を入れた。
「まあ、約束は約束ですしね。いいでしょう」
そう言うと、例のカードを取り出してシャオに渡した。
「これが、過去の異世界に行けるチケットか…!!」
(まるで見た事の無い場所に冒険に向かう子供の表情ですね…)
目を輝かせながらカードを見るシャオに、ジャスは内心で笑う。
「…まあ、それも当たってますか」
「ジャスさん、何か言った?」
「いえ、何も。折角ですので、こちらもプレゼントします」
そう言うと、一つの荷物袋を取り出してシャオに渡した。
突然渡された荷物袋に不思議そうに受け取るシャオに、笑いながら説明した。
「その中には『ポーション』や『エーテル』など、ある程度必要な治療薬を入れてます。そして、これも」
そう言うなり、ジャスはズボンのポケットに手を入れる。
そこから取り出したのは、黄色の星のキーホルダーだ。
ジャスの持つキーホルダーに、シャオは思わず首を捻った。
「何これ? もしかして、パオプの実のキーホルダー?」
「ちょっとしたお守りです。あなた専用のね」
「ボク専用のお守り? ジャスさん、何か企んでる?」
「失礼ですね。これでもあなたの事を思っていると言うのに…」
やれやれと肩を竦めるジャスに、シャオは半目になる。
だが、貰える物は貰おうとキーホルダーに手を伸ばした。
「ハイハイ…とりあえず、貰っておくよ」
ジャスからお守りを貰うなり、ズボンの後ろのポケットにねじり込む。
こうして旅立ちの準備が整うと、シャオは白いカードを握り締めた。
「じゃあ、行って来るね!! あ、父さん達には上手く誤魔化しといて!!」
「分かりました。では、行ってらっしゃい」
嬉しそうに笑うシャオに、ジャスがニコヤカに手を振る。
同時に、シャオが握っているカードが光って一つの列車が現れる。
列車はシャオを横切るように通り過ぎ、一瞬の内に消えてしまった。
そのまま列車が不思議な回廊へと消えていくのを見送りながら、ジャスはもう届かない彼に呟いた。
「――世界を救い、真実を取り戻す旅に…ね」
過去と今、そして未来。
全ての役者が揃し時、彼らに待つのは希望と絶望のどちらだろうか?
しかし、これだけはお分かりだろう。彼らが紡ぎだす旅の終焉に待つのは…約束されし、因果の交差路。
いよいよ、幕開けとなる。一つの存在によって歪められた、もう一つの物語が。
■作者メッセージ
これにて、今回の断章は終了です。
バトルシーンが予想以上に長くなった所為で、分けて投稿する事に。これでようやく第五章に移れます。
尚、今回出したシャオの技ですが、リラさんの番外編にて習得の話があるのでまだ見ていない方はどうぞ。
最後に、いつものキャラ紹介を載せておきます。
シャオ (オリキャラ)
未来の異世界(とある学園世界)に住んでいる、灰色の髪に青い目をした14歳の少年。
性格は天真爛漫なのか、素直で明るい。なので、たまに思った事を口に出したりしてしまう事も。
それでも物事を冷静に考える事が出来る。顔は中立的で、女と間違えられる度にキレる。
平日は学園に通い、たまに彼の師匠にキーブレードの稽古をして貰うと日々を平穏に暮らしていた。
そんなある日に、とある理由で家出した際にジャスと出会った事により彼の運命が変わった。
武器はキーブレードの【メタモルフォーゼ】。《変質》と言う意味もあり、彼の中にある他者の記憶を媒介にさまざまな戦闘スタイル『モード・スタイル』を行使する。
ハンニバル=ジャスティス (ヒロ様のオリキャラ)
長い銀髪にダークスーツと伊達メガネ(黒ぶち)が標準装備の16くらいの少年。ただ、本人は“ジャス”と呼ぶように強制している。(一部を除いて)
『デア=リヒター』の称号を持つ少年で『心』を司る。そのためハートレスを自在に使役したり、その技術を応用して羽を生やして飛んだりも出来る。
仕事は雇われエージェントで何でも屋(?)的な感じらしい。その為か、変装が得意。
尚、依頼人の依頼と自分の正義がかみ合えば交渉成立。噛み合わなければ【ジャッジメント】と言う名の処刑(第三者談曰く)。報酬は二の次で、仕事の内容が命。
元々、彼はシャオの住む世界の住人ではなく、異世界を巡る『夢の旅人』としてさまざまな異世界に行っては己の正義の為に戦っている。その為、一度神月達の故郷を襲った前科もある。
そして今回、シャオを事件の起きているソラ達の世界へと向かわせるキッカケを作った。もちろん理由は今の所不明。
彼の武器は【トライデント】と言う心から作った三本の槍と【ジャッジメント】と言う独特の裁きの魔法。ちなみに、ノーマルモードとバトルモードで性格が変わる。
分かりやすく説明すると、ノーマルは敬語が普通で一人称は僕。バトルモードは黒い死のノートを手にした少年(リクと声が一緒の人)の如く全てを見下す高き目線からものを言う。一人称は私でとっても好戦的で、相手を小馬鹿にしたような発言をする。
バトルシーンが予想以上に長くなった所為で、分けて投稿する事に。これでようやく第五章に移れます。
尚、今回出したシャオの技ですが、リラさんの番外編にて習得の話があるのでまだ見ていない方はどうぞ。
最後に、いつものキャラ紹介を載せておきます。
シャオ (オリキャラ)
未来の異世界(とある学園世界)に住んでいる、灰色の髪に青い目をした14歳の少年。
性格は天真爛漫なのか、素直で明るい。なので、たまに思った事を口に出したりしてしまう事も。
それでも物事を冷静に考える事が出来る。顔は中立的で、女と間違えられる度にキレる。
平日は学園に通い、たまに彼の師匠にキーブレードの稽古をして貰うと日々を平穏に暮らしていた。
そんなある日に、とある理由で家出した際にジャスと出会った事により彼の運命が変わった。
武器はキーブレードの【メタモルフォーゼ】。《変質》と言う意味もあり、彼の中にある他者の記憶を媒介にさまざまな戦闘スタイル『モード・スタイル』を行使する。
ハンニバル=ジャスティス (ヒロ様のオリキャラ)
長い銀髪にダークスーツと伊達メガネ(黒ぶち)が標準装備の16くらいの少年。ただ、本人は“ジャス”と呼ぶように強制している。(一部を除いて)
『デア=リヒター』の称号を持つ少年で『心』を司る。そのためハートレスを自在に使役したり、その技術を応用して羽を生やして飛んだりも出来る。
仕事は雇われエージェントで何でも屋(?)的な感じらしい。その為か、変装が得意。
尚、依頼人の依頼と自分の正義がかみ合えば交渉成立。噛み合わなければ【ジャッジメント】と言う名の処刑(第三者談曰く)。報酬は二の次で、仕事の内容が命。
元々、彼はシャオの住む世界の住人ではなく、異世界を巡る『夢の旅人』としてさまざまな異世界に行っては己の正義の為に戦っている。その為、一度神月達の故郷を襲った前科もある。
そして今回、シャオを事件の起きているソラ達の世界へと向かわせるキッカケを作った。もちろん理由は今の所不明。
彼の武器は【トライデント】と言う心から作った三本の槍と【ジャッジメント】と言う独特の裁きの魔法。ちなみに、ノーマルモードとバトルモードで性格が変わる。
分かりやすく説明すると、ノーマルは敬語が普通で一人称は僕。バトルモードは黒い死のノートを手にした少年(リクと声が一緒の人)の如く全てを見下す高き目線からものを言う。一人称は私でとっても好戦的で、相手を小馬鹿にしたような発言をする。