リラ様の誕生日記念企画・少年よ大志を抱け?(中編)
―――それから10分後
「やべぇ…眠くなる…」
「ふあぁ…何だか子守唄に聞こえる…」
黒板に何かを書きながらのウィドの説明に、リズとムーンの意識が闇に呑まれかける。
今にも闇に落ちそうな(眠りそうな)二人が必死で戦っていると、リズがある事に気づいた。
「あれ? 父さん、ちゃんと勉強してる…?」
ロクサスを見ると、教科書を立てて下を向いている。
そっと二人が中を覗き見ると、ロクサスは隠れながら口を動かしていた。
「「って、よく見ればシーソルトアイス食べてるっ!?」」
そう。ロクサスは教科書を使って、隠れながらアイスを食べているではないか。
この光景に二人がツッコミを入れていると、ロクサスは血相を変えて人差し指を口に当てた。
「シー!! 静かにしろ…腹が減ったら勉強なんて出来ないだろ…?」
「まあ、そうだけど…でも、その手が使えるなら私も…」
何を思ったのか、リズも教科書を立てるなりポケットに手を入れる。
すると、一つの袋を取り出して教科書で隠しながら広げる。すると、そこからクッキーを取り出して口に入れた。
「ん〜、ムーンに作ってもらったお菓子取っといて良かった〜。美味し〜」
「リズ、静かにして食えよ……ん? ヴァニタスは何やって…」
リズの行動にムーンはウィドを盗み見ていると、下を俯いているヴァニタスを見る。
じっと目を凝らしていると、ある事に気づいた。
(机の下でDSしてる!? しかも妙に手馴れてるし!?)
何とヴァニタスは机の下で素早い指捌きでゲームをしているではないか。
さすがのムーンも心の中でツッコミを入れると、ふとルキルを見る。
こちらは三人と違い、真面目に授業をしている。その証拠に、広げたノートに黒板の文字を書きとっている。
「今の所、真面目にしてるのは俺とあいつだけか…――あー、どっちみちやる気しねぇ…」
そう言うなり、ムーンはウィドとクウの目を盗み取ってポケットからある物を取り出した。
(とりあえず授業聞く振りして、音楽聞いておけば――)
耳にイヤホンを付けると、髪で隠してウォークマンの電源を入れる。
もはや授業を真面目に聞かない人達の学級崩壊の光景が出来上がっていると、ウィドはチョークを動かす手を止めた。
「――と言う事で、ここからここまでは確実にノートに纏めて置きなさい」
そう言って振り向くと、ウィドはルキルに満面の笑みを浮かべた。
「さて、ルキル。折角ですので、この辺で受験の心得を教えましょうか」
「あ、あぁ…」
ルキルが顔を引くつかせながら頷くなり、ウィドは一変して目を鋭くした。
「クウ」
「ああ」
クウは頷くと、手に闇を纏わせる。それを見て、ウィドも何かを握りしめる。
直後、四人にチョークと黒い羽根が飛んできて、リズとロクサスは教科書が倒れて手に持っていたお菓子が砕け、ヴァニタスとムーンに至っては机の下で動かしていたDSとポケットを破きながら中に入れていたウォークマンが破壊された。
「受験の心得、其の二――…授業中の飲食は勿論、遊びも厳禁。分かったか?」
「ウィドはともかくとして、今回は俺も教師として来てるからな。徹底的にさせて貰うぜ」
こうして、スゴ技を見せた二人に注意された四人はと言うと…。
「くそぉ!!! もう少しでアバターシステムエリア100階に到達したのに、ソフトごと粉々にっ!!?」
「『Re:コーデット』やってたのか!? いや、それよりも2万マニーも貯めて買ったウォークマンが……覚悟出来てるだろうなぁ!!?」
「ムーンのお菓子が…何てことしてくれんのよ!!?」
「俺のシーソルトアイスが…この恨み、晴らしてやるっ!!!」
四人が怒りを爆発させてキーブレードを取り出す中、ウィドは睨みながら黒板を叩いた。
「黙れぇ!!! お前達はそんな事で受験戦争に生き残れると思っているのかっ!!?」
「「「「せ、戦争…?」」」」
この言葉に動きを止める中、ウィドは睨みながら怒鳴り出す。
「今この世の中では、少子化で学校が年々減ってきているのだぞっ!!? そんな状況で授業を不真面目に受けてみろっ!!! 周りの人達が合格する中、一人だけ別の学校…下手をすれば浪人やニート生活だっ!!! そんな危機感がお前達に欠けているのが分かっているのかぁぁぁ!!!」
「なんか…キャラ変わってない?」
「無駄口は叩くな!! 今は説教中だぞ!?」
「ハ、ハイィ!!」
あまりの怖さにリズが身を縮めている様子を、クウとルキルが呆れながら見ていた。
「あーあ、キレやがった…」
「普通に考えて、授業中にあんな事をするのがいけないけどな。自業自得だ」
ルキルの言葉は御尤もだ。真面目に授業を聞かずにお菓子を食べたりゲームをしていたりウォークマンを聞いているのがどう見ても悪い。
学生の皆。怒られたくなかったら、この四人のマネをしてはいけませんよ?
そんなこんなで、数時間後―――
「――さて、これで今回の授業は終わりです。皆、ノートに纏めましたね?」
ウィドが黒板に書き終わって振り向くと、
「はーい…」
「つ、疲れた…」
「頭が痛い…」
「何だって俺がこんな事を…!!」
「はぁ…」
上からリズ、ムーン、ロクサス、ヴァニタスが机に突っ伏しっている。ルキルも疲れた溜息を吐くものの、教科書やノートをキチンと直している辺り真面目なのが分かる。
こんな五人に、クウは疲れも吹き飛ぶ驚くべき言葉を放った。
「じゃ、授業も終わった事だ……最後に、軽くテストと行くか」
「「「「えええぇぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!??」」」」
再び絶叫を上げる四人に、ウィドは冷めた目で見返す。
「『えー』じゃありません。本来テストと言うのは、ちゃんと知識を身に付けているかどうかを確認する為のものなんですから。今の授業を真面目にしていれば、ちゃんと問題は分かりますよ?」
「とりあえず、文字数の事もあるから問題を出して手を上げる形でいいぜ」
苦笑してクウが補足を入れるが、四人は絶望に染まった。
「うえぇ…最悪〜…」
「早く帰りてぇ…」
「こんなので大丈夫なのか…?」
不満を垂らすリズとムーンにルキルが呆れると、ウィドが何処か自身のある笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。四人が分からなかったとしても、どうせルキルが全部答えればいいんですから」
「あんまり期待されても困るんだが…」
「では、さっそく行きましょうか」
他力本願されて困るルキルを差し置くと、ウィドは黒板に問題を書き始めた。
*折角なので、読者の皆さんも考えてみてください。
問題:△ABCにおいて、b=3、c=8、A=60度のときのaを答えよ。
「「「「…ナニコレ?」」」」
この問題に目を丸くする四人に、ウィドは肩を震わせた。
「この、馬鹿者ども…!! 数時間前に説明した余弦定理をもう忘れたか…!!」
「落ち着けって……ルキル、答え分ってるんだろ? ウィドがキレる前にさっさと言ってくれ」
「…bとcをそれぞれ2乗した上で、bcの辺と角度の三角比をかけて、その上で更に2をかけて引く。それで出てきた数字を式に沿って2乗で割るから…――答えは7だな」
こうしてルキルが答えを述べると、落ち着いたのかウィドは震えを止めて頭を押さえた。
「さすが、ルキルですね……さ、分かりましたか?」
そう言ってウィドが答えられなかった四人を見ると…。
「「「「…………」」」」
机に突っ伏しって頭から煙を出していた。
「…………」
「ウィド、無言で剣を構えるな。さっさと次の問題出すぞ」
抜刀の構えをするウィドに、すぐにクウが肩を掴んで止める。
どうにかウィドは怒りを収めると、柄から手を放してチョークを持った。
「そうですね…では、次です」
問題:これらの難読語を答えよ。 蔵人・防人・勤行・稲妻
「はいはーい、これぐらいなら分かるー!」
書き終えた途端、リズが自信を持って手を上げる。
これを見て、ウィドも感心したように笑みを浮かべて腕を組んだ。
「では、リズ。答えてください」
「最初は、くらひとでしょ? で、ぼうひと、きんい・いねつま! どう? これぐらい完璧――」
リズは全ての答えを言い終えると、立ち上がって胸を張る。
直後、リズの横スレスレにチョークが高速で飛んできた。
そのままチョークは壁に突き刺さり、通った名残かリズの数本の金色の髪が宙に舞っている。
「リ・ズ、ぜーんぶ違いますよ? あなたは漢字をバカにしているんですかぁ?」
「そ、そんなつもりは…!!」
当たっていたら大怪我をしていたチョーク攻撃に、リズは知らず知らずの内に冷や汗を掻く。
その二人に、クウはまたもルキルを見た。
「…ルキル、頼む」
「くろうど、さきもり、ごんぎょう、いなづま」
ルキルが淡々と答えると、ウィドは教卓の端を握りしめながら再度肩を震わせた。
「さっき教えた事をもう忘れて…もう一度、授業をし直した方が…」
「やめとけ。そうなったら更に時間も文字数が増えるだろ? とにかく、さっさと進めるぞ」
怒りが収まらないウィドを宥めつつ、今度はクウがチョークを握って黒板に問題を書きだした。
問題:分子量が1万以上の分子から出来ている物質を何と言う?
「もう、嫌だ…!!」
「何で俺がこんな事を…!!」
ロクサスだけでなく、ヴァニタスも絶望したようで机に突っ伏しって頭を押さえる。
すると、その絶望で生まれたのかヴァニタスの周りで何種類ものアンヴァースが出現し始めた。
この様子に、ウィドは冷笑を浮かべながら剣の柄を握りしめた。
「クウ、保健室に連れて行った作者を呼んで来てください…――あのアンヴァース駆除に、次のテラ&アクア編での技使います…」
「ルキル、さっさと答えろ!! この教室が血まみれになるぞっ!!!」
「こ、高分子化合物だよな先生っ!!?」
クウの必死の呼びかけに、ルキルも慌てながら答えを叫ぶ。
だが、答えを述べたにも関わらずウィドの怒りは収まらない。現に、背後から陽炎の様に怒りのオーラを漂わせている。
「ルキルしか分かってないとは……こいつらは、授業での知識を何だと思っている…っ!!!」
「さ、さーて次の問題行くぞー!! 英語だからよーく聞いておけよ!?」
「やべぇ…眠くなる…」
「ふあぁ…何だか子守唄に聞こえる…」
黒板に何かを書きながらのウィドの説明に、リズとムーンの意識が闇に呑まれかける。
今にも闇に落ちそうな(眠りそうな)二人が必死で戦っていると、リズがある事に気づいた。
「あれ? 父さん、ちゃんと勉強してる…?」
ロクサスを見ると、教科書を立てて下を向いている。
そっと二人が中を覗き見ると、ロクサスは隠れながら口を動かしていた。
「「って、よく見ればシーソルトアイス食べてるっ!?」」
そう。ロクサスは教科書を使って、隠れながらアイスを食べているではないか。
この光景に二人がツッコミを入れていると、ロクサスは血相を変えて人差し指を口に当てた。
「シー!! 静かにしろ…腹が減ったら勉強なんて出来ないだろ…?」
「まあ、そうだけど…でも、その手が使えるなら私も…」
何を思ったのか、リズも教科書を立てるなりポケットに手を入れる。
すると、一つの袋を取り出して教科書で隠しながら広げる。すると、そこからクッキーを取り出して口に入れた。
「ん〜、ムーンに作ってもらったお菓子取っといて良かった〜。美味し〜」
「リズ、静かにして食えよ……ん? ヴァニタスは何やって…」
リズの行動にムーンはウィドを盗み見ていると、下を俯いているヴァニタスを見る。
じっと目を凝らしていると、ある事に気づいた。
(机の下でDSしてる!? しかも妙に手馴れてるし!?)
何とヴァニタスは机の下で素早い指捌きでゲームをしているではないか。
さすがのムーンも心の中でツッコミを入れると、ふとルキルを見る。
こちらは三人と違い、真面目に授業をしている。その証拠に、広げたノートに黒板の文字を書きとっている。
「今の所、真面目にしてるのは俺とあいつだけか…――あー、どっちみちやる気しねぇ…」
そう言うなり、ムーンはウィドとクウの目を盗み取ってポケットからある物を取り出した。
(とりあえず授業聞く振りして、音楽聞いておけば――)
耳にイヤホンを付けると、髪で隠してウォークマンの電源を入れる。
もはや授業を真面目に聞かない人達の学級崩壊の光景が出来上がっていると、ウィドはチョークを動かす手を止めた。
「――と言う事で、ここからここまでは確実にノートに纏めて置きなさい」
そう言って振り向くと、ウィドはルキルに満面の笑みを浮かべた。
「さて、ルキル。折角ですので、この辺で受験の心得を教えましょうか」
「あ、あぁ…」
ルキルが顔を引くつかせながら頷くなり、ウィドは一変して目を鋭くした。
「クウ」
「ああ」
クウは頷くと、手に闇を纏わせる。それを見て、ウィドも何かを握りしめる。
直後、四人にチョークと黒い羽根が飛んできて、リズとロクサスは教科書が倒れて手に持っていたお菓子が砕け、ヴァニタスとムーンに至っては机の下で動かしていたDSとポケットを破きながら中に入れていたウォークマンが破壊された。
「受験の心得、其の二――…授業中の飲食は勿論、遊びも厳禁。分かったか?」
「ウィドはともかくとして、今回は俺も教師として来てるからな。徹底的にさせて貰うぜ」
こうして、スゴ技を見せた二人に注意された四人はと言うと…。
「くそぉ!!! もう少しでアバターシステムエリア100階に到達したのに、ソフトごと粉々にっ!!?」
「『Re:コーデット』やってたのか!? いや、それよりも2万マニーも貯めて買ったウォークマンが……覚悟出来てるだろうなぁ!!?」
「ムーンのお菓子が…何てことしてくれんのよ!!?」
「俺のシーソルトアイスが…この恨み、晴らしてやるっ!!!」
四人が怒りを爆発させてキーブレードを取り出す中、ウィドは睨みながら黒板を叩いた。
「黙れぇ!!! お前達はそんな事で受験戦争に生き残れると思っているのかっ!!?」
「「「「せ、戦争…?」」」」
この言葉に動きを止める中、ウィドは睨みながら怒鳴り出す。
「今この世の中では、少子化で学校が年々減ってきているのだぞっ!!? そんな状況で授業を不真面目に受けてみろっ!!! 周りの人達が合格する中、一人だけ別の学校…下手をすれば浪人やニート生活だっ!!! そんな危機感がお前達に欠けているのが分かっているのかぁぁぁ!!!」
「なんか…キャラ変わってない?」
「無駄口は叩くな!! 今は説教中だぞ!?」
「ハ、ハイィ!!」
あまりの怖さにリズが身を縮めている様子を、クウとルキルが呆れながら見ていた。
「あーあ、キレやがった…」
「普通に考えて、授業中にあんな事をするのがいけないけどな。自業自得だ」
ルキルの言葉は御尤もだ。真面目に授業を聞かずにお菓子を食べたりゲームをしていたりウォークマンを聞いているのがどう見ても悪い。
学生の皆。怒られたくなかったら、この四人のマネをしてはいけませんよ?
そんなこんなで、数時間後―――
「――さて、これで今回の授業は終わりです。皆、ノートに纏めましたね?」
ウィドが黒板に書き終わって振り向くと、
「はーい…」
「つ、疲れた…」
「頭が痛い…」
「何だって俺がこんな事を…!!」
「はぁ…」
上からリズ、ムーン、ロクサス、ヴァニタスが机に突っ伏しっている。ルキルも疲れた溜息を吐くものの、教科書やノートをキチンと直している辺り真面目なのが分かる。
こんな五人に、クウは疲れも吹き飛ぶ驚くべき言葉を放った。
「じゃ、授業も終わった事だ……最後に、軽くテストと行くか」
「「「「えええぇぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!??」」」」
再び絶叫を上げる四人に、ウィドは冷めた目で見返す。
「『えー』じゃありません。本来テストと言うのは、ちゃんと知識を身に付けているかどうかを確認する為のものなんですから。今の授業を真面目にしていれば、ちゃんと問題は分かりますよ?」
「とりあえず、文字数の事もあるから問題を出して手を上げる形でいいぜ」
苦笑してクウが補足を入れるが、四人は絶望に染まった。
「うえぇ…最悪〜…」
「早く帰りてぇ…」
「こんなので大丈夫なのか…?」
不満を垂らすリズとムーンにルキルが呆れると、ウィドが何処か自身のある笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。四人が分からなかったとしても、どうせルキルが全部答えればいいんですから」
「あんまり期待されても困るんだが…」
「では、さっそく行きましょうか」
他力本願されて困るルキルを差し置くと、ウィドは黒板に問題を書き始めた。
*折角なので、読者の皆さんも考えてみてください。
問題:△ABCにおいて、b=3、c=8、A=60度のときのaを答えよ。
「「「「…ナニコレ?」」」」
この問題に目を丸くする四人に、ウィドは肩を震わせた。
「この、馬鹿者ども…!! 数時間前に説明した余弦定理をもう忘れたか…!!」
「落ち着けって……ルキル、答え分ってるんだろ? ウィドがキレる前にさっさと言ってくれ」
「…bとcをそれぞれ2乗した上で、bcの辺と角度の三角比をかけて、その上で更に2をかけて引く。それで出てきた数字を式に沿って2乗で割るから…――答えは7だな」
こうしてルキルが答えを述べると、落ち着いたのかウィドは震えを止めて頭を押さえた。
「さすが、ルキルですね……さ、分かりましたか?」
そう言ってウィドが答えられなかった四人を見ると…。
「「「「…………」」」」
机に突っ伏しって頭から煙を出していた。
「…………」
「ウィド、無言で剣を構えるな。さっさと次の問題出すぞ」
抜刀の構えをするウィドに、すぐにクウが肩を掴んで止める。
どうにかウィドは怒りを収めると、柄から手を放してチョークを持った。
「そうですね…では、次です」
問題:これらの難読語を答えよ。 蔵人・防人・勤行・稲妻
「はいはーい、これぐらいなら分かるー!」
書き終えた途端、リズが自信を持って手を上げる。
これを見て、ウィドも感心したように笑みを浮かべて腕を組んだ。
「では、リズ。答えてください」
「最初は、くらひとでしょ? で、ぼうひと、きんい・いねつま! どう? これぐらい完璧――」
リズは全ての答えを言い終えると、立ち上がって胸を張る。
直後、リズの横スレスレにチョークが高速で飛んできた。
そのままチョークは壁に突き刺さり、通った名残かリズの数本の金色の髪が宙に舞っている。
「リ・ズ、ぜーんぶ違いますよ? あなたは漢字をバカにしているんですかぁ?」
「そ、そんなつもりは…!!」
当たっていたら大怪我をしていたチョーク攻撃に、リズは知らず知らずの内に冷や汗を掻く。
その二人に、クウはまたもルキルを見た。
「…ルキル、頼む」
「くろうど、さきもり、ごんぎょう、いなづま」
ルキルが淡々と答えると、ウィドは教卓の端を握りしめながら再度肩を震わせた。
「さっき教えた事をもう忘れて…もう一度、授業をし直した方が…」
「やめとけ。そうなったら更に時間も文字数が増えるだろ? とにかく、さっさと進めるぞ」
怒りが収まらないウィドを宥めつつ、今度はクウがチョークを握って黒板に問題を書きだした。
問題:分子量が1万以上の分子から出来ている物質を何と言う?
「もう、嫌だ…!!」
「何で俺がこんな事を…!!」
ロクサスだけでなく、ヴァニタスも絶望したようで机に突っ伏しって頭を押さえる。
すると、その絶望で生まれたのかヴァニタスの周りで何種類ものアンヴァースが出現し始めた。
この様子に、ウィドは冷笑を浮かべながら剣の柄を握りしめた。
「クウ、保健室に連れて行った作者を呼んで来てください…――あのアンヴァース駆除に、次のテラ&アクア編での技使います…」
「ルキル、さっさと答えろ!! この教室が血まみれになるぞっ!!!」
「こ、高分子化合物だよな先生っ!!?」
クウの必死の呼びかけに、ルキルも慌てながら答えを叫ぶ。
だが、答えを述べたにも関わらずウィドの怒りは収まらない。現に、背後から陽炎の様に怒りのオーラを漂わせている。
「ルキルしか分かってないとは……こいつらは、授業での知識を何だと思っている…っ!!!」
「さ、さーて次の問題行くぞー!! 英語だからよーく聞いておけよ!?」