Another chapter5 Aqua side‐1「共に守る一つの想い」
アクアはボンヤリとベットに腰掛けていた。
ちなみに、今部屋の中にいるのは自分と椅子に腰掛けているゼロボロスだけだ。
助けてくれた二人―――ウィドとルキルはアクアの様態を確認するとすぐに部屋を出て行った。
そうして部屋の中で沈黙が続くが、不意にアクアはゼロボロスに声をかけた。
「…ゼロボロス」
「はい?」
「…これは、どう言う事なの?」
「僕に聞かれても…」
アクアの問いに、ゼロボロスも困ったように頭を掻く。
だが、何かを思い出したのか手を下ろすと腕を組んで呟いた。
「ただ…これが、『彼女』の言っていた事かもしれないね」
「彼女…?」
アクアは首を傾げると、ゆっくりと記憶を辿る。
『ディスティニーアイランド』でソラとリクと別れ、その後で自分達をこの場所へと導いた少女。
その時の事を思い出すと、ハッと顔を上げてゼロボロスを見つめた。
「世界の未来…――じゃあ、ここは未来の世界と言う事…!?」
「断定は出来ないけどね」
「どうして?」
すると、ゼロボロスはスッと手を伸ばす。
目を向けると、そこには一つの窓がある。
外は雪が降っており、辺り一面が雪景色となっている。
「これは…雪?」
「そう。ここは『ディスティニーアイランド』じゃなくて、別の世界だから。もしかしたら、別の世界に飛ばされただけかもしれない」
「…とにかく、調べるしかなさそうね」
このままジッとしても何も分からない。
そう考えてアクアはすぐにベットから起きると、ゼロボロスと共に部屋を出た。
二人が部屋を出ると、リビングに通じていたのか少し広い部屋に入る。
すると、部屋にある大きなテーブルでウィドが料理の準備をしているのか調理器具を置いている。
そうしているとウィドは二人に気付き、笑みを浮かべて声をかけた。
「おや? 起きて大丈夫なんですか?」
「ええ。ご迷惑かけました」
「それでは、僕達はこれで」
二人がそう別れを告げていると、ウィドが首を傾げた。
「もう行くのですか? 折角ですし、食事でもどうです? すぐに作りますから」
「いえ、しかし…」
このウィドの言葉に、アクアは断ろうとする。
その前にウィドは満面の笑みを浮かべ、優しく両肩に手を置いた。
「いいから。…あんな所で倒れていたのですから、少しは栄養のある物を食べて身体の調子を良くしませんと」
正論とも言える言葉に、ゼロボロスは諦めたような溜め息を吐いてアクアを見た。
「――いいんじゃないかな? ちょっとぐらいお世話になっても」
「そうですね…――では、お言葉に甘えて」
「はい、甘えてください」
アクアが承諾するのを聞き、ウィドは嬉しそうに一つ頷く。
そうしてキッチンに向かって歩くが、何かを思い出したようにこちらに振り返った。
「すみませんが料理を作る間、外でルキルを探して貰えませんか? さっきからどうにも姿が見えなくて…」
「分かりました。すぐに探しに行きます」
アクアが頷くと、ウィドは再びキッチンへと歩んだ。
そのままウィドが料理を作り始めるのを見て、ゼロボロスはアクアを見た。
「あの子に話を聞くチャンスだね」
「そうね…――彼の事は少し気になるし、探しに行きましょう」
外に出ると、雪が積もった木々が辺りを囲んでいる。
どうやら自分達がいたのは山小屋だったようで、改めて別の世界だと認識する。
と、ここでゼロボロスが何処か心配そうにアクアに問い掛けた。
「そうだ、アクア。寒くない?」
「寒くない、と言えば嘘になるけど……でも、これぐらいは魔法でどうにか出来るから」
笑いながらそう言うと、アクアは手を胸に当てる。
すると、淡い光がアクアを包みこみある程度寒さを軽減させる。
そうして二人はルキルを探しに銀世界となった森の奥に向かって歩き出す。
しばらく歩いていると、何処からかカンカンと木を叩く音が響いてきた。
「何か聞こえない?」
ゼロボロスが耳を澄ませながら話しかけ、すぐにアクアも頷く。
二人は音の方に近付くように茂みを掻き分けながら進んでいると、ある光景が目に入る。
それを見て、思わず二人は茂みに隠れるようにしゃがみ込んだ。
「はっ、やっ!」
雪の積もった広い場所で、ルキルが木刀を持って木で作られた人形を叩いていた。
よく見ると木刀は使い込まれて磨り減っており、人形も傷やへこみが目立っている。
この様子に、ゼロボロスは隠れながらクスリと笑ってアクアを見た。
「修行中みたいだね…」
「ふふっ、懐かしいわね…」
アクアはそう呟くと、何処か遠くを見る表情で木刀を振るうルキルを見ていた。
「少し前まで、テラやヴェンと一緒に修行していたのに…――今では遠い昔の事みたい…」
そう呟くと、『つながりのお守り』を取り出してじっと眺める。
キーブレードマスターとなるために、テラとヴェンと共に『旅立ちの地』にて修行していた日々。
ようやく迎えたマスター承認試験。その前日の夜にテラとヴェンにもお守りを作って渡した。三人で一緒にマスターとなり、ずっと一緒にいられるように。
でも、三人で夢を求め笑いあったあの時には、もう戻らないのだろうか…?
「――誰だ?」
ようやく二人の気配に気付いたのか、ルキルが手を止めてこちらを睨みながら声をかける。
アクアは我に返るとお守りを仕舞い立ち上がる。同じく、ゼロボロスも立ち上がってルキルに近づいた。
「あんた達は…!」
ルキルが軽く驚いていると、アクアは笑いながら謝罪した。
「ごめんね、邪魔しちゃって」
「別に…」
そう言って、ルキルは二人から顔を背ける。
そんなルキルの様子を見て、ふとアクアに一つの考えが頭に浮かびあがった。
「――ねえ、私と戦ってみない?」
「え!?」
突然の申し出にルキルが驚いていると、アクアは何処か楽しそうに言った。
「そう言うのもいいけど、何事も実戦が一番だから」
「実戦…」
アクアの言葉に、ルキルは考え込むように顔を俯かせる。
少しして顔を上げると、真剣な表情をしてまっすぐにアクアを見つめた。
「じゃあ…お願いします」
「そうこなくっちゃね」
アクアは頷くと、スッと手を伸ばす。
同時に、その手に青いキーブレードを出現させる。
これを見て、ルキルは驚きの表情を浮かべて叫んだ。
「キーブレードっ!?」
「あなた…キーブレードを知ってるの?」
アクアが不思議そうに聞くと、ルキルは何処か寂しそうな目をして視線を逸らした。
「…俺の知ってる奴が、使ってたから…」
「そっか…――じゃあ、行くわよっ!!」
アクアが声を掛けて構えると、ルキルも気を取り直して手に持った木刀を構える。
二人は同時に駆け込むのを合図に、戦いが始まった…。
ちなみに、今部屋の中にいるのは自分と椅子に腰掛けているゼロボロスだけだ。
助けてくれた二人―――ウィドとルキルはアクアの様態を確認するとすぐに部屋を出て行った。
そうして部屋の中で沈黙が続くが、不意にアクアはゼロボロスに声をかけた。
「…ゼロボロス」
「はい?」
「…これは、どう言う事なの?」
「僕に聞かれても…」
アクアの問いに、ゼロボロスも困ったように頭を掻く。
だが、何かを思い出したのか手を下ろすと腕を組んで呟いた。
「ただ…これが、『彼女』の言っていた事かもしれないね」
「彼女…?」
アクアは首を傾げると、ゆっくりと記憶を辿る。
『ディスティニーアイランド』でソラとリクと別れ、その後で自分達をこの場所へと導いた少女。
その時の事を思い出すと、ハッと顔を上げてゼロボロスを見つめた。
「世界の未来…――じゃあ、ここは未来の世界と言う事…!?」
「断定は出来ないけどね」
「どうして?」
すると、ゼロボロスはスッと手を伸ばす。
目を向けると、そこには一つの窓がある。
外は雪が降っており、辺り一面が雪景色となっている。
「これは…雪?」
「そう。ここは『ディスティニーアイランド』じゃなくて、別の世界だから。もしかしたら、別の世界に飛ばされただけかもしれない」
「…とにかく、調べるしかなさそうね」
このままジッとしても何も分からない。
そう考えてアクアはすぐにベットから起きると、ゼロボロスと共に部屋を出た。
二人が部屋を出ると、リビングに通じていたのか少し広い部屋に入る。
すると、部屋にある大きなテーブルでウィドが料理の準備をしているのか調理器具を置いている。
そうしているとウィドは二人に気付き、笑みを浮かべて声をかけた。
「おや? 起きて大丈夫なんですか?」
「ええ。ご迷惑かけました」
「それでは、僕達はこれで」
二人がそう別れを告げていると、ウィドが首を傾げた。
「もう行くのですか? 折角ですし、食事でもどうです? すぐに作りますから」
「いえ、しかし…」
このウィドの言葉に、アクアは断ろうとする。
その前にウィドは満面の笑みを浮かべ、優しく両肩に手を置いた。
「いいから。…あんな所で倒れていたのですから、少しは栄養のある物を食べて身体の調子を良くしませんと」
正論とも言える言葉に、ゼロボロスは諦めたような溜め息を吐いてアクアを見た。
「――いいんじゃないかな? ちょっとぐらいお世話になっても」
「そうですね…――では、お言葉に甘えて」
「はい、甘えてください」
アクアが承諾するのを聞き、ウィドは嬉しそうに一つ頷く。
そうしてキッチンに向かって歩くが、何かを思い出したようにこちらに振り返った。
「すみませんが料理を作る間、外でルキルを探して貰えませんか? さっきからどうにも姿が見えなくて…」
「分かりました。すぐに探しに行きます」
アクアが頷くと、ウィドは再びキッチンへと歩んだ。
そのままウィドが料理を作り始めるのを見て、ゼロボロスはアクアを見た。
「あの子に話を聞くチャンスだね」
「そうね…――彼の事は少し気になるし、探しに行きましょう」
外に出ると、雪が積もった木々が辺りを囲んでいる。
どうやら自分達がいたのは山小屋だったようで、改めて別の世界だと認識する。
と、ここでゼロボロスが何処か心配そうにアクアに問い掛けた。
「そうだ、アクア。寒くない?」
「寒くない、と言えば嘘になるけど……でも、これぐらいは魔法でどうにか出来るから」
笑いながらそう言うと、アクアは手を胸に当てる。
すると、淡い光がアクアを包みこみある程度寒さを軽減させる。
そうして二人はルキルを探しに銀世界となった森の奥に向かって歩き出す。
しばらく歩いていると、何処からかカンカンと木を叩く音が響いてきた。
「何か聞こえない?」
ゼロボロスが耳を澄ませながら話しかけ、すぐにアクアも頷く。
二人は音の方に近付くように茂みを掻き分けながら進んでいると、ある光景が目に入る。
それを見て、思わず二人は茂みに隠れるようにしゃがみ込んだ。
「はっ、やっ!」
雪の積もった広い場所で、ルキルが木刀を持って木で作られた人形を叩いていた。
よく見ると木刀は使い込まれて磨り減っており、人形も傷やへこみが目立っている。
この様子に、ゼロボロスは隠れながらクスリと笑ってアクアを見た。
「修行中みたいだね…」
「ふふっ、懐かしいわね…」
アクアはそう呟くと、何処か遠くを見る表情で木刀を振るうルキルを見ていた。
「少し前まで、テラやヴェンと一緒に修行していたのに…――今では遠い昔の事みたい…」
そう呟くと、『つながりのお守り』を取り出してじっと眺める。
キーブレードマスターとなるために、テラとヴェンと共に『旅立ちの地』にて修行していた日々。
ようやく迎えたマスター承認試験。その前日の夜にテラとヴェンにもお守りを作って渡した。三人で一緒にマスターとなり、ずっと一緒にいられるように。
でも、三人で夢を求め笑いあったあの時には、もう戻らないのだろうか…?
「――誰だ?」
ようやく二人の気配に気付いたのか、ルキルが手を止めてこちらを睨みながら声をかける。
アクアは我に返るとお守りを仕舞い立ち上がる。同じく、ゼロボロスも立ち上がってルキルに近づいた。
「あんた達は…!」
ルキルが軽く驚いていると、アクアは笑いながら謝罪した。
「ごめんね、邪魔しちゃって」
「別に…」
そう言って、ルキルは二人から顔を背ける。
そんなルキルの様子を見て、ふとアクアに一つの考えが頭に浮かびあがった。
「――ねえ、私と戦ってみない?」
「え!?」
突然の申し出にルキルが驚いていると、アクアは何処か楽しそうに言った。
「そう言うのもいいけど、何事も実戦が一番だから」
「実戦…」
アクアの言葉に、ルキルは考え込むように顔を俯かせる。
少しして顔を上げると、真剣な表情をしてまっすぐにアクアを見つめた。
「じゃあ…お願いします」
「そうこなくっちゃね」
アクアは頷くと、スッと手を伸ばす。
同時に、その手に青いキーブレードを出現させる。
これを見て、ルキルは驚きの表情を浮かべて叫んだ。
「キーブレードっ!?」
「あなた…キーブレードを知ってるの?」
アクアが不思議そうに聞くと、ルキルは何処か寂しそうな目をして視線を逸らした。
「…俺の知ってる奴が、使ってたから…」
「そっか…――じゃあ、行くわよっ!!」
アクアが声を掛けて構えると、ルキルも気を取り直して手に持った木刀を構える。
二人は同時に駆け込むのを合図に、戦いが始まった…。