KH 4-08
――――。
閃光は途切れない。
ヴァニタスのキーブレードは砲身が溶け始めている。しかしなおもエネルギーの迸りは絶え間ない。
――――暴走している。
「どうなってるんだっ……!?」
「それは私の台詞だが」
ヴァニタスのエネルギーに呑まれたはずの無貌の王は健在だった。光に晒され、像が微かに歪み始めているものの、消滅してはいなかった。
ヴァニタスのエネルギーを、ソラが阻んでいるのだ。
キーブレードを盾にされたことで、ヴァニタスの光線は周囲に飛び散り、ドラゴンの表皮を燃やしている。ただでさえ短い墜落までの時間は更に削られていっている。
「僕は敵だぞ。なぜ助ける。ここで僕を消してしまえば……まぁ、消せればの話だけれど?
……奇跡的な幸運に恵まれすぎた結果、偶然にも僕がいないうなったとして……おまえに不都合があるのかい?」
「知らないよ、そんなこと!」
「まったく、だろうと思った……!」
押し込まれそうなソラを後ろから、リクが支える。掌を通じてリクの力がキーブレードに伝わる。ソラの体制が徐々に持ちなおされてきた。
「おまえはいつもそうだ。イカダを作るって言った時もサボってばかりで、いい加減で……心に正直だ」
「心?」
「私にもわかるよ。ソラが選ばれた理由」
シオンは離れた位置でソラとリクの奮闘を眺め、呟いた。一度手に持ったキーブレードを――――その贋作に視線を落とし、再びソラを見て目を細めた。
ソラはキーブレードを握り直す。エネルギーを押し返し始めている。
「ソラは自由なんだ。たとえ……箱庭みたいな小さい世界にいたとしても、ソラの心には羽が生えてる。世界の壁も飛び越えて、心と心をつないでいける。だから……ソラじゃなきゃダメなんだよね、ロクサス」
「……だからこそ、世界にバランスをもたらす強いマスターに…………いいえ。みんなの心の痛みをいやす『光』……やさしさの勇者になれる。あの人が見込んだ通りね」
アクアは立ち尽くしていた。手からはキーブレードも消えている。
勝敗を確信していた。
それを裏付けるように、キーブレードの勇者たちの胸に小さな灯りが点った。
「これは……?」
「呪いが解けたんだ。これで、君たちは元の場所に帰ることになる」
「えっ……!?」
「認めたくないがな……どうやら、お前たちに呪いを……願いを託したのは、この俺も同じだったようだ」
無貌の王が自分の胸元を指差した。光の点が線で結ばれ――――鍵穴を作っている。
「それは……!」
「余という鍵穴を通じて、境界線は傾いた。今この瞬間であれば、元の世界に戻れよう」
「でもヴァニタスが……!」
リクが苦言を呈した。押し返しつつあるものの、依然として局面はよく言って拮抗、現実的には押され気味だ。手が離せるような状況ではない。
そんなことをすれば――――危険なのは無貌の王自身だ。
「良い。十分に願いは叶った。……帰るがいい、我が招きに応じた勇者たちよ。お前のあるべき場所に、あるべき時間に」
そう言って、無貌の王はソラとリクの肩を後ろから掴み、引き寄せた――――。
閃光は途切れない。
ヴァニタスのキーブレードは砲身が溶け始めている。しかしなおもエネルギーの迸りは絶え間ない。
――――暴走している。
「どうなってるんだっ……!?」
「それは私の台詞だが」
ヴァニタスのエネルギーに呑まれたはずの無貌の王は健在だった。光に晒され、像が微かに歪み始めているものの、消滅してはいなかった。
ヴァニタスのエネルギーを、ソラが阻んでいるのだ。
キーブレードを盾にされたことで、ヴァニタスの光線は周囲に飛び散り、ドラゴンの表皮を燃やしている。ただでさえ短い墜落までの時間は更に削られていっている。
「僕は敵だぞ。なぜ助ける。ここで僕を消してしまえば……まぁ、消せればの話だけれど?
……奇跡的な幸運に恵まれすぎた結果、偶然にも僕がいないうなったとして……おまえに不都合があるのかい?」
「知らないよ、そんなこと!」
「まったく、だろうと思った……!」
押し込まれそうなソラを後ろから、リクが支える。掌を通じてリクの力がキーブレードに伝わる。ソラの体制が徐々に持ちなおされてきた。
「おまえはいつもそうだ。イカダを作るって言った時もサボってばかりで、いい加減で……心に正直だ」
「心?」
「私にもわかるよ。ソラが選ばれた理由」
シオンは離れた位置でソラとリクの奮闘を眺め、呟いた。一度手に持ったキーブレードを――――その贋作に視線を落とし、再びソラを見て目を細めた。
ソラはキーブレードを握り直す。エネルギーを押し返し始めている。
「ソラは自由なんだ。たとえ……箱庭みたいな小さい世界にいたとしても、ソラの心には羽が生えてる。世界の壁も飛び越えて、心と心をつないでいける。だから……ソラじゃなきゃダメなんだよね、ロクサス」
「……だからこそ、世界にバランスをもたらす強いマスターに…………いいえ。みんなの心の痛みをいやす『光』……やさしさの勇者になれる。あの人が見込んだ通りね」
アクアは立ち尽くしていた。手からはキーブレードも消えている。
勝敗を確信していた。
それを裏付けるように、キーブレードの勇者たちの胸に小さな灯りが点った。
「これは……?」
「呪いが解けたんだ。これで、君たちは元の場所に帰ることになる」
「えっ……!?」
「認めたくないがな……どうやら、お前たちに呪いを……願いを託したのは、この俺も同じだったようだ」
無貌の王が自分の胸元を指差した。光の点が線で結ばれ――――鍵穴を作っている。
「それは……!」
「余という鍵穴を通じて、境界線は傾いた。今この瞬間であれば、元の世界に戻れよう」
「でもヴァニタスが……!」
リクが苦言を呈した。押し返しつつあるものの、依然として局面はよく言って拮抗、現実的には押され気味だ。手が離せるような状況ではない。
そんなことをすれば――――危険なのは無貌の王自身だ。
「良い。十分に願いは叶った。……帰るがいい、我が招きに応じた勇者たちよ。お前のあるべき場所に、あるべき時間に」
そう言って、無貌の王はソラとリクの肩を後ろから掴み、引き寄せた――――。