第一章 心剣士編断章 「蠢き続ける計画」
「――何処だ、此処は」
キーブレード『パラドックス』の支配を受けた神月たち。
彼女に導かれるがままに辿り着いた星空が鮮烈に煌めく神殿が在った。
彼女は振り返らずに、答えてやった。
「此処は神の聖域、レプセキア」
「神の、聖域……」
彼女が神殿へ歩みだすと、オルガ、菜月は彼女の後へついて行く。
洗脳の呪縛があくまで軽いだけの神月はもう暫く仰ぎ見ていた。
太陽と月のような人工物が輝き、足元には水晶の様な花々が咲き誇っている。
そして、眼前に聳える神殿を見据えていると仮面の女の声が脳裏に響いた。
『さ、こっちよ』
「っ」
逆らう力も無いまま、神月は入り口に入っていった。
神殿の中にも自分たちの様なモノクロの仮面をつけた様々な人間がいた。
彼らを一瞥しながら、先導する彼女を追いかけていく、すると、先導していた彼女が足を止め、追いついた。
「――なんだ、またつれて来たのですか」
「ええ。中々強かったからね」
彼女は誰かと会話をしている。棒立ちするオルガ達を押しのけて、誰と話しているのか気になった。
神月は割り込むというよりは寝耳を立てるように彼女の傍に歩み寄る。それを気付いた彼女は、仮面の下で微笑みを零す。
「へえ、ある程度の自我は保っているのか」
「……」
神月は話しかけた人物――顔を白い布で巻きつけて、素顔を隠した青年。
唯、認識できるのは布からはみ出た黒髪、金に煌めく瞳。
「ええ。今から此処の案内をね。もう行くのかしら」
「はい、なにぶん忙しいので」
「そう。じゃあ」
軽く手を振って、仮面の女は白布の男から離れるように奥に進んでいく。
彼はやれやれと苦笑のため息を零して、さっさと歩き出していった。
再び、彼女に呼ばれた神月はすぐに奥へと追いかけていった。
「―――此処は……」
「此処に神が居るわ」
彼女が指差した階段状の玉座の上には、眠るように力なく項垂れている少女。
神月は唖然とした様子で、彼女に尋ねた。
「あれが、神?」
「そう……起源たる者。今は眠らせているの」
「眠らせている?」
「私の計画の邪魔はさせたくないから。――もう私の3つの剣は完成しかけているけどまだ、まだ……」
「3つの…剣」
操られる前に語っていた【心剣】、【永遠剣】、【反剣】。
何かの計画の一つなのだろうか、と言う疑問を抱いた。
「私がそれらの使い手を操っているのはその完成を高める為。後は、小間使い」
「……」
「まあ、小間使いは軽い冗談よ。――完成のため、それらの使い手をもっと私のモノにしないと……」
彼女が持つ3つの剣がより高い完成を為す為に、自分たちはこんな良く解らない【神の聖域】とやらに招かれたというわけか。
神月は彼女がやっぱりとんでもない奴であることを再認識した。先ほど会話をしていた白布の男――あれも同じくらい仮面の女と力を宿している。
一体、何を目論んで―――。
「ま、今は休んで頂戴」
パンパンと手を叩くと入り口からずんぐりむっくりな機械が姿を現した。
「これは此処で使われていた機械の兵士よ。――じゃあ、彼らを空いている部屋にでも適当に案内して。
部屋に入ったら、別にこの中を歩き回っていていいわよ。でも、抜け出す事は不可能だから―――覚悟しておく事ね」
「……ああ、解っている」
「もし、こっちから用があるときは、これに呼びつけるから」
機械兵士は先導し、神月はついていくように部屋を出て行った。
仮面の女はそれを見送って、静かに階段を仰ぎ、神たる少女を見据えた。
機械兵士が動きを止め、部屋の扉を指出した。
神月は部屋に入る。オルガ、菜月たちは別の部屋に案内されていたようだ。
部屋はシンプルな構造ながらも広い部屋であることに変わりが無かった。
「またつれて来られた人間か……」
「! おい、アンタ」
部屋のベッドに腰掛けている灰色の髪をした男性がこちらを見て、ため息を吐いた。
完全な洗脳ならこのような反応はまず無い――神月は慌てて反応した。
勿論、男性も驚きに満ちた目でこっちを見た。
「驚いた軽度の洗脳しか受けていない人間がいたとは…」
「それはこっちの台詞だ。俺は神月、アンタは?」
腰を下ろしている彼の傍に添わった神月は自ら名乗った。
「私はジェミニ。永遠剣士、として此処に連れてこられた」
「永遠剣士……」
「仮面の女は数の多い心剣士、それよりは少ない反剣士、永遠剣士はほんの数人しかいない。
今の所、私だけしか永遠剣士は居ない」
その特殊さゆえに永遠剣士は数はごくわずかであった。
だが、その極僅かな永遠剣士の一人を仮面の女は従属する事に成功している。
つまり、彼女の目的のピースは完成していると同じ。
「なのに、どうして直ぐにでも行動しない」
「3つの剣士を集わせてもだめなのだ、彼女はそれらを自ら具現し、そして―――」
『ジェミニ、私よ。大広間に来なさい』
扉の向こうから機械音声で発せられた仮面の女の声が呼びかける。
何かを伝えようと口を動かしているが、声は発せられなかった。
「……今は、アイツの所に行け」
「……」
表情だけでわかる。「すまない」と。
こんな状況で、頼みの綱だったジェミニから何か情報を得れるかと想ったのは幸運の極みだったか。
部屋を出て行った彼を見届けた神月は自分のベッドに横たわった。
今は唯、眠りに尽きたかった。もう何もかも投げ出しそうになるくらいに。
キーブレード『パラドックス』の支配を受けた神月たち。
彼女に導かれるがままに辿り着いた星空が鮮烈に煌めく神殿が在った。
彼女は振り返らずに、答えてやった。
「此処は神の聖域、レプセキア」
「神の、聖域……」
彼女が神殿へ歩みだすと、オルガ、菜月は彼女の後へついて行く。
洗脳の呪縛があくまで軽いだけの神月はもう暫く仰ぎ見ていた。
太陽と月のような人工物が輝き、足元には水晶の様な花々が咲き誇っている。
そして、眼前に聳える神殿を見据えていると仮面の女の声が脳裏に響いた。
『さ、こっちよ』
「っ」
逆らう力も無いまま、神月は入り口に入っていった。
神殿の中にも自分たちの様なモノクロの仮面をつけた様々な人間がいた。
彼らを一瞥しながら、先導する彼女を追いかけていく、すると、先導していた彼女が足を止め、追いついた。
「――なんだ、またつれて来たのですか」
「ええ。中々強かったからね」
彼女は誰かと会話をしている。棒立ちするオルガ達を押しのけて、誰と話しているのか気になった。
神月は割り込むというよりは寝耳を立てるように彼女の傍に歩み寄る。それを気付いた彼女は、仮面の下で微笑みを零す。
「へえ、ある程度の自我は保っているのか」
「……」
神月は話しかけた人物――顔を白い布で巻きつけて、素顔を隠した青年。
唯、認識できるのは布からはみ出た黒髪、金に煌めく瞳。
「ええ。今から此処の案内をね。もう行くのかしら」
「はい、なにぶん忙しいので」
「そう。じゃあ」
軽く手を振って、仮面の女は白布の男から離れるように奥に進んでいく。
彼はやれやれと苦笑のため息を零して、さっさと歩き出していった。
再び、彼女に呼ばれた神月はすぐに奥へと追いかけていった。
「―――此処は……」
「此処に神が居るわ」
彼女が指差した階段状の玉座の上には、眠るように力なく項垂れている少女。
神月は唖然とした様子で、彼女に尋ねた。
「あれが、神?」
「そう……起源たる者。今は眠らせているの」
「眠らせている?」
「私の計画の邪魔はさせたくないから。――もう私の3つの剣は完成しかけているけどまだ、まだ……」
「3つの…剣」
操られる前に語っていた【心剣】、【永遠剣】、【反剣】。
何かの計画の一つなのだろうか、と言う疑問を抱いた。
「私がそれらの使い手を操っているのはその完成を高める為。後は、小間使い」
「……」
「まあ、小間使いは軽い冗談よ。――完成のため、それらの使い手をもっと私のモノにしないと……」
彼女が持つ3つの剣がより高い完成を為す為に、自分たちはこんな良く解らない【神の聖域】とやらに招かれたというわけか。
神月は彼女がやっぱりとんでもない奴であることを再認識した。先ほど会話をしていた白布の男――あれも同じくらい仮面の女と力を宿している。
一体、何を目論んで―――。
「ま、今は休んで頂戴」
パンパンと手を叩くと入り口からずんぐりむっくりな機械が姿を現した。
「これは此処で使われていた機械の兵士よ。――じゃあ、彼らを空いている部屋にでも適当に案内して。
部屋に入ったら、別にこの中を歩き回っていていいわよ。でも、抜け出す事は不可能だから―――覚悟しておく事ね」
「……ああ、解っている」
「もし、こっちから用があるときは、これに呼びつけるから」
機械兵士は先導し、神月はついていくように部屋を出て行った。
仮面の女はそれを見送って、静かに階段を仰ぎ、神たる少女を見据えた。
機械兵士が動きを止め、部屋の扉を指出した。
神月は部屋に入る。オルガ、菜月たちは別の部屋に案内されていたようだ。
部屋はシンプルな構造ながらも広い部屋であることに変わりが無かった。
「またつれて来られた人間か……」
「! おい、アンタ」
部屋のベッドに腰掛けている灰色の髪をした男性がこちらを見て、ため息を吐いた。
完全な洗脳ならこのような反応はまず無い――神月は慌てて反応した。
勿論、男性も驚きに満ちた目でこっちを見た。
「驚いた軽度の洗脳しか受けていない人間がいたとは…」
「それはこっちの台詞だ。俺は神月、アンタは?」
腰を下ろしている彼の傍に添わった神月は自ら名乗った。
「私はジェミニ。永遠剣士、として此処に連れてこられた」
「永遠剣士……」
「仮面の女は数の多い心剣士、それよりは少ない反剣士、永遠剣士はほんの数人しかいない。
今の所、私だけしか永遠剣士は居ない」
その特殊さゆえに永遠剣士は数はごくわずかであった。
だが、その極僅かな永遠剣士の一人を仮面の女は従属する事に成功している。
つまり、彼女の目的のピースは完成していると同じ。
「なのに、どうして直ぐにでも行動しない」
「3つの剣士を集わせてもだめなのだ、彼女はそれらを自ら具現し、そして―――」
『ジェミニ、私よ。大広間に来なさい』
扉の向こうから機械音声で発せられた仮面の女の声が呼びかける。
何かを伝えようと口を動かしているが、声は発せられなかった。
「……今は、アイツの所に行け」
「……」
表情だけでわかる。「すまない」と。
こんな状況で、頼みの綱だったジェミニから何か情報を得れるかと想ったのは幸運の極みだったか。
部屋を出て行った彼を見届けた神月は自分のベッドに横たわった。
今は唯、眠りに尽きたかった。もう何もかも投げ出しそうになるくらいに。